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SDGs対応のポイントについて
セミナー講師・中川 優 が詳説

セミナー講師 中川 優
        あらゆる企業にとってSDGs対応には猶予なし! 
     取り組むにあたっては環境・サステナビリティだけでなく
        すべてのマネジメント側面を考慮せよ

               取材先:日本能率協会 ISO研修事業部 エキスパート 中川 優


2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた17の「SDGs(持続可能な開発目標)」は、2016年1月に発効しました。世界各国において、発効後の15年間、すべての人々に普遍的に適用される17の新たな目標に基づいて、取り組みを進めていくことが共通認識になっています。

SDGsが目指す持続可能な開発を達成するためには、「経済成長」「社会的包摂」「環境保護」という3つの要素を調和させていくことが欠かせません。今日、すべての企業のあらゆるビジネスにおいて、まさにこの3要素を重視したマネジメントが必須となる状況になっています。当会 審査・検証センター ISO研修事業部 エキスパート 中川 優にSDGsについて解説してもらいます。

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Q.SDGsという単語をいろいろなところで見聞きするようになっています。

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称です。国連加盟(193ヵ国)が2030年までに達成するために掲げた持続可能な17の目標として、2015年の国連サミットで採択されました(図表参照)。最近、企業の間で、中期経営計画やCSR(企業の社会的な責任)の戦略を策定する際に検討するためのインフラとして活用されるケースが出てきています。

今、このSDGsが注目を集める背景として、社会全般における関心対象が「環境」から「Sustainability」へとその幅が広がっていることが関係しています。企業を取り巻く状況変化のスピードがますますはやくなっており、「環境」を意識するだけでは取り組むべき経営課題のすべてを網羅できなくなっています。これからは「経済」と「社会」を加えた視点、すなわち「Sustainability」の見方が欠かせなくなっていると言えるでしょう。

SDGs内容

2030年までに解決すべき世界が抱える課題を17の目標と169のターゲットに整理。この中には直接環境に関連する循環型社会、低炭素社会、自然共生社会に相当するもの(目標7、12、13、14、15など)に加えて、飢餓、貧困、人権、教育などの社会課題も含まれています。*図表出所:国際連合広報センター

Q.SDGsが企業活動において重要になってきている理由を教えてください。

SDGsが欠かせない理由は上記のとおり5つあります。その上で企業活動においてなぜ重要になってきているかをご紹介します。

まず、世界的に蔓延する貧困や飢餓が不平等やテロ等の温床と指摘されています。その中で国境を越えて企業が持続可能な目標に取り組むことは社会の期待に応えるものです。そしていざ取り組んでみると「将来のビジネスチャンスの見極め」のために欠かせないこと活動であることが分かってきました。そこでSDGsは、世界的規模で資本が、17課題の解決に向けての革新的なソリューション開発や抜本的な変革を実現できうる企業を後押しするようになりました。まさにSDGsへの対応が新規市場の開拓などにつながってくるので、企業は投資サイドからは関心を持ってウォッチされているのです。

また、「ステークホルダーとの関係の強化、新たな政策展開との同調」の実現も挙げられるでしょう。SDGs は、グローバル、国家、さらには地域レベルで、ステークホルダーの期待と将来の政策の方向性を反映しています。企業は、SDGsと経営上の優先課題を統合させることで、顧客、従業員、その他のステークホルダーとの協働を強化できるのです。逆に統合させない場合、法的あるいは評判(レピュテーション)に関するリスクにさらされる懸念が高まります。

以上を踏まえて、「SDGsがもたらす企業経営へのメリット」を図表にまとめました。

SDGsがもたらす企業経営へのメリット

Q.「SDGs=環境、エコ」「SDGs=ISO14001」と認識されているようです。

SDGsは企業のマネジメント全般に関係してきます。ここで強調したいのは、「SDGsとは環境マネジメントシステムとの相性がいいという点」です。

強いていえば、ISO14001の環境マネジメントシステムだけでなく、ISO9001、27001、45001などすべてのマネジメントシステムにも使い勝手がいいと考えています。自社の取り巻く状況から自分たちの課題、すなわちビジネス対応は、SDGsの発想と重なっているのです。

