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SDGs取り組み事例:北興化学工業株式会社

2030年までの新経営計画の策定でSDGsを盛り込む
「Social  KPI」を導入し事業部門ごとの目標の進捗を評価、改善へつなげる

SDGs取り組み事例:北興化学工業株式会社

農薬事業とファインケミカル事業を2つの柱に展開し、各地に支店や工場、研究所、農場を持つ北興化学工業株式会社様(以下、北興化学工業)は、1950年(昭和25年)に東京都・千代田区で設立されています。農薬事業では、水稲、園芸分野の殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤などの製造販売を行い、ファインケミカル事業では医農薬中間体、電子材料原料、反応触媒、機能性高分子原料、防腐・防カビ剤などの製造販売を展開しています。
2021年度からの新たな経営計画の策定において、SDGsを盛り込む形で推進しています。その取り組み内容や状況についてお話をうかがいました。

                取材先: 北興化学工業株式会社 執行役員  濱田尚之 様

北興化学工業株式会社 執行役員  濱田尚之 様

 

北興化学工業では2021年度からSDGsへの取り組みをはじめたそうですが、そのきっかけを教えてください。

濱田 様: 経営計画における目標と、SDGsが合致することが分かったからです。新たに2021年度からの経営計画を策定する際に、SDGsを盛り込み、大きな柱の一本にしています。

ここ数年で、ESG投資(ESGに配慮した企業への投資)の急伸などの動きと合わせて、SDGsへの注目度が一気に上がってきており、北興化学工業でも対応すべき経営テーマとして着目していました。そこで自分たちのビジネスにおけるSDGsとの関わりを検討しはじめたのですが、2030年までの新しい経営計画の策定がちょうど同じタイミングだったのです。

いろいろ調べる中で、経営計画のゴールとSDGsの目標が「合致」していること、ゴールがどちらも2030年であること、これらから新経営計画にSDGsを盛り込む形をとることにしました。

SDGsでどんなことをやるのですか。

濱田 様: 「SDGsに取り組む」とは、今回、新たに何かをやるということではありません。「SDGsの視点を経営計画に盛り込んだ」と言うのが適当でしょう。自分たちが目指す姿を実現すること自体が、社会貢献にもなり、SDGsの達成に近づくということです。

あと最初に「合致」と言いましたが、「同じ」や「ひとつ」という意味ではありません。経営計画における目標を異なる側面から俯瞰すると、社会貢献の達成という捉え方ができるということです。

参考 

北興化学工業 経営計画

経営目標とSDGsが「合致」することは、最初からピンと来たのでしょうか。SDGsについてよく聞くのが、「SDGsの基本は理解できたが、何をやればいいのか…」「新たにいろいろ取り組むのは負担になりかねない」といった話です。

濱田 様: そもそも私自身、経営計画を作るのが初めての経験であり、SDGsを含めいろいろ新しい要素を考えていました。そうした中で、SDGsの採用を判断したものの、どのような形がいいのか、いろいろな案が浮かんでいました。

そこで日本能率協会の研修講師とディスカッションを重ねる中で、経営計画とSDGsは相反するものではない、むしろ経営計画における目標の達成が社会貢献になる、このことを北興化学工業のビジネスと絡めて説明してもらったところ、腑に落ちたということです。

実際のビジネスとSDGsが大いに関係があることが分かったわけですね。

濱田 様: ビジネスを異なる視点から見てみればいいのです。たとえば現場でやっているひとつの業務で2つのSDGsのターゲットを達成できるケースもあります。これらを整理していくことで経営計画にうまくSDGsを盛り込むことができました。

後で詳しく説明しますが、指標としてのKPIに関しては、 Financialに加え、新たにSocialの切り口でも設定してはいますが、あくまでもビジネスの取り組みはひとつです。そのためSDGs、つまり社会貢献のために新たな取り組みをする必要はない、と分かったことで、経営計画にうまく盛り込むことができました。

SDGsに関して、経営計画と実際の現場の取り組みテーマはどんな関係になりますか

濱田 様: ご紹介した通り、SDGsへの取り組みは、企業理念の実現そのものであり、まさに「合致」しています。そこで、まずは企業理念に基づいて「SDGsへの取り組み方針」を策定しました。そもそもあるべき姿に向かっていくために、その大元にあるのが企業理念です。この企業理念に基づく取り組み方針のもと、各事業部門において、実際に現場でできることを挙げてもらい、その中から選び出す流れで進めています。(★参照:図表1)

図表1

SDGsへの取り組み方針

濱田 様: 具体的には、5つの「SDGsへの取り組み方針」に関して、主要ビジネスである農薬事業とファインケミカル事業に繊維資材事業を加えた3つの事業部門に該当するものを振り分けて、各事業を構成する研究開発や製品、技術などに細分化して、関連する取り組みテーマを設定して、新経営計画の柱となる長期経営戦略の各項目をあてはめています。

続いて、「SDGsへの取り組み方針」にある5つのテーマに基づいて、それぞれの目標とKPIを設定しています。ここではSDGsの目標年である2030年に加え、2025年も設定しています。

