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「JMAQA AWARDS 2023」

Award-winning organization

【JMAQA AWARDS 2023 受賞企業様 インタビュー】
株式会社ナラザキフーズ 釧路工場

事業と統合した仕組みを現場で導入し
外国籍従業員の活躍を促進
職場全体の活性化につなげる

取材先:株式会社ナラザキフーズ  釧路工場
副本部長  落石 剛次 様  
                 品質管理課 係長 木下 七美 様         




株式会社ナラザキフーズ 釧路工場では、約5割の外国籍従業員のために、業務関連のさまざまな文書類やコミュケーションを英語と日本語で併記、
改善提案活動など社内活動の参画の促進など、現場で主戦力として活躍できる仕掛けを導入し、組織内全体の活性化につなげています


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【認証取得】  JFS-C規格 : 2020年取得

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【受賞概要】


株式会社ナラザキフーズ 釧路工場(北海道釧路市新野24‐1072)は、たらこ・辛子明太子を製造、とりわけ希少な北海道産の卵にこだわり、安全と美味しさを追求した各種製品は好評を博しています。大手コンビニの製造ベンダーとして、二社監査を含めて厳しい要求事項に対応しているHACCPの仕組みや衛生管理のレベルは、業界でもトップクラス。日本能率協会審査登録センター(JMAQA)による認証は、JFS-C規格を2020年より登録しています。

同社では、食品安全の仕組みについて「事業との統合を図ることで現場の活性化」を実現しており、今回、この点が評価されました。たとえば約5割の外国籍従業員のために、業務関連のさまざまな文書類やコミュケーションを英語と日本語で併記、改善提案活動など社内活動の参画の促進など、現場で主戦力として活躍できる仕掛けを導入し、組織内全体の活性化につなげています。



  歴史あるナラザキフーズの明太子は、手間と時間を厳選した素材を惜しみなく注ぎ丹念に作られた極上の逸品。



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大手コンビニの要望でJFS-C規格を取得
二者監査対応で導入していた仕組みを改善

株式会社ナラザキフーズ 釧路工場(以下、ナラザキフーズ)では、2020年にJFS-C規格の認証を取得しています。食品安全マネジメントシステム規格としてはJFS-C規格のほか、ISO 22000、FSSC 22000も一般的です。今回、なぜJFS-C規格を選んだかというと、「ナラザキフーズの最大の販売先である大手コンビニエンスストアから、食品メーカーに対する推奨事項として、JFS-B規格以上への対応という話があったからです」と副本部長である落石剛次様が説明してくれました。

最大の販売先から求められたことから、JFS-C規格へ取り組むことになりましたが、そのスタート時点で、食品安全の仕組みはすでに導入していました。当時の状況を次のようにいいます。

「食品安全の対応については、それ以前より大手コンビニの製造ベンダーを中心に製品を長年供給してきており、二者監査を含めてレベルの高い顧客要求事項に応えるために、HACCPの仕組みの導入・運用や衛生管理活動を実践してきていました。
たとえば大手コンビニを含めたお客さまからの要求で、平均すると月に3~4回の頻度で二者監査を受けていました。この二者監査自体、技術指導などのアドバイスを直接、受ける場にもなっています。お客さまのご要望に応じて改善を重ねてきたことで、食品安全への対応レベルについては業界でトップクラスだと自負しており、実際に高い評価を受けています」(落石氏)

古田氏 「自分達でシステム構築したことで、現場に沿った仕組みにすることができた」と語る副本部長  落石 剛次 様。 

その当時は、HACCPのモニタリング関連、一般衛生管理、各種機器の点検等々といった一連の対応については、通し番号のついた社内マニュアル・手順書を整備していました。取り組むにあたっては、これらの文書をベースとしましたが、JFS-C規格の要求に合うように文書全体を整える迄には時間がかかったといいます。