Q.企業活動に伴うリスクを17の観点で把握するわけですね。

外部環境を分析、課題を把握する経営ツールとしては、PEST(Politics、Economy、Society、Technology)分析がよく知られています。経営や事業の戦略を考えていく上での代表的なツールであり、4つの切り口から外部環境の変化を把握し、経営上の課題抽出に使われます。この分析の際、広い意味でのSociety(社会)な目線を採り入れたのがSDGsです。

世の中の多くの企業は、SDGsは自分達とは関係ないと考えているようですが、この発想は時代遅れになっているでしょう。今日、「経済社会の持続可能な発展がなくしてビジネスの成功はない」という考え方が、CSRの観点からもグローバルスタンダードになっており、それに伴うSDGsは企業経営の面から対応が欠かせなくなっているのです。

Q.当事者意識が求められていることが分かりました。

例えば「持続可能性」への対応について、かつては環境(例えば、公害問題)が重視される傾向がありました。ですが、地域の環境だけでなくもっと広い地球規模や社会全般で捉えるべきで、実際にごく普通の会社でも見方を変えることで関わってくることがたくさんあるのは、皆さんご存知の通りです。

一例として最近、マスコミなどでよく採り上げられるプラスチックごみの例をご紹介します。SDGsでも14番目の項目になっており、中国が世界中から受け入れていたプラスチックごみの輸入を禁止した「中国ショック」もあって、世界の関心が急激に高まっています(図表参照)。

このプラスチックごみについて海洋資源に影響を及ぼすことが問題視されています。現状ではリサイクルされるのは全体の1割程度で、800万トン以上のプラスチックが海に流れ込んでいるのです。その中にはマイクロプラスチックという細かい破片になるものもあります。これらを魚や鳥が餌と間違えて食べてしまい、その魚を私たちが食糧にしています。まさに生態系サイクルに悪影響を及ぼしかねないこの状況にサスティナブルに対応することが、企業に求められているわけです。

SDGs目標14 海洋資源

話を戻しますが、このプラスチックごみについては、社会にとっては環境問題ですが、プラスチック製造メーカーやレジ袋を提供している小売業にとっては経営問題そのものです。関係する法規制は厳格化されつつあり、場合によっては経営の根幹を揺るがす、まさに経営上のリスクにあたります。

一方、プラスチックストローを紙製ストローにとって代える動きがあり、紙製を作っている会社にとっては大きなビジネスチャンスになります。この例にようにどちらの立場からも環境云々に限定する話ではないのです。

Q.ビジネスそのものに関係するなら社内の多くの部署の協力が必要になってきます。

環境や品質担当はむろん、企画・設計担当から、調達、製造、営業担当、あるいは経営企画などの管理部門を含めて、社内のさまざまな部門が、自分たちの影響を考えて取り組むことが必要になります。

ここで避けたいのは、狭い意味での「環境」や「Sustainability」だけだと捉えてしまい、取り組み内容が限定され、結果としてあまり役に立たない活動に終始してしまうことです。

例えばすべての企業に関わってくるテーマとして地球温暖化があります。その対応に関して、「モノを作っていないのでCO2排出量は多くはなく、削減のための効果的な対応策はありません。そのためにオフィス部門で省エネを進めてきましたが、削減が限界にきて頭打ちです」などという話はよく聞きます。

ですが、ここで期待されているのは、提供する商品・サービスに関連させたCO2削減の取り組みです。ですから、どんなビジネスでも削減のための活動は見つかるはずです。

Q.組織内において、全社的な課題として捉えてもらうには説得材料が必要になります。

SDGsは、企業経営において重要な資金調達であるファイナンスと密接な関係があることを再度強調しておきます。ここで注目したいのがESG(Environment、Social、Governance)投資です。

従来、企業は投資を受けるにあたって、会計決算の利益率などの財務情報が重視されてきました。ところが最近、ESG投資が存在感を増すにしたがい、「環境」「社会」「ガバナンス」への対応状況といった非財務情報も考慮されつつあるのです。(図表参照)

金融が持続可能性に関心を持つ理由

このESG投資が広がっている背景には、国連環境計画(UNEP)と国連グローバル・コンパクトが推進している責任投資原則(PRI)の存在があります。このPRIに署名している企業は世界で約1,500社にも及び、国内でもPRI日本版をいくつもの企業が受け入れ表明しています。これらの投資原則自体には法的な拘束力はありませんが、機関投資家にとって投資先のESG課題の対応状況をしっかり見ることは、投資リスクへの対応になりますし、その社会的責任からも欠かせないのです。

