SDGsとは
1) 日本のSDGsの進捗度は?
166ヵ国中21位
最初にSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が、今、どの程度、普及しているのか、まずは日本全体の進捗を紹介します。
2023年に公開されているSDGsの達成度・進捗状況に関する国際レポート「Sustainable Development Report 2023(持続可能な開発レポート)」では、日本は前年から1つランクを落とし、166ヵ国中21位となっています。このレポートは、米コロンビア大・ジェフリー・サックス教授が代表を務める持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)とベルテルスマン財団(ドイツ)が、国連や研究機関などから公表されている各種情報、統計データに基づいて、国別のSDGsの進捗状況を点数化したIndexを使ったランキングです。
日本の取り組み状況については、日本のスコアは100点満点で、前年の79.6点から79.4点に減少しており、そのために順位を二つおとしています。世界各国について、SDGsの17目標について4段階評価しており、日本のSDGs達成状況とも言える評価結果は次のようになっています。
まず、【達成済み】は2つで、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。次に、【課題が残る】は5つで、目標1「貧困をなくそう」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標16「平和と公正をすべての人に」となります。
【重要な課題がある】は5つで、目標2「飢餓をゼロに」、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標10「人や国の不平等をなくそう」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」になっています。そして、【深刻な課題がある】と評価されたのが、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標12「つくる責任つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」の5つという結果になっています。参考までに日本の6年間の順位と点数推移を以下の図表に示します。
続いて、2023年に公表されたレポートにおける国別ベスト21も挙げておきますが、北欧諸国が上位に並び、20位以内はすべて欧州の国々です。こうした国々の政策などの取り組み全般の名から、日本でも対応できそうな内容を、今後、参考にしていくことも求められているでしょう。
2) 政府による「SDGsアクションプラン2023」
「優先課題 8 分野」に重点的に予算配分
今後の国としての取り組みを把握する上で、押さえておきたいのが、「SDGsアクションプラン」です。政府は、SDGsに関わる各種施策の実施について、関係行政機関と相互の緊密な連携を図っています。効果的に推進するため、全国務大臣を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置。 このSDGs推進本部が、 SDGs実施指針に基づき、SDGsへの貢献を「見える化」することを目的とし、 2017年から毎年、「8つの優先課題」に基づき、政府の施策のうちの重点項目を整理・策定しているのが「SDGsアクションプラン」です。
この「SDGsアクションプラン」は、日本が持続可能な開発のための 2030 アジェンダと SDGs を実施し、2030年までに日本の国内外において SDGs を達成するための中長期的な国家戦略を具体的に示した「SDGs実施指針」に基づいています。2023年には、この「SDGs 実施指針」の改定が見込まれています。
■「SDGsアクションプラン」8つの優先課題
「SDGsアクションプラン」の8つの優先課題は、政府の重要課題として位置づけられ年度予算編成にも反映されています。全国の自治体や経済関連団体も、国の動きに連動した取り組みを展開しています。今後も「SDGsアクションプラン」を巡ってさまざまな施策が実効されていくので、SDGsの導入を図った、あるいはこれから導入する企業の担当者は、この動きにも注目しておくことをお勧めします。
3) 企業の現状 「世界で最も持続可能な100社」
日本企業のランキングイン社数は伸び悩み中
SDGsについて、国の対応状況に続いて企業を巡る状況を取り上げます。世界における先進的な企業の取り組み状況を知る上で役立つのが、「世界で最もサステナブルな企業100社(Global 100 Most Sustainable Corporations in the World :Global 100 Index)」です。100社選定のIndex評価基準がSDGsの内容と大きく重なっており、先進企業におけるSDGsの活動レベルを示すデータとして広く認められています。作成・公表しているのはカナダの主要メディアCorporate Knights社で、2023年公表の最新版では、売上げが10億ドル以上、約6,000社の対象企業をランキングしています。
評価方法は、まず「情報開示」「財務状況」および「製品カテゴリー」によるスクリーニングを経て、スコアリングが実施されます。その評価基準は24項目で、半分が全業種共通の必須項目、残りが業種に応じたウエイトによる評価項目です。以下に評価項目の一部を紹介しておきます。
エネルギー生産性/GHG生産性/水生産性/廃棄物生産性/VOC生産性/NOx生産性/SOx生産性
サステナブル売上/サステナブル投資/休業災害(LTI)率 他
順位については、今回1位に選ばれたのが前年15位だった金属リサイクル「シュニッツァー・スチール・インダストリーズ(米国)」社。日本からは前年ランクインのコニカミノルタ、エーザイ、積水化学工業の3社に加え、リコーがそれぞれ100位以内に入っています。また、日本企業の数は、2016年、2017年、2018年が4社、2019年には8社へ増え、2020年は6社、2021年5社、2022年3社、そして今回が4社となっています。なお積水化学工業は6年連続でランクインしています。
4) 国内における企業へのSDGs普及状況は?
中小・零細企業はこれからの段階
では、日本においてSDGsは企業にどの程度、普及しているのでしょうか?