「今回、社外のコンサルタントに頼らずに全て自分達で取り組みました。確かに手間はかかりましたが、JFS-C規格の内容を理解しながら進めたので、現場に浸透した仕組みにすることができたと思います。
もちろん取り組み自体は大変な面もありました。食品安全における文書化では、記録の仕方はどうやればいいのかといったことから、文書体系の最上位の規定書はどのようなものがいいのか等々、いろいろ悩みながら取り組んできました。2020年当時は、まだJFS-C規格の解説書などもない状態でした。

そこでFSSC22000、ISO22000の解説資料を参考にしつつ、JFS-C規格とは異なる点を押さえながら進めていきましたが、とりわけ役立ったのが、日本能率協会審査登録センター(JMAQA)の『JFS-C規格ガイダンス』です」(落石氏)
(*『JFS-C規格ガイダンス』は、JMAQAで受審予定の組織に配布しています)

5割の外国籍のために文書類を英語化
「見せる衛生管理」を極める

今回のJMAQA AWARDS 2023において、ナラザキフーズは「事業との統合を図ることで現場を活性化」が高く評価されました。その一つが、外国籍従業員を主戦力として取り込むことで、組織の仕組みの改善と成長につなげていることです。

現在、水産加工業の現場では労働者の確保は大きな課題となっており、海外から人材育成を目的とした技能実習生または特定技能生を積極的に受け入れるケースがあります。ナラザキフーズ釧路工場でも海外特定技能生や技能実習生として多くの外国籍従業員が在籍しており、全体の約5割(主にフィリピンからで女性が中心)を占めています。
同社では、受け入れ段階から、ただ単に一時的な働き手という位置付けでなく、労働環境や生活環境の改善・向上に積極的に取り組んできており、家族的な雰囲気の中で、より充実感を持って働いてもらうことに最大限苦心しています。

「海外から従業員を受け入れるようになって8年になりますが、当初は品質管理に関連する仕事ではなく、専ら現場の作業を担当してもらっていました。もちろん一般的な衛生管理への対応でも全員がしっかり取り組むことが欠かせないので、組織として工夫を重ねてきています。たとえば入室チェックや手洗いのやり方などの入社時教育について、当時は日本語の手順書しかなかったので、彼らにも徹底してもらうにあたって、コミュニケーションで苦労しました。
日本人従業員に対しても同じですが、『爪が伸びているよ』とか『手を洗ってください』などとマネジャーが言うだけでなく、髪の毛やユニフォームのチェックなどいろいろある事項を自主的に確認してもらうようにしたい、そのために手順書を英語化したり写真で示したりするなど、その重要性を伝わるようにしてきました」(落石氏)

外国籍従業員は、当初は6人でしたが今では30人を超えています。それに伴いメンバーの役割も変わってきており、日本語が上手な人材を昇進させて、活躍できる場をより広く設けています。

「たとえば金属異物チェックの担当を任すなど、品質管理の関連業務を段階的に手伝ってもらってきています。JFS-C規格のシステムの例で挙げると、毎年、仕組みを運用・維持していく中では、当然、帳票書式の見直しや記録の更新、検証などに応じて品質管理関連の業務ボリュームが増加してきており、彼女たちの担当も増やしています。

現在は品質管理業務のアシスタントとして、入退場の全体管理、始業就業点検、設備全般の点検、各種理化学機器関連の計測・測定、サニテーションの確認・記録、洗剤や衛生品の管理、さらに改善提案活動への積極的参加など幅広く担当してもらっています(★図表1)」(落石氏)

  培地や理化学などさまざまな検査を担当しています(品質管理で検査の場合、通常はマスク着用ですが撮影のため外しています)。

■図表1 外国籍従業員が担当する「入退場管理」表(左)と「設備点検項目」の一部 (クリックすると拡大)


実際に担当してもらう際に問題となるのが、やはり言葉とコミュニケーションの問題。ただ、最初は「おはようございます」程度で会話は厳しい状態ですが、数年経つと人にもよりますがだいぶ話せるようになるといいます。

