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SDGs取り組み事例:株式会社常光

新規事業開発でSDGsを活用
自分事と捉えることで「社内浸透」を図り
SDGs発想が自然とでてくる「自走」の実現へ

1967年に創業した株式会社常光(本社:東京都文京区本郷3‐19-4 URL: https://jokoh.com)は、医療機器メーカー事業・医療機器ディーラー事業・ナノテク事業をビジネスの3本柱としています。経営指針にある「新しい価値の創造・開拓」に基づき、創業期に事業展開を図ってきた北海道では、自社製品はもちろん、他社製品も含めた医療機器、医療消耗品、体外診断薬の販売業務を行う医療総合商社として活動。 本州においては、自社製品の研究開発・製造・販売まで行う、総合医療機器メーカーとしてビジネスを展開しています。

株式会社アイネス

                  取材先:株式会社常光
                      代表取締役社長  服部 直彦 様(写真)
                      経営管理本部 総務部 部長 兼 人事部 副部長  二川 敬文 様



企業がSDGsを推進するにあたって、従業員の理解がなかなか進まないといった「社内浸透」が課題に挙げられることが多いです。自分たちのビジネスにおける展開や企業としての発展にどうつながるのか “腹落ち” しておらず、推進する意味が、従業員に浸透していない現状はありませんか?

今回ご登場いただく株式会社常光は新規事業開発においてSDGsの活用を意図して取り組んでいます。その際、「社内浸透」にあたって、自分たちが一体どうなりたいのか、「目指している像」を明確にすることで、取り組みを効果的に進めてきています。その活動内容について詳しい話を伺いました。

SDGsの取り組みを始めた経緯について教えてください。

服部社長  SDGsについては2015年に社外セミナーで知る機会がありましたが、当時はビジネスに直結するといった発想は持てませんでした。その後2018年に新規事業開発を担当する「札幌研究開発室」を開設した際、担当する従業員がSDGsに関心を持っており、導入の提案がありました。そこで分かってきたのは、ビジネスにSDGsの視点を採り入れることで、既存事業の深堀りにつながり、既存事業の延長ではない新しいビジネスを考える際にも役立つということです。
経営者という視点でも、「全社的にSDGsの考え方を定着させないと、組織として今後の発展が見込めないリスクがある」という危機感を持ちました。

新規事業開発において具体的にはどのように役立つのですか。

古田氏

服部社長  より実効力が高まると考えています。SDGsの視点を持つことによって、新しいビジネスについて可能性を検討する際、社会的な貢献と影響力という明確な判断基準が加わることになります。この判断基準に基づいていろいろ検討していきますが、着想の幅が大きく広がると同時に着眼点自体も変わることで、今まではとは異なった新しいニーズの把握につながっていくのです。

今回のSDGsの取り組みでは、日本能率協会(JMA)の連続して開催する研修をご活用いただきました。

二川様  SDGsをテーマとしたコンサルティングやセミナーはいろいろありますが、日本能率協会のホームページで、「SDGsは自分事と捉えて発想の仕組み自体を変えることが重要」と解説されていたことが決め手でした。服部社長からSDGsに取り組む意義を聞き、「自分たちの考え方を変える」という視点が重要であり、そのためにはコーチング機能もある連続研修が効果的だと判断しました。

服部社長  「自分たちの考え方を変える」ことで、具体的な行動につながっていきますが、そのためには常光として10年後、20年後のビジョン、すなわち「最終的なゴール」を明確に持つことが必要です。ゴールがはっきりすることで、短期的にどういう行動をしていくべきか、現場の取り組みにどう展開していくのか、具体的な行動につながっていくはずです。

取り組んできた流れを教えてください。

二川様(右写真)  SDGsを理解するための研修については、役員・本部長・副本部長向け、管理職向け、一般社員向けの3階層に分けて、この順で段階的に開催しています。研修を通して組織での浸透を進めながら、実際の取り組みの実務の中心は「SDGsプロジェクトチーム」が担当しています。経営管理本部、医療機器ディーラー事業部と医療機器メーカー事業部、ナノマテリオ・エンジニアリング事業部の各部門から参加してもらいました。

