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マネジメントシステム改善のポイント

【内部監査】20年目のISOマネジメントシステム ~ 内部監査でコーチングを導入 ~ 有効性を重視して仕組みの改善につなげる [株式会社日水コン 管理本部 品質・環境推進部 審査役 安宅 貴生 様]

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【内部監査】20年目のISOマネジメントシステム ~ 内部監査でコーチングを導入 ~ 有効性を重視して仕組みの改善につなげる [株式会社日水コン 管理本部 品質・環境推進部 審査役  安宅 貴生 様]

取材先:
株式会社日水コン 管理本部 品質・環境推進部 審査役  安宅 貴生 様


社是がQMSとEMSの理念につながる

株式会社日水コン様は、「水をキーワード」に上下水道を中心に社会インフラの建設・管理に関わっている建設コンサルタントです。「水」をベースにしたビジネスの対象は、河川から砂防、廃棄物など広範囲に及んでおり、「水コンサルタント」のパイオニアとして産業界では広く認知されています。

設立3年目の1962年に掲げた社是には、「高度の技術を提供し、社会公共のために奉仕する 」「品格を高め、和衷協同の実をあげる」と謳っています。この社是は、現在運用しているISO9001の品質マネジメントシステム(QMS)、ISO14001の環境マネジメントシステム(EMS)の目指す方向と重なっています。ISOシステムが同社の現場に定着している理由は、こうしたことからうかがえます。

●企業概要データ
・本社所在地:東京都新宿区西新宿6丁目22番1号
・設立:1959年(創業社名 株式会社日本水道コンサルタント)
・資本金:1億円
・売上高:175億円(2017年12月決算期)
・従業員数:社員728名(技術士484名含む)(2018年4月1日現在)
・主要業務:
国内及び海外における次に掲げる事業の企画、調査、研究、計画、設計、工事監理及び施設の運転、管理、診断、水質検査並びにこれらに係る経済・財務分析、その他のコンサルティング
 1) 上水道、下水道及び工業用水道
 2) 治水、利水及び河川、湖沼、沿岸海域に係る環境管理
 3) 産業廃水、都市廃棄物等の処理
 4) 建築、都市開発及び地域開発
 5) 農業開発

1.2015年版への移行を機に
 現場業務に沿ったマニュアルに改訂

ISOマネジメントシステム規格の認証は1998年にISO9001を取得、その後、2001年にISO14001、2009年にISO27001、2015年にはISO55001をそれぞれ取得しています。QMSとEMSの認証については図表の通り変えてきています。


このQMSとEMSの認証の動きに伴って、マニュアルについても統合しています。その上で2015年版への移行を機に、マニュアルは業務と合う構成・内容にするために下記の通り大幅に改善しています。

●規格見合いから現場見合いへ指向
現場の仕事に合うマニュアルへ作り変え
EMSをQMSの中に取り込む
●行動の多様性の受入れるため記述のアバウト化を指向
マニュアルの縛りはなるべくゆるやかに
●マネジメント活動の本質の浸透や業務活動とのすり合わせを指向
マネジメントの本質ははずさない。
精神論的なものも残しておく

現在のマニュアルは、業務とのつながりが分かりやすく示されています。従業員は担当業務がISO規格のどの要求事項と関係しているのか、分かりやすい構成を指向しています。
さらに、マニュアルには、日水コンとしてISOシステムをどのように活用していくのか、目指す方向が示されています。とりわけ「序文」は、野村喜一代表取締役社長のQMSに寄せる期待をまとめた内容になっています。

① 当社業務の品質担保に不可欠のシステムであること。
② トレーサビリティを担保するシステムであること。
③ 内部監査の仕組みがある、つまり、自律的改善の機能を保持していること。

 

2.入念な事前準備が
 効果的な内部監査につながる

「序文」でも取り上げられている内部監査は社内でも重視されてきています。その内部監査に関して、管理本部 品質・環境推進部の安宅貴生審査役に詳しく解説してもらいます。(以降の「」は安宅様のお話です)

