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「JMAQA AWARDS 2020」

Award-winning organization

【JMAQA AWARDS 2020 受賞企業様 インタビュー】
コマニー株式会社

「コマニーメビウスモデル」を構築し、SDGsに取り組む
~ISOとSDGsを有機的に結びつけ、経営と一本化~

取材先:コマニー株式会社
代表取締役 社長執行役員 塚本 健太 様
参与 品質保証本部本部長 兼 ISO管理責任者 坂本 豊伸 様
品質保証部 部責任者 林 均 様
品質保証部品質保証課 山田 一恵 様 


左から;品質保証部品質保証課 山田 一恵 様
参与 品質保証本部本部長 兼 ISO管理責任者 坂本 豊伸 様
代表取締役 社長執行役員 塚本 健太 様
品質保証部 部責任者 林 均 様 



日本能率協会審査登録センター(JMAQA)では、ご登録いただいている組織を対象とした表彰制度「JMAQA AWARDS」を設けています。
この表彰制度は、事業とマネジメントシステムを一体化させることで成長している組織の取り組みを称え、広く紹介することを目的としています。

第3回目となる「JMAQA AWARDS 2020」では、審査員による推薦組織の中から選考委員会の審議を経て、
コマニー株式会社様、株式会社ディスペンパックジャパン様、そして不二製油株式会社様の3社が受賞しました。
ここでは、コマニー様に詳しい話をうかがいました。

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受賞テーマ「SDGsおよびISOの事業プロセスとの統合について」

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選考理由
コマニー様は、石川県小松市に本社を置く、パーティションの専業メーカーです。ISOマネジメントシステム規格の認証はJMAQAからは、ISO9001を1999年から、ISO14001を2001年から登録されています。コマニー様では、2015年に国連加盟国が採択した持続可能な開発目標であるSDGsについて、2018年4月に「SDGs宣言」を発表し、これを実現するための「コマニーSDGs∞(メビウス)」という独自の発想によるマネジメントのモデル図を構築しています。
今回、目標管理プロセスにおいては、2019年度の「経営計画書」(ダイジェスト版)である「施策一覧」の中で、施策テーマごとに品質、環境、リスク(会社として重大なもの)の区分けを明確にするとともに、SDGsの17ゴールとの関連も明確にしており、ISO、SDGsと事業プロセスとの統合を図っていることが評価され、授賞となりました。

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コマニー株式会社様  企業概要 / 事業領域概要
設立:昭和36年8月18日
本社:石川県小松市工業団地一丁目93番地
代表者:代表取締役 社長執行役員 塚本 健太
事業内容:パーティション(間仕切り)の製造、販売、設計、施工

◇オフィス空間向け
オフィスのレイアウト変更、新設、引っ越しを検討している企業に対して、販売代理店と共にパーティションのご提案・販売を行います。
◇公共施設・大型施設向け
建設会社や官公庁への提案・販売活動を行います。大手ゼネコンをはじめとする建設会社への新築物件の受注活動など、直接営業活動を行うことが特徴です。
◇オフィスデザイン
オフィスのデザイン設計、プロジェクトマネジメント業務、オフィス家具の調達、セキュリティー・ネットワークなど、オフィスのデザインから完成までの全ての工程を行っています。
◇医療福祉環境事業
病院・福祉施設向けの木製ドアを中心に取り扱っています。木製ドアの「やさしい」シリーズには、利用者様の声が反映された様々な商品が揃っています。
◇クリーンルーム事業
室温・清浄度管理機能作業、作業環境改善機能などの各種機能、ユーティリティに優れているパーティションを中心に取り扱っている事業です。

代表取締役 社長執行役員 塚本 健太 様


1. 「コマニーSDGs∞(メビウス)」モデルを制定
  ― SDGsとISOを有機的に結びつけ、事業価値を高める

コマニーは1961年の創業以来、2回の事業転換を図っています。1回目はキャビネットメーカーからパーティションメーカーへの事業転換、2回目がリーマン・ショックを発端とする経営難からの経営理念の転換で、当時、創業の精神に立ち返り、「企業は世の中の幸福に貢献するために存在すべきである」という新たなテーマを掲げたのです。そして、2015年に国連が制定した「SDGs」の考え方に出会うことになります。