ここでのポイントは、責任者と若手従業員の両方に加わってもらうことで、よくありがちな「若い社員に任せておけばよい」「管理職などマネジメントがやるべきこと」という雰囲気を避けるようにしています。

このプロジェクトチームが中心になって、2030年に向けて常光としてどんなビジョンを持つべきか、この問題意識をベースにいろいろ検討を重ねてきています。

現在の取り組み状況について教えてください。

二川様  会社を挙げて力を入れていく重点テーマ(マテリアリティ)の決定を終えて、社会KPIについて検討しているところです。この後の流れは、経営上、数値目標で設定している中期経営計画に取り込んで、具体的な活動を盛り込んだアクションプランへの落とし込みにつなげていきます。

冒頭で「自分たちの考え方を変える」という話がでましたが、社内の理解はどの程度進んでいますか。

服部社長  社内の当初の様子は、SDGsについて「自分たちには関係ない」「環境に関わる問題」「そもそも中身がわからない」、こんな状態でした。★図表1★は、最初の研修「管理職」向けを終えた際の参加者アンケート結果です。ようやく最近になって理解がされつつあり、「社内浸透」が進みつつある状況で、「今の事業を、そのまま続けていくことでいいのか?」といった危機感が共有されつつあると感じています。

■図表1「SDGs 未来のデザイン」による意識調査結果

「SDGs 未来のデザイン」による診断:SDGsの基礎を含んだ推進のためのステップの研修を行い、研修を通じて質問書にご回答いただきます。
研修や回答をもとに「未来のデザイン」チャートを提出し、今後取組むべき内容やそのステップ、社内の状況の「見える化」を行います。

 




 

企業がSDGsを推進するにあたって、従業員の理解がなかなか進まないといった「社内浸透」が課題に挙げられることが多いです。「社内浸透」にはどんなやり方がよいですか。

服部社長  まず常光では「社内浸透」は既にある程度、実現しています。たとえば昇進試験における受験者のプレゼンテーションで、SDGsが採り上げられることが増えています。SDGsの目標ナンバーを挙げて「3年以内に成果を出します!!」などと宣言がされています。
ご質問については、従業員各々がいろいろ結び付けて考える、 「自分事」として捉えてもらうことが「社内浸透」のポイントだと思います。今後は「社内浸透」をさらに進めることで、担当業務にはめ込む、職場チームの目標の中に盛り込む、SDGsと関連がある方向性でプロジェクトを立ち上げるなどと、SDGsの考え方・視点による発想が自然とでてくる、「自走」の状態を目指します。

「自走」できる組織になるには、どうすればよいですか。

服部社長  先ほど紹介した「最終的なゴール」を明確にすることでしょう。自分たちは一体どうなりたいのか、すなわち「目指している像」を考えた場合、その要素の一つとして相当なインパクトがあるのが「賃金」です。従業員にとっては一番身近で関心のあるテーマ、まさに先ほどの「自分事」になるからです。

「10年後の賃金水準を〇×%アップするためには、今、自分はどういう行動をとればいいのか?」から、先ほどの「今の事業を、そのまま続けていくことでいいのか?」といった危機感につながり、「今まで何十年もやっているので、単に続けるのではなく、新規事業も含めてどうやってステップアップするか?」といった前向きな考えに変わっていくのです。

関連する話になりますが、「賃金」に直結するのがビジネスにおける利益です。そもそもSDGsとは、理想的な社会を創るために世界中が協力しあって17の目標に向けて行動を起こすことです。
社会を構成する一企業として、社会貢献は必要不可欠なテーマであり、その大きさによって利益が増減し賃金に反映する、利益の大きさは社会貢献の裏返しということが見えてきます。

話は戻りますが、先ほどの「目指している像」について詳しくお願いします。

服部社長  「目指している像」はサステナブル経営、持続可能な経営であり、その答えの一つが「従業員が身近な人に入社を勧められる会社」になることです。自身も長く働きたい職場であり、すなわち「働き甲斐」があるということでしょう。

先ほどの賃金に加え、職場環境を巡るさまざまな課題、リモートワークなど自由な働き方、有給休暇の取得、女性の活用等々、従業員が能動的に働きたいと思えるようなテーマについて整えていくことが必要です。
同時に組織自体の体質強化も重要で、たとえば情報セキュリティ体制の構築、災害に遭っても商品・サービスを供給できるBCP(事業継続計画)の策定といった対応も必要になるでしょう。

