ISO/IEC20000-1(ITサービスマネジメントシステム:ITSMS)
ISO20000-1とは
ISO20000-1は、一般的に“サービスマネジメント”“ITサービスマネジメント”などと呼ばれています。ISO9001は、どの業種・業態にも適用可能な最も一般的なマネジメントシステムですが、ISO20000-1は、ITシステムを活用したサービスを合意された顧客要求に応じて提供することを中心としたマネジメントシステムです。マネジメントシステムの導入によって、方針、目標を設定し、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を貴社の業務プロセスに組み込み、計画・立案⇒実施・運用⇒確認・評価⇒改善という継続的な改善サイクルを構築、運用することで、目標の達成を目指すことができます。このPDCAサイクルをもとにサービス品質を向上し顧客満足を実現することを目的としています。
近年では、社会におけるIT活用により、インターネット株式投資の増大や非接触型ICカードによる電子マネーの普及、およびICタグでの製販を通したトレーサビリティの実現など、利用者の向上をもたらしており、ITサービスが社会基盤としてさらに重要となっています。そのため、ITサービスに対する信頼性が要求され、サービス提供者には、ITサービスの品質を維持・向上する責任が生じています。また、ビジネス環境の変化に即応するビジネス変革を支えるITに対する期待も高まっています。
JIS Q 20000-1(ISO/IEC 20000-1)は、顧客にITサービスを提供しているサービスプロバイダや、ITサービスを通じて、顧客に製品・サービスを提供するビジネスを展開する組織(例、コールセンター、アプリケーションサービスプロバイダー等)の皆様が対象の規格です。
ISO20000-1の導入メリット
サービスマネジメントシステムを導入すると、どのようなメリットが考えられるでしょうか。規格では次のメリットを得ることを期待しています。
- 信頼される第三者(認証機関)からJIS Q 20000-1(ISO/IEC 20000-1)の規格に基づいてITSMSを構築・運用していることを外部に表明できる。
- 継続的な認証審査により、サービス品質の向上と維持を図ることができ、ITサービスマネジメントシステムが形骸化しない。
- 認証が調達条件である引き合いに入札できる。 ※ITサービス提供者におけるITサービスマネジメントシステムの品質を関係組織が信頼することにつながる。
ISO20000-1の狙い
ISO20000シリーズは、ITILを基に策定された歴史的背景を持ち、実際に、ITILの思想や概念から大きな影響を受けています。ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、ITシステム運用の全ライフサイクルに関与すると考えられるプロセス群を記述した“書籍”のことです。1980年代後半から英国でまとめられ、現在では、ITシステムを活用したサービスの“運用領域”の世界で広く活用されているデファクトスタンダード(事実上の標準)となっています。そうした時代背景を経て、合意された顧客要求を満たせるようサービスの改善を通じて、顧客満足を向上させることを狙いとしています。
構築のポイント
「ITSMSユーザーズガイド」では以下のように構築のポイントが記載されています。(一部抜粋)
- サービスマネジメント目標及び各プロセスの重要業績評価指標(KPI)設定と測定
-測定可能な数値目標を設定、測定し、改善のための「きっかけ」とする - 従来のサービス方法とのかい離の極小化
-ダブルスタンダード化の抑制
-必要に応じてITIL等のベストプラクティスを適用すること - どの規格にも共通することですが、「経営陣が深く関与すること」
「組織横断的なプロセスアプローチの実現」が重要なポイントとなります。
ITSMSの概要
ITSMSとは、サービス提供者が、提供するITサービスのマネジメントを効率的、効果的に運営管理するための仕組みである。
【対顧客】
サービス提供者は、提供のサービスレベルを顧客と合意し、合意にもとづいたサービス品質を管理し、サービスレベル状況を顧客に報告する。
【対サービス提供の関連プロセス】
サービスマネジメントは、顧客との合意のサービスレベルを含む各種要求を満たすよう、サービス提供の関連プロセスを統制する。
【対供給者】
サービス提供者は、供給者とサービスレベル(顧客合意のサービスレベルとの整合が条件)を合意し、監視する。

ITSMSの構築
ITSMSの構築には、4つのステップが考えられます。

*「ITSMS適合性評価制度の概要」(ISMS-AC発行)より
Q&A
Q.
サービスマネジメントシステムのパフォーマンスとはなんですか?
A.
サービスマネジメントシステムのパフォーマンスは、SLA(サービスレベル・アグリーメント)への順守を通じて、顧客が要求・期待するサービスに対する価値やメリットに満足して頂くための活動です。その過程でサービス改善、コスト管理を含めたサービス提供のためのプロセスを最適化するための一連の継続的な活動です。
Q.
システム開発を行っていない会社でも、認証取得できますか?
A.
この規格では、以下のように、いわゆる“設計・開発”に関する要求事項があります。
5 新規サービス又はサービス変更の設計及び移行
5.1 一般
5.2 新規サービス又はサービス変更の計画
5.3 新規サービス又はサービス変更の設計及び開発
5.4 新規サービス又はサービス変更の移行
これらの要求事項では、サービスの稼働環境への計画、設計・開発、移行にあたっての“プロセス”を取り扱っており、JISQ9001の8.3項の設計・開発に相当するような仕様を決めるような詳細な要求事項とは異なり、例えば、内部でシステム開発していなくても、外部が開発したシステムをサービス提供のために評価し、受け入れ、実装するといった、あくまでITシステムを活用してサービスを提供するために必要な事項として設計・開発が扱われています。