「そのコミュニケーションで大活躍しているのがグーグルなどの翻訳ソフトです。たとえば英語で作った資料を読んでもらい、理解した内容を英語で説明してもらいます。その内容を日本語に翻訳して理解が合っているかを確認します。こうしたことを重ねながら仕事を覚えてもらいました」(落石氏)

業務関連のさまざまな文書類やコミュケーションを英語と日本語を併記する取り組みを進めたことで、結果として「見せる衛生管理」が極められているといいます。

「手順書の書式を統一したり、見やすいように工程をより細かく分けて説明したり、あるいは、二者監査の監査員からの実践的なアドバイスやアイデアも採り入れて載せています。また、手洗いマニュアル、薬品管理、一般衛生などの基本的な手順書は、毎年、細かな改訂を行っており、具体的により分かりやすい内容に改善を重ねてきました」(落石氏)

グローバリゼーション対応による効果
「衛生管理再確認」「システム定着」「改善提案」

古田氏 品質管理課 係長 木下七美様は「文書をしっかり整えてきたことで役割分担がうまくできた」と明かしてくれました。

これらの英語化を中心にしたグローバリゼーション対応によって、大きな効果が3つ生まれたといいます。

まず「見せる衛生管理」によって効果的な従業員教育が実施されており、これは外国籍従業員だけでなく社内全体で理解を深める機会、すなわち「衛生管理の基本の再確認」につながっています。

次に、文書体系については、現在、食品・QS(食品安全・品質)のマニュアルが200ページ、その下にナラザキフーズ食品安全マニュアルとして約2千ページ、約1,000文書という構成です。JFS-C規格の取り組み自体が、これだけのボリュームの関連文書類の整理と体系化につながり食品安全マネジメントシステムの仕組みがよりキッチリする、まさに「システムの定着化が一層進む」ようになっています。同時に、役割分担も明確になったことで、外国籍従業員に業務を任せていく流れの後押しにもなっているといいます。

JFS-C規格による改善提案で現場からアイデア
組織全体の活性化につながる

グローバリゼーション対応の3つ目のメリットとして、外国籍従業員が改善提案活動へ参画することで、日本人従業員も刺激を受けていることを挙げています。

「改善提案の仕組みは従来から導入していました。ただ工場ができてから時間が経っており、現場から新しいアイデアなどはあまり出てこない状況でした。そうした中で、JFS-C規格に取り組んだわけですが、要求事項として現場からの改善提案を活用する仕組みが求められており、あらためて『改善提案活動』に注目し活性化を試みました(★図表2)

まずは5S関連でアイデア出しなど改善提案を呼び掛けて、その後は期間限定の意見箱を設けるなどいろいろ工夫して啓発活動を行ってきました。その結果、多いときは月で60件、一人あたり平均すると2件程度集まるようになったのです。

いろいろ集まった改善提案の中身は、簡単に改善できることだけでなく、実現が難しいこともありますが、外国籍従業員のアイデアは日本人にはない発想なので興味深いです。実際の改善につながった実例として、『器具・設備部品の保管方法の改善(5S含む)』『掲示物の風景化の防止(日本語、英語)』などいろいろ出ています。こういった状況に日本人従業員も刺激をうけてアイデアを引き出すことにつながっています」(落石氏)

まさに、改善提案活動とJFS-C規格による仕組みが統合され一体化することで、活動の盛り上がりにつながり、「組織全体の活性化」が実現しているのです。

■図表2 「改善提案活動」の流れ(クリックすると拡大)
「募集ポスター」で広く告知、実際にアイデアを出すのは「募集アイデアシート」を使います。
出されたアイデアをもとに実際の改善を行った内容もまとめて社内で共有しています。