SDGsについてはテレビ・インターネットなどの媒体をはじめさまざまな場で見聞きする機会が増えており、消費者を含め社会全般でその認知度は相当高いでしょう。企業における取り組みについても、大企業を中心に相当広まっているのは確実です。ただし、中堅規模以下の企業、とくに中小・零細企業においては、SDGs 自体の認知度は高いながらも、導入方法への理解などがハードルとなって、導入自体はまだ、あまり進んでいない状況があるようです。この普及状況を示すものとして、独立行政法人 中小企業基盤整備機構が2023年に公表した「中小企業の SDGs 推進に関する実態調査」では以下の結果が示されています。
5) なぜSDGsに取り組むのか?
ビジネス創出の可能性を秘めている
SDGsは企業の価値評価基準の1つとしての認識が広がっており、今や大企業だけが取り組むものではなくなっています。実際、大企業や自治体では取引や支援の条件としてSDGs対応を求める動きが見られ、中堅企業だけでなく中小企業にとっても避けて通れない経営課題となりつつあります。
例えば、「ESG投資」(環境・社会・企業統治といった非財務情報を考慮した投資)で注目を浴びている脱炭素(ゴール13)に関連して、2022年4月より東証プライム市場上場企業は、CO2排出量を含む気候変動関連の情報開示が求められています。大手自動車メーカーでは、サプライチェーン全体における脱炭素化を進めており、主要な取引先に対してCO2排出量削減を要請しています。この実例が示す通り、顧客が「購入しなくなる」というリスクが広がり、今後の事業継続にも大きく影響する可能性が相次ぐかもしれません。
このような事態を受け身で待っているだけでよいのでしょうか? むしろ、組織の柔軟性が高く地域密着で機動力のある中小企業にこそSDGsを経営に組込み、社会課題をビジネスチャンスと捉えることで、社会との共生を経て、ビジネス創出の可能性を秘めているとも言えるでしょう。
以下に中小企業や零細企業でSDGsに取り組む際のポイントと得られるメリットを紹介していきます。実際に取り組むにあたって、「SDGs活動をはじめよう!!」などと意気込みが強すぎると息切れしてしまうかもしれません。まずは、現状の自分たちのビジネスや本業に関連する日頃の活動など、今までやってきたことがSDGsに当てはまるか、眺めてみることをお勧めします。
「何か、SDGsで新しいことをやろう」とするのではなく、「今、やっている仕事や、提供している商品・サービス」をSDGsの視点で見てみるのです。その上で、仕事や商品・サービスに関連して「できることからやってみる」ことを、取り組みの入口として提案します。
SDGsは企業価値を高め、新たなビジネスチャンスの扉を開く鍵!!と言えるものです。
取り組みの一環で、自分たちのSDGs活動について情報発信してみると、いろいろな波及効果が出てくるかもしれません。
貴社のポジティブな活動を知って興味を抱いてもらえるなど、同じベクトル・価値観を持った仲間・組織との出会いが期待できます。それまでにはない、さまざまなコミュニケーションに一歩、踏み出してみることで、新たなビジネスの展開につながる糸口が見つかるでしょう。
同じベクトルを持った新たな仲間・組織が集い、ともにいろいろ考えて行動を起こすことで、コラボレーションを通してさまざまな可能性が広がっていくことが期待できるはずです。
SDGsとは、取り組むことが目的ではなく、取り組みの先に何を置くのか。企業としてもサステナブルな方向に進めることが非常に重要になっているのです。ぜひともSDGsをツールとして導入して、自社の成長のサイクルに乗せてください。
「SDGs 未来のデザイン」――― 企業の成長のために
2030年、持続可能な社会の実現に向けて、自社の未来をデザインしてみませんか?
6) 実例!! SDGs活用企業に見る
導入・運用時における6つのポイントと成果
SDGsに取り組むにはどのようにすればいいのか。ここでは実際に取り組んだ企業の経験談から、SDGs導入・運用時における6つのポイントとその成果をご紹介します。
7) SDGsをISO14001で効果的に回す
SDGsに取り組むにあたって、ISO14001の環境マネジメントシステムが役立つことをご存知でしょうか?