「はじめてSDGsを知った時、もともとコマニーが目指していた『いかに社会へ貢献するかが企業価値である』という考え方にまさに合致するものだと思いました。企業としての存在が、利益だけでないもので評価されるようになったと、大変嬉しく感じたのを憶えています。そこでコマニーでもSDGsを経営に実装しようということになり、具体的にどうするかを考えました」と塚本氏は振り返ります。そして紆余曲折を経て、ステークホルダーだけでなく地球環境も含めたすべての人々を幸せにする経営を目的に、「コマニーSDGs∞(メビウス)」モデル(以下、メビウスモデル)を独自に作り上げたのです。

■「コマニーSDGs∞(メビウス)モデル」

「メビウスモデル」とは、SDGsが2030年までに目指している17のゴールの達成に向けて、コマニーが事業および事業以外の活動において、「どのような課題があり」「どのようなステークホルダーについて」「どのように幸せにしたいか」、あるいは「どのようなリスクがあるのか」といったことをまとめたものです。
ISOでは、内部外部の「課題」、利害関係者であるステークホルダーの「ニーズおよび期待」、そして「リスク」を把握することが求められますが、これらはまさにSDGsのゴールから勘案したときの課題や、取り組むべきテーマと合致するという考え方と重なってくるのです。

逆に言えば、SDGsとISOを合致させるべきと考えました。ISOのマネジメントシステムにあるリスク・機会については各部門で目標設定をして計画を立てており、それらをSDGsの17ゴールと有機的に結びつけることによって一本化を図りました。ISOはすでに経営そのもの仕組みになっていたので、そこにSDGsを結びつけて事業価値を高めていくようにしたわけです」(代表取締役 社長執行役員 塚本 健太氏)。


代表取締役 社長執行役員 塚本 健太 様

 

具体的な施策について、コマニーの品質保証部品質保証課 山田 一恵氏は「経営計画書」のイメージを示しました。ここには、それぞれの施策がSDGsのどのナンバーの貢献につながるかが記載されています。例えばコマニーの重大リスクに関連している項目では、重大リスクに取り組んでいる部署が対応スケジュールを立てることになります。

■「経営計画書」のイメージ

「経営計画書を見ると、例えば残業時間を一定時間削減すると、照明を使う必要がなくなるので電気の使用量も削減されます。これはSDGsの13番『気候変動』のゴールに貢献します。また、残業時間の削減は働き方の改善になるので8番『働きがい』にも貢献します。さらに、ここには書かれていませんが、残業時間を削減するためには生産性を高める必要があります。これはレバレッジポイントである9番『技術革新』にもつながっていくのです」(山田氏)。

■「経営計画書」の詳細イメージ

コマニーでは、すべての部署がこの「経営計画書」をベースに施策を立てています。それぞれの部門で毎月あるいは毎週の単位で経営会議を行い、その会議には全社員が参加して情報共有を図っています。そのため、全社員が自分達の施策がどのSDGsナンバーにつながっているのか、社会や世界にどのように貢献するのかを認識しながら、日々業務を行っています。

参与 品質保証本部本部長 兼 ISO管理責任者 坂本 豊伸 様


2. メビウスモデルにより商品開発の考え方にも変化
 ― SDGsへの取り組みが新たなビジネスチャンスを生む

コマニーがSDGs宣言をして2年ほど経過しました。現時点での成果や、新たに明らかになった課題などをうかがってみると、「そもそもSDGsを経営に実装するためのメビウスモデルを作ることができたのが一番の成果です」と塚本氏は言います。社会に貢献するにはどうしたらいいのかを考えて経営してきたものの、SDGsと照らし合わせてみると、対応できている部分とそうではない部分があるのが分かったそうです。
メビウスモデルによって、明確に把握でき、改善のために努力が必要なところも分かり、さらにコマニーの技術を使うことで、イノベーションを起こせるという、新たな気づきもあったとのことです。まさに商品開発にもつながっていく視点です。

コマニーでは、「バックキャスティング」という考え方で商品開発に取り組んでいます。これは、お客様の課題とニーズを把握してあるべき姿を設定し、そこから逆算して商品を開発するという考え方です。実はメビウスモデルもこの「バックキャスティング」と同じ発想で運用してきたのです。
2030年の姿から逆算することで、自分達が世の中に果たすべき役割を新たに認識できたといいます。「今のようなコロナ禍の厳しい環境の時こそ、目指すべき方向性がSDGsの中にあることを再確認できました。ISOをしっかりやっていれば、結果的に経営がよくなるのです。コマニーはその点で、ISOの要求事項を満たしており、改善を重ねていくという経営の方向性が一本化できていた、このことは非常によかったと感じています」と塚本氏は言います。