「内部監査は、6月に実施する管理部門等が対象の『システム系』と11月に行う個別案件が対象となる『プロジェクト系』の2種類を実施しています。現状で対象としているのは『システム系』では32部所、『プロジェクト系』は30部所で、すべての部所で年1回は監査を受けることになっています。
この内部監査の運用全体を担当しているのが『内部監査部会』です。事務局として、監査に関する計画から実行、指摘へのフォローといった全てを取り仕切っています。内部監査の成否は、この部会の活動に拠るところが大きいといえるでしょう。ちなみに部会の人数は10名程度で、主要部門の要員が参加した独立性の高い組織です。

監査を担当する内部監査員についても、全部門から集めており総勢で約30名です。内部監査員になるには、監査員研修を修了した後、ベテラン監査員の監査に1年間同行して実地研修で学びます。この研修を終えたら社内資格が付与され実際に内部監査を行います。

各監査員は1回の監査あたり2~3部所を担当し、いずれの監査も一人で行います。このように数多くの内部監査が実施されることになりますが、それぞれの監査で効果がでるようにするためのポイントは、活動と成果を常に明らかにすることです。そのために、『内部監査部会』による入念な事前準備が欠かせないと考えています。

3.内部監査部会が作成
 「実施プログラム」「チェックリスト」「チェックメモ」

事前準備の一環として、内部監査部会では実施プログラムを作ります。このプログラムには、監査方針や計画、準備、実施、そして指摘へのフォローなどの情報が、こと細かに盛り込まれています。実施1ヶ月前に各監査員に対してプログラムに沿った事前レクチャーを念入りに行うことが、内部監査全体の実行レベルの擦り合わせにつながっています。

また、事前準備として内部監査部会ではチェックリスト(図表参照)も作成しています。これはマニュアルの項目ごとに監査で確認する内容をまとめたもので、48ページの厚さがあります。このリストの各項目を監査対象部所に割り付けることで、現場の行動と効果を確認する仕掛けにしています。また、重点監査事項を監査回毎に設定し、時々の情勢を踏まえた監査のポイントを明らかにしています。さらに、審査の判断の基となる判定基準を盛り込むことで、審査員の判断を助け、判断のぶれを抑えることにつなげています。


 


内部監査部会ではチェックリストを抜粋・編集したチェックメモ(図表参照)を用意し、監査現場で確認した結果をチェックメモに書き込むことにしています。例えば、現場の状態、何か指摘するなら客観的な証拠について記載し、その情報に基づいて適合/不適合/観察事項の判断を書き込みます。なお、このチェックメモにも不適合/観察事項の判定基準を載せています。


 

4.監査後のフォローでは
 1年後に再確認を行う

内部監査をISOシステムの継続的改善につながるように活用するには、監査後のフォローが大切になってきます。監査終了直後に、内部監査員が全員参加する総括会議で、監査結果についての確認が行われます。例えば各監査員の判定レベルが統一できたかということなども検証されるのです。また、各監査員には自己評価(図表参照)を行ってもらい、見直すべき点が出てくれば自覚し、次回のより良い監査につなげてもらいます。

 


実際に指摘事項が出た場合には、不適合は是正処置の要求とフォローを行い、観察事項ではその対応を確認することになります。指摘の後の取り組みを重要視しており、不適合については1ヶ月以内での是正処置の実行を確認した上で1年後の内部監査で改善が継続されているか、観察事項はより効果的な活動にシフトしているのかなどをしっかり確認するようにしています。

そして監査で得られたすべての情報に関して内部監査総括書にまとめます。総括書は社長をはじめとした経営層向けに5~6ページにまとめたものです。その詳細な情報は資料編に編集し40ページ程度になります」