長期経営計画ではゴールは2030年度で、最初の5年間を1st Stage、次の5年間を2nd Stageとしています。それに合わせるために、ここでも2025年の目標を途中経過の確認という位置づけもあり、指標として設定しています。(★参照:図表2、3‐1、3‐2)

図表2 (「Social  KPI」を設定)

SDGsへの取り組み KPIと目標

図表3-1

SDGsへの具体的な取り組み

図表3-2

SDGsへの具体的な取り組み2

現場が自分たちの仕事と括りつけて考えたのですね。

濱田 様: 図表3‐1と3‐2は、具体的な取り組みをまとめたものです。各項目を説明すると、「長期経営戦略」についてSDGsの側面から見たのが「SDGsへの取り組み方針」です。
また、「主な取り組み」は、先ほど紹介した現場のビジネスに関係したものであり、その進捗状況や達成具合をKPIで計っていく、こうした関係になります。

新たなKPIを採用されたそうですが、詳しくご紹介ください。

濱田 様: 私どものSDGsの特長の一つが、今回、新たに採用した「Social  KPI」です(★図表2参照)。2025年目標/2030年目標の進捗・達成状況を客観的に計るために、このKPIを新たに設定しています。
従来から財務では指標を使っています。これが「Financial  KPI」ですが、今回、環境・サステナビリティとSDGsの側面から計るのが「Social  KPI」です。

KPIで評価することで目標の達成度は確認できますが、どのように社会貢献が実現しているか、この点は、弊社の事業の特性上、従来の「Financial  KPI」では測定しにくいということも、新たに設けた理由のひとつです。

新たな評価軸を加えることに、社内の反応はいかがだったでしょうか。

濱田 様: 先ほど紹介したように、取り組み自体は一つ、経営計画だけに対応していけば、社会的な側面の達成も自ずと付いてくることは分かっていました。ただし、社内では「SDGsは聞いたことはあるがどういうものか? 新しいもの??」などと混乱が起きかねないので、あえて「Social KPI」と設定することでこれからやることを明確化するとのねらいがありました。
ゴールに向かって正しく進んでいるかどうかを意識できる、このためには指標を分けることが効果的だと考えたのです。

濱田様

 

現場の理解を重視しながら進めていることが分かります。

濱田 様: 新たなKPIの導入についても日本能率協会に相談しながら、各事業部門とディスカッションを重ねていきました。まずは従業員全員がSDGsを理解すること、続いて北興化学工業として導入する意義や考え方を共有した上で、自分たちが現実に何をできるのか、各事業部門に持ち帰って議論してもらいました。

そして自分達がチャレンジできそうなSDGsのターゲットを挙げてもらい、揃った中から、会社として指標にできるものを選んでいます。さらに新経営計画に盛り込むことで「実現させる」という意思を示してもいます。

従業員を巻き込むことで、一体化した取り組みにつながっていくと思います。社内に変化は現れていますか。

濱田 様: SDGsを盛り込んだ新経営計画が決まるまでは議論を繰り返しましたが、決定し、動き出してからは、齟齬もなく進んでいると感じています。

また、SDGsへの取り組み推進を担う、SDGs委員会を新たに発足させました。SDGsの達成に向けた当社グループの取り組みを、総合的かつ効果的に推進するための組織で、今後、取り組みへの提言と進捗管理、評価を実施する予定です。

SDGsは、導入の後、社内で継続的に盛り上げていくことも大切になってくると思います。

濱田 様: やはり社内のモチベーションを維持していくのが大切だと考えています。2021年度からは、業績表彰に【SDGs部門】を新たに設け、単年で自分たちの目標をクリアしたら表彰するような制度を創設しました。従業員にアピールしながら新たな触発にもつながっていくはずです。

以前から環境やサステナビリティ、CSRなどに取り組んできたそうですが、今回のSDGsとの違いはどのような点にありますか。

濱田 様: SDGsではゴールがある程度明確になるので、取り組みやすいと感じています。CSRに関しては、例えば日本化学工業協会のレスポンシブル・ケア活動を含め広く取り組んできていますが、経営テーマとしてはやや漠然とした印象があります。またESGは投資に特化しているとの側面もありますから、投資家相手の目線を強く意識することで対応してきています。

来年、2025年、そして2030年に期待している成果について教えてください。

濱田 様: 2030年までの長期経営計画で各目標やKPIを設定していますが、さらにそれを5年の短期計画に落とし込んでいます。実際には単年で進捗具合を確認していくことになるでしょう。

成果については、やはりまずは設定した目標を達成して、社会への貢献を実感できること。そしてそれがステークホルダーにも明確に示されること、こうしたことを期待しています。

また、投資家に評価されて株価が上がれば、それも成果ですし、北興化学工業の事業所のある地元の方々に「社会貢献している会社」と認知されることも成果でしょう。ビジネスの特性上、SDGsへの貢献度が見えづらく、達成した結果を示しにくい面もありますが、外部評価も大いに期待しています。

そのためには、SDGsへの貢献度をどう数値化するのがいいのか、達成した結果をKPIを使うことでより理解してもらうにはどうすればいいのか、成果の公表方法を含め、まだ検討の余地があり、今後の課題になると考えています。

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