取材では皆様からご意見をいただきました。

SDGsの目指す世界では、課題については人類にとってとてもハードルが高いゴールが設定されています。そのため、やればやるほど課題がたくさん見えてくることも事実です。ただ、その課題が見えるようになったこと自体がマネジメントシステムの良さであり、出てきた課題については前向きに取り組んでいるといいます。

実際、コマニーではさまざまな課題と向き合い、会社として改善の取り組みを重ねています。「『人が家を一歩出た瞬間から、より良く働き、より良く学び、より良く生きるための持続可能な環境づくり、人づくりを目指して』をトップとして発信し、その実践者となるべく、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)にも取り組み、女性の活躍を含めて多様な働き方をしながら輝いていける社会づくりにも注力しています」(塚本氏)。

さらに、SDGsに取り組んでいることがビジネスチャンスにつながることもあると塚本氏は強調します。メビウスモデルを発表した当時は、SDGsという言葉が広まり始めた時期であったことから、いろいろな業界から問い合わせがあったといいます。そこからご縁ができたり、パートナーシップに発展することも少なくないのです。
塚本氏は「SDGsの理念に共感していただきパートナーを組む企業様が増えました。そのため、従来は知り合うことのない企業様とつながりができることが多くなっています」と言います。

また、SDGsの考え方から新たな製品が生まれたケースもあります。例えば「Dear-d」というユニバーサルデザインのトイレブースの引き戸は、車椅子の方や身体にハンディキャップがある方でも使いやすいものとして開発されました。もうひとつは、地震に強い間仕切り「Synchron」です。これもやはり地震大国で人々の安全をいかに守るかという視点からできたものといえます。

品質保証部 部責任者 林 均 様


■SDGsの考え方から生まれた製品
他にもSDGsを念頭にした取り組みをISO規格に照らし合わせてみると、例えば7.1.4項の資源に関しては必要な環境の提供という項目があります。「コマニーは、仕事と子育てを両立できる働きやすい職場環境作りということで、『くるみん』認定を受けています。また、従業員の健康管理にも力を入れており健康経営優良法人の認証の取得もできました」(山田氏)。


品質保証部品質保証課 山田 一恵 様


■SDGsの規格に沿った取り組み

3. メビウスモデル発表から2年が経過して出てきた効果や課題
 ― 仕組みとしてのISOは非常に運用しやすく今後も活用

コマニーのさまざまな活動はSDGsへの取り組みが前面に出ているイメージですが、特長はISOの仕組みとSDGsを、マネジメント面で一本化している点だといえます。特にISOの部分でのメリットをうかがうと、「ISOは歴史や強みがあり、環境や品質に対する取り組みで大いに活用しています」と塚本氏は言います。例えば、SDGsの環境問題は非常に重要なテーマで、コマニーは再エネ100%を目指しており、超大手企業しか参加できない「RE100」の中小企業向けの取り組みである省エネ100宣言「RE Action」に初回の団体として参加しています。

この環境問題への実践として、温室効果ガスの削減目標でパリ協定が目指す「1.5℃目標」の達成に対しての科学的根拠にもとづいた目標設定が認められ、SBTイニシアチブから2020年4月に認定を取得しました。「コマニーにとっては現在の活動の延長線上では届かないような高い目標ですが、届くか届かないかではなく、人類がこの先、地球に住み続けられるかどうかという観点から『なんとしても私たちの技術で届かせるんだ』と考えています」(塚本氏)。

ここでは技術革新も必要になってくるかもしれませんが、コマニーでは目標から逆算するバックキャスティングの考え方を大切にしているのです。決して簡単ではない目標に対して、現状からの積み上げではなく、目標から逆算することで実現するのです。「その過程においては、やはりISOの仕組みはなじみがあり、非常に活用しやすいと感じています。ISOの環境目標については、今期に入っても目標を達成できるかどうかのせめぎ合いをしていますが、そのくらいの方が高い効果が得られるはずです。

今後もISOマネジメントシステムとメビウスモデルで一体化した仕組みを活用して、自分たちのビジネスを通して、今まで以上に広く社会貢献につながる事業展開をはかっていきたいと考えています」(塚本氏)。

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