このように、SDGsとはファイナンスをバックにした社会や環境、ガバナンスの「モノの見方」なのです。長年やってきた自社ビジネスが、社会にどのような影響を及ぼしているのかの観点から、あらためて見ていくのです。今やっていることを、SDGsという切り口で改めて再確認する、このように捉えてもらえばいいでしょう。

Q.対応次第では資金調達に直に影響があることが分かりました。

投資家は、ESG関連のテーマに実際にどの程度取り組んでいるのか、しっかり見ています。対応する体制作りを含めて取り組みが遅れていると、投資家から選別されかねません。このESG投資への企業としての対応項目がSDGsと関連しているのです。企業として、社会が持続可能な発展に向けて貢献しているかどうか、しっかり選別する投資手法に認められるには、まさにSDGsへの対応が欠かせない状況になっています。

Q.持続可能性を巡る近年の動きとして、2010年にCSRの国際規格ガイダンス文書・ISO26000が出て、2015年に年金積立金管理運用団体(GPIF)によるPRI署名によってESG投資が後押しされ、同じ年の国連でのSDGs策定という流れになっています。

CSR自体はマネジメントシステムではないので、企業の中でファイナンスとは直接的なつながりは持てませんでした。そのために、経営面と直接的に結び付けて取り組まれるケースは多くはなかったようです。その一方でCSRが広く認知されることで持続可能性の考え方が広まり、その後、Sustainabilityという言葉に受け継がれてきたのは間違いないでしょう。

Q.このトレンドの上にSDGsがあると分かりました。

実際に取り組むにあたって、CSRを理解しておくことも重要です。以前、CSRでよく見られたのは、製品やサービスが国内完結型のビジネスの場合、「CSR=環境」と限定的に捉えてしまって、社会的側面についてはあまり意識せずに対応してきたパターンです。ですが、今日、サプライチェーンを含め海外とどこかでつながりと持っているケースが多く、本来の意味のCSRを意識せざるを得ない状況です。

CSRについて、例えば人権対応は海外では以前から最重視項目になっていますが、日本では「差別」「いじめ」と限定的に捉えられています。その人権に関連しますが、最近、ようやく日本でもパワハラや女性の管理職比率が話題になっていますが、海外は以前から問われていたテーマです。もちろん国内でも本来のCSR にしっかり対応している企業も少なくありませんが、全体で見てみるとは企業によって温度差が感じられます。

一方、SGDsについては、グローバル企業か国内完結企業かなどは関係なく、業種・業態や組織規模の大小についても一切問わず、すべての企業が当事者として配慮することが必要です。

Q.SDGsに関心を抱き、これから取り組む企業様に向けてアドバイスをお願いします。

SDGsとビジネスパフォーマンスの関係は鶏と卵の関係と同じです。「いち早く意識して取り組む企業は、ビジネス感度や組織の柔軟性が高いので、ビジネスでハイパフォーマンスが得られる」、逆に「ビジネスパフォーマンスが高いのでSDGsをいち早く意識することができる」、このどちらが先かは言い難く、まさに鶏と卵のような関係なのです。

ここでは「SDGsとは未来の卵」と考えることをお勧めします。「今、鶏を育てておかないと将来的に卵は生まれない」ということです。

Q.その鶏を育てるにあたってSDGsの17のヒントがあるわけですね。

投資家から、「あなたの会社には待ち受けている17個のハードルは見えますか? 見えるならどれをどのように跳んでいくのですか?」と問われているのです。全て取り組む必要はありませんが、順にテーマを増やしていくのでも良いでしょう。また、すぐにスムーズに跳べなくてもいいのです。まずは跳ぶことに向けた姿勢が見られているのです。

SDGsには、取り組む際のテーマや分野に縛りはありません。自社の経営の在り方、戦略の立て方、あるいは将来目指している姿に向けての活動、つまり経営課題やリスク及び機会を確認するための基本的なツールだと考えていただくと、何をすべきかが見えてくるはずです。

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中川からSDGsに取り組む企業様へのアドバイス: 「環境やSustainabilityをテーマにした社内教育やE-ラーニングを行っている企業様は多いでしょう。もしマンネリ化しているなら、SDGsにテーマを広げた研修に切り替えてみるのもよいでしょう」

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