SDGsへの取り組みが一気に広がっていますが、ISO14001認証を取っている企業がけっこうあるようです。SDGsは企業のマネジメント全般に関係してきますが実際に取り組む際には、ISO14001のシステム、すなわち自社の取り巻く状況から自分たちの課題とそのビジネス対応を考えた上で実践し、継続的に改善していく、この仕組みが極めて有効です。さらに強調したいのは、SDGsとISO14001のそれぞれの発想が、まさに重なっている点です。
ISO14001認証を持っている企業にとっては、SDGsは決して難しいものではありません。その理由は、SDGsに取り組むにあたってISO14001の仕組みが大いに活用できるからです。続きは「SDGsをISO14001で効果的に回す」をご覧ください。
日本能率協会のSDGs講師・中川優による解説記事はコチラをクリック▼
ISO14001を活用してSDGsに効果的に取り組む 自社ビジネスを通して社会課題の解決を実現
取材先:日本能率協会 ISO研修事業部 主任講師 中川 優 (オフィスグラビティー代表 SDGs2030公認ファシリテーター)
8) そもそも、SDGsとは
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月に、ニューヨーク・国連本部で開催された国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核となるものです。
このSDGsでは、世界の解決すべきテーマを17に絞って掲げており、これらのテーマに叡智が詰まっているとも表現することができます。一方、17のゴール(目標)だけでは、抽象度が高いですが、そこに紐づく169のターゲット(指標)を通じて具体的な処方箋を得ることができるような構造になっています。
つまりターゲットはゴールにたどり着くための手段や方向性を複数示してくれているのです。企業が2030年までに自社の社会課題を解決し、SDGsを達成するためには、ゴールとターゲットの両方を理解し、活用することが重要です。つい目先の話をしたくなりますが、「未来は現状の延長線上にない」という考えのもと、未来への進むべき道しるべを自社や自分ごとに落とし込むことが求められているのです。
10年ひと昔という言葉もあります。2030年には社会の構造や、自然環境も大きく変わっているでしょう。そのような状況の中で、未来に向けた生き残るプランはありますか、という投げかけでもあります。SDGsはそのプランを開示し、投資を呼び込む。SDGsはそのようなスキームであるという言い方もできるかもしれません。
このSDGsについてあらためて強調しておきたいことがあります。それは正式名称です。
2015年の国連サミットで採択された際の文書名称は「Transforming our world : the 2030 Agenda for Sustainable Development(我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ)」です。
この名称の先頭に出てくる“Transforming”には「一変させる、 (すっかり)変える、変革する」という意味を持っています。つまり「世界をTransforming する」――これがSDGsの本質だともいえるでしょう。この単語に象徴される視点をベースに、SDGsの取り組みを推し進め、自社ビジネスを通して社会課題の解決にぜひともつなげてみてください。
9) SDGsの成り立ちをご存知ですか?
SDGsのもととなる概念として、MDGs(ミレニアム開発目標)があります。
これは、貧困と飢餓の撲滅など,2015年までに達成すべき8つの目標を掲げ、2000年に採択されました。その後、世界ではさまざまな取り組みが推し進められてきましたが、結果はどうだったのでしょうか。もちろん多くの成果がみられましたが、やはり国や地域によって目標の達成に差があること、さらには、国内においても地域や性別、年齢等による格差が認められました。
出典:ユニセフ
10) SDGs17のゴール(目標)とは?
SDGsには持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットがあると、紹介しましたが、17のゴールとは具体的にどのようなものでしょうか。
下表にキーワードでまとめてみました。自社の事業とSDGsの目標との関連を整理することを「マッピング」、「目標と紐づけを行う」というような表現もします。キーワードを見ながら直感的に自社事業と結び付けてみるのもいいかもしれません。初めに浮かんだ事業と目標は何ですか?
案外そこが貴社の胆かもしれません。
11) クイズ de SDGs!!
SDGs17の目標について、クイズを用意しました。17の目標+1問!ちょっと肩の力を抜いて、気軽な気持ちでLet’s try!! 。
「SDGsクイズ 1分間チャレンジ」17本シリーズ動画はこちら
12) 最後に 「SDGs 未来のデザイン」――― 企業の成長のために
2030年、自社の未来をデザインしてみませんか?
最後に少し目線を変えて皆様からいただいた当会に対する要望を下記にまとめてみました。下記のようなご要望は、もしかすると貴社でSDGsを進めるうえでのポイントとなる可能性もあります。当会では貴社のご要望に合わせて当会サービスをカスタマイズしご提案いたします。
- 社内構築のファシリテーションをお願いしたい
- どのように進めればいいか、分からないので手伝って欲しい
- 経営層へインプットして欲しい
- 社内浸透を進めて欲しい
- 評価を受けて公表したい
- 外部発信が難しいので教えて欲しい(SDGsウォッシュ対策)
- 既存のCSR活動との関連性を整理したい
- とりあえずHPを整えたい
- KPIの設定が難しい
- 人事考課にも結び付けたい
- 新規事業を立ち上げたい
- 社内の横軸を貫くようなプロジェクトとしたい(社内連携困難)
- ISOとSDGsを融合させたい
日本能率協会による「当面する企業経営課題に関する調査」によると、5年後の経営課題は「CSR/CSV事業を通じた社会課題の解決」が2位で、トップは、「事業のポートフォリオの再構築」でした。5年後には、事業を再編する必要が出てくるだろうし、社会課題を解決して、消費者を味方につけて事業や商品を展開していかないと駄目だという風潮になってきていることが、アンケートから読み取れます。
この結果が示す通り、すでに、SDGsに取り組むことが目的ではなく、取り組みの先に何を置くのか。企業としてもサステナブルな方向に進めることが非常に重要になっているのです。ぜひともSDGsをツールとして導入して、企業様の成長のサイクルに乗せていただきたいと考えています。
「SDGs 未来のデザイン」――― 企業の成長のために
2030年、持続可能な社会の実現に向けて、自社の未来をデザインしてみませんか?