JFS-C規格で求められている改善提案活動というPDCAサイクルの仕組みになっています。



認証取得の「BEFORE」&「AFTER」
組織全体における情報発信・共有を充実化

JFS-C規格の前と後で変わったことをうかがうと、効果として挙げた「衛生管理再確認」「システム定着」「改善提案で組織活性化」に加え、「コミュニケーションの充実」もあるといいます。

「取得した後は、『ちゃんと伝わっているのか?』を何事でも強く意識するようになり、コミュニケーションをしっかり行うようになっています。たとえば何か問題が起きれば、その原因分析や再発防止策について、現場に周知することが欠かせないはずです。勉強会を持てば情報共有できるはずですが、なかなか実現せずに以前は朝礼で済ませていたケースもありました。あるいは共有すべき情報を掲示する際も、単に壁に貼るだけでなく、各従業員は確認後に丸印を付けるといった一工夫を加えています。

以前は従業員に対しての情報発信が弱かった面もありましたが、今は組織のすみずみに伝わるまでかなりフォローできており、従業員各々を含め全体レベルがかなり上がってきた実感があります」(落石氏)

JFS-C規格のメリット
二者監査の受審回数が大幅に減少

他に大きく変わったことは、二者監査の受審回数が減少したことを挙げてくれました。今回、JFS-C規格を認証取得したことで、大手企業さまなどの二者監査は、以前は年1回だったのが、数年に1回に減っています。また他の外資系流通や大手食品会社のお客さまにおいても、JMAQAによるJFS-C規格審査の書類のコピーを示すことで、二者監査を受ける場面が大幅に減っており、これもJFS-C規格のメリットの一つになっています。

今後のJFS-C規格の可能性
海外進出のパスポートとして最大限に有効活用

今後、食品安全において重視していくテーマとJFS-C規格の活用について、落石様と品質管理の現場をまとめる立場の木下様に、それぞれの立場からお聞きしました。

まず、社内対応として次にように紹介してくれました。
「メンバーに助けてもらいながらISO事務局を運営していますが、今後もいろいろ新しいことにチャレンジするには、次の推進者を育てていく必要があるでしょう。もちろん同時に、従業員全員が今以上にレベルアップするための仕掛けを充実させていく、これが喫緊の重点テーマです」(落石氏)

「JFS-C規格の食品安全マネジメントシステムを運用してきたことで、二者監査の簡素化につながっています。その反面、社内全般における食品安全に関連する管理業務が増えてきており、現場の負担がこれ以上増加しないように、効率化も進めていくつもりです」(木下氏)

続けて、今後の海外ビジネス展開において認証自体を活用するといいます。続けて、今後の海外ビジネス展開において認証自体を活用するといいます。
「現在、台湾との取引が始まったところで、今後はシンガポールや香港、中国本土への進出計画があります。実際の輸出にあたっては、輸出先の国によっていろいろと要求はありますが、GFSI承認のJFS-C規格の登録証のコピーや、今あるマニュアルや記録表を出すだけで輸出許可まで可能になった実例もあります。今後の海外展開で、JFS-C規格が大いに役立つはずであり有効活用していきます」(落石氏)

最後に、JMAQA AWARDS 2023受賞の感想をうかがうと、「改善提案活動に取り組むようになって、いろいろ出てきたアイデアに対して自ら動いてくれる従業員も増えてきています。こうした雰囲気になっているのも、受賞のおかげだと思います」(木下氏)

「今回の受賞は、社長が一番喜んでおります。ノミネート段階から報告していましたので『絶対受賞せよ』と言われていました。それだけに受賞はうれしかったようです。外国籍従業員には、先日の受賞講演会の写真を示して『皆さんのおかげで受賞でき、ありがとうございました。これからも頑張りましょう』と感謝を伝えることで、さらなる盛り上がりにつなげていきます」(落石氏)

 森池本部長様(右)は「今回の受賞を組織のさらなる活性化につなげていく」と語っています。

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