もちろん、いきなりすべて実現するにはハードルが高いですが、「目指している像」を具体的に示していくことが、求められていると思います。
SDGsは、新しいビジネスモデルの立ち上げなど新規事業開発に役立つことも含めて、「目指している像」を通して従業員に長期ビジョンを提供できる点でも高く評価しています。

賃金をはじめいろいろなテーマは経営の立場では明言しにくいものも含まれると感じますが。

服部社長  今はむしろ打ち出すことが求められているはずです。現場の士気や従業員の定着化等々、長期的にはプラスの効果につながっていくからです。逆に従業員に結果を含めてキチンとアナウンスしないと、絵に描いた餅、今までやっていたことと変わらないなどとネガティブに受け止められかねないでしょう。
感想になりますが、取り組みを振り返ってみると、SDGsは会社の在り方を再確認する最適な機会にもなっています。

従業員の立場から今までの取り組みを振り返って感想をお願いします。

二川様  最初にSDGsに取り組む話を聞いたときは、常光の商品・サービスは医療分野であり、しっかりと提供していれば社会貢献は十分ではといった感想を持ちました。ただその後には、服部社長の「社会の価値観が大きく変わってきており、従来の延長で同じことをやっているだけでは生き残れない」という説明に納得した記憶があります。

「自分たちの考え方を変える」という点ではいかがですか。 

二川様  日本能率協会の中川優講師の研修に参加したことで視野が変わり、社会貢献の範囲が広がっています。たとえば、自分たちの商品・サービスについて、直接、社会で役立てるといった視点に加えて、環境影響はどうなっているのか、あるいは、常光の利益だけの仕組みになっていないか、お客さまも含めた幅広いステークホルダーの利益も考慮しているのか、そういった点をより深く考えるようになりました。

お客さまが本当に喜んでくれる、現場で欲しいと感じている、こういった視点で、より掘り下げ、より広い視点でモノゴトを見るようになったのです。よくよく考えてみると、これはSDGsだからというわけでなく、ビジネスを進める上ですべてにあてはまることのはずです。

    札幌支店全景

これからSDGsに取り組む企業へアドバイスをお願いします。

服部社長  常光は「何事もまずは行動しよう」といった考えを重視しており、これはSDGsでも当てはまります。実際に行動に移すことで、必ず何か得られるはずです。SDGsに取り掛かるにあたって、いろいろな切り口があるでしょう。全く別の分野でベンチャービジネスとしてやっていく、やっぱり自分たちの業態を活かす、自分たちにとっての判断に基づいて、まずは行動していただければと思います。

二川様  会社が変わる証拠を示して組織として熱意を持ち続けることで、SDGsのような活動は深まっていくと思います。若手従業員はSDGsには関心を示しており、いろいろやりたがっていると感じます。組織によってはベテラン勢が変化を避けたがるかもしれません。ですからトップがSDGsをやっていくと発信し続けることが必要です。
常光がうまくいっているのは、服部社長がSDGsに関する決意や方針を適宜発信されてきたことが効果的だったと思います。

SDGsについて、今後の取り組みについてお願いします。

二川様  「自走」に向けては、従業員の理解力、考える力、そしてコミュニケーション力を含めた発信する力が重要になってきます。人事部として、これらの能力を一人ひとりにレベルアップさせる研修などの仕掛けに取り組んでいきます。

服部社長  SDGsの視点によるビジネスの可能性になりますが、創業地である北海道では、将来的に人口減少が見込まれます。そういう状況になっても快適に住み続けられる社会環境の維持という切り口で企業としての貢献を考えています。強みを発揮できる分野としては、たとえば医療の遠隔診療などがありえるでしょう。デジタルネットワークなどIT・DX活用による地域医療を支えるビジネスには、まさに関心があります。
一方、東京本社を中心としたビジネスでも、今までの検査業務で培ってきた経験をもとに、たとえば、今、注目されている健康寿命の分野で常光の商品・サービスを通じてどんな社会貢献できるのか、SDGsの視点を持って幅広くいろいろ検討していきます。

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