5.ISO運用10年を経て
 適合性から有効性の重視の内部監査へ

ここまで内部監査の仕組みついてご紹介いただきましたが、現在の形になるまでに幾度も改善を重ねてきています。とくに2008年には有効性を重視するように変更しました。

「当時、1998年のISO9001認証取得から10年経過し、ISOシステムが成熟段階に入りつつあったので仕組みの改善が必要だと感じられていました。そこで内部監査について、適合性の確認から有効性を重視するように変えようとしたのです。もちろん、有効性を見る内部監査にいきなり切り替えるのは難しいでしょう。監査員研修のプログラム、監査を受ける側の意識、社内の内部監査の位置づけ、そして監査のやり方自体など、さまざまな取り組みが必要になるからです。

そこで段階的に取り組んできましたが、私が内部監査部会部会長になった2010年に新たな試みをやってみました。それは、内部監査を担当する監査員の意識を変えるために、『内部監査の立ち位置』と『内部監査に求める軸足』についての認識を監査員で共有することです。
まず内部監査は何のためにやるのか、この理解があやふやだったので、『内部監査の立ち位置』を明確にすることにしました。ここで強調したのは、『内部監査とはQMSとEMSの運用の効果を大きくするための主要なツール』ということです。

 もうひとつの『内部監査に求める軸足』については、有効性の確認に置きました。これは2008年から実行されていましたが改めて明文化しました。その上で、内部監査では、『監査はコーチングの視点を意識する』ことが重要だと打ち出したのです。監査の場でのコーチングとは、例えば、できている/できていないなどといった指摘に加え、不具合の原因はどこにあるのか、解決するためにどのような取り組みができそうなのか、必要に応じてアドバイスを行うものです。監査員はやりとりを通して改善に向けての切っ掛けの提供を目指しています」

続いて、実際に有効性を見るにはどうやるのか、詳しく解説してもらいました。

「有効性を見る内部監査ですが、私どものお客様にとって役に立つ活動とは何かを考えることです。こうした監査を実際にやるのはもちろん簡単ではないでしょう。まず監査対象業務の理解も重要であり、また、監査現場ではいろいろな情報を相手から引き出し解釈して、その場で的確なコメントを出すことになります。まさに先ほど挙げたコーチングの高いスキルが必要になってくるのです。

また、重点監査項目も重要になってきます。例えば『部門における監視・測定とのその改善活動』『審査・検証実施とその対応』『記録の作成と管理』(図表参照)などと決めて、これに沿って内部監査を展開してます。項目を決めるのは、現場とマネジメントの両方に詳しい立場にいる部会長です。日水コンを取り巻く状況、ビジネス上の課題、それを受けてのISOシステムで重視すべきことといった情報からテーマが決定されていくのです」




6.内部監査で有効性を重視することで
 日水コンのブランドを高めていく

ここまでご紹介した通り、株式会社日水コン様は内部監査について継続的な改善を重ねてきています。今後はどのような内部監査を目指すのか、明かしていただきます。

「ISOシステムによって日水コンのブランドをどう高めていくのか、内部監査でもこの視点にウェイトを置いていきます。そのためには、今以上に有効性を重視する必要があると考えています。
例えば、業務成果を通じて社会に提供するサービスの品質を向上させるためにどんな工夫をしているのか、お客様の要求に対してはどの様に応えているのか、等々と幅広く質問を投げかけて、会話のキャッチボールをしながら、改善のキッカケをつかめるような監査が理想的です。

こうした内部監査を行うには監査員のスキルが重要ですし、監査の仕組みでの工夫も必要でしょう。例えば監査員の自由度を高めてスキルへの依存を大きくするなども想定が可能です。

実は、経営トップはISOシステムの内部監査を重視しています。『序文』にもありますが、自らの不具合を自ら正していく自律行動を仕組みとして持たせる、そのためには内部監査をしっかり回すようにとの指示がありました。そこで内部監査自体の改善に今後もしっかり取り組んでいきます」

 

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