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JMAQA  EVENT

特別講演会――JMAQA登録組織対象
出田 宏 氏(FSSC財団 日本代理人)登壇
FSSC 認証スキームの最新状況を解説

日本能率協会審査登録センター(JMAQA)は、2024年9月19日(木)、
「ホテル・レストラン・ショー&FOODEX JAPAN in 関西2024」と同じタイミングで、
FSSC財団 (Foundation FSSC) 日本代理人出田宏氏を講師に招いて、講演会を開催しました。

本講演会はJMAQAの登録企業・組織様の参加を対象と したもので、FSSC22000認証スキームの概要から、
Version6審査の最新状況、そしてFSSC24000 (社会的責任のマネジメントシステム)の紹介が行われました。
当日の講演会場では、出田氏が紹介するFSSC22000を巡る貴重な情報に、ご参加いただいた方々が興味深く聞き入る様子がうかがわれました。

FSSC財団 ― 選ばれるFSSC22000認証スキームを目指す

FSSC財団は、FSSC22000スキームと社会的責任マネジメントシステムであるFSSC24000スキームのオーナーであり、独立した非営利の組織です。組織としての活動・存在の目的としては、FSSC22000認証を単に広めるだけでなく、影響力をもってスキーム全体の社会的な信頼を高めることを目指しています。
また、現在、グローバルでは、企業・組織に対しSDGs含めて社会的責任を求める動きが一層高まっており、FSSC財団も認証取得した企業・組織様とともに、より良い世界を創造する活動も重視しています。

具体的な活動としては、ISOベースの効果的な食品安全マネジメントシステムについて広く普及することがありますが、同時に、認証を取得している企業・組織を中心としたブランドの価値の向上も重視しています。
この価値の向上に関しては、認定機関、認証機関と協力体制をとって、信頼性を高めるスキーム運営を目指しています。そのために「FSSCブランデッド・ハウス」で示したような構成でリーディングブランドとして社会に向けて広く信頼を届け、影響力を発揮しています。

 ■図表1:「FSSCブランデッド・ハウス」で認証スキームのブランドアップを実現しています。
 (クリックすると拡大)


FSSCスキームが支持される理由 ―「FSSCインテグリティ・プログラム」で信頼性を向上

食品安全マネジメント認証制度を巡ってはGFSIの承認スキームがいくつも存在しますが、FSSC22000スキームはグローバルで展開する食品サプライチェーンから広く支持を集めており、認証件数は順調に伸びています。その大きな理由のひとつとして、FSSC財団は他の認証スキームオーナーとは異なり、独立したガバナンス構造を持つ非営利団体という点が挙げられるでしょう。

FSSC財団は、この立場を利用して、認証スキームの制度としての信頼性を維持、向上させるために、「FSSCインテグリティ・プログラム」を導入、実施しています。本プログラムは、FSSC22000の登録証を発行する認証機関の活動状況をモニタリングするものです。

また、FSSC財団は、国連の持続可能な開発目(SDGs)に積極的に貢献することを目指して、グローバルでさまざまな取り組みを行っています。たとえばSDGsの「12.つくる責任、つかう責任」という観点から食品ロスや食品廃棄物に関する取り組みの社会的な広がりを推し進める活動を展開しており、Version6では関連する内容を追加要求事項として加えています。

さらに、今後の取り組みテーマになりますが、情報に基づいた素早い意思決定を可能にするパブリック・レジスターやデジタル・ソリューションのさらなる活用を検討しています。その一つとしてFSSC22000の全世界3万件以上の認証データについて、匿名性を保たせて蓄積してデータベース化することで、不適合の傾向などを分析、組織・企業の取り組みレベルや審査自体の質の向上につながる情報を提供、こうしたことも検討しています。

FSSC 24000登場 ― 「社会的責任」に対する信頼と影響力を実現

FSSC 24000 は、持続可能な社会管理システムの導入と運用を支援するために開発された、SSCI(持続的なサプライチェーンイニシアチブ)承認の認証スキームで、現在Version1です。FSSC財団はこの規格を使った認証制度のスキームオーナーになっています。

この認証スキームは IAF MLA(相互承認取決め:認定された認証機関が発行する認証書が国際間取引においても有効なものとして流通し、不要な二重検査を排する仕組み)のサブスコープレベルで承認されており、世界中でモノを輸出入する際に対応が求められる各国・エリア独自の各種法規制についてとりまとめた国際貿易センターのスタンダードマップ(URL:https://www.intracen.org/resources/tools/standards-map)にも登録されています。

また、FSSC22000と同様に、堅牢なインテグリティ・プログラムが用意されており、SDGs実行への支援テーマとして、「10.人や国の不平等をなくす」を推し進める活動を重視する規格構成になっています。

FSSCの特長・メリット ― ISO22000で組織のベスト・プラクティス採用を実現

古田氏       ■図表2・3:ISO22000活用のメリット&FSSC
   スキームのメリット(クリックすると拡大)

あらためてになりますが、FSSC22000の特長を紹介すると、まず堅牢で効果的な食品安全マネジメントシステムの枠組みであり、ISO22000規格を利用している点が挙げられます。ISO9001、14001、45001などのISOマネジメントシステム規格と同様に 「調和させる構造」 になっており、 統合マネジメントシステムの促進が期待できるのです。

ISO22000規格を利用していることは、大きなメリットにもなっています。とくに強調しておきたいのは、他のGFSI承認スキームと比べて、FSSC22000の方がより柔軟に対応できる点です。

食品安全のハザード管理で企業・組織に求める仕組みや活動に関して、他スキームではチェックリスト中心で事細かに書かれており、HOW TOまで含めてやるべきことが最初から決められています。こうなると、ともかく取り組むことが優先されかねないでしょう。

一方、ISO22000の要求事項は、組織自身でやり方を決めて取り組むことを求めています。こうした内容なので、自分たちに合った取り組みにできますし、また、たとえば審査員とディスカッションを行うなど、改善を重ねていってベスト・プラクティクスを選び取ることができるのです。

FSSC22000のメリットについて他にも挙げると、「登録された認証組織が公開」されており、潜在的な顧客の獲得にもつながることもあるでしょう。また、要求事項の内容についてはユーザーのニーズに広く合うようにアップデートしてきています。

たとえば、消費財業界や小売業業界、行政・規制機関を含む、主要な国際団体と協力して、追加要求事項を加えることもありますし、ある国の法規制が変わったので新Versionを出すことで対応するといったこともあります。グローバルの動きに機敏性に富んだスキーム運用を図ってきているのです。

堅牢な「インテグリティ・プログラム」を導入 ― 信頼性の高い監査と認証の一貫性に貢献

このような特長をもったスキームについて、監査と認証について一貫性をもった高い信頼性が実現している背景として、先ほど紹介した堅牢な「インテグリティ・プログラム」の導入が挙げられます。このプログラムでは、スキーム要求事項への適合を確認するために、認証機関として活動している機関に対して、継続的にモニタリングを実施しています。

たとえば、実施された審査で不適合が一切出ていなくてゼロ件である-こうした審査の割合、登録組織に関する認証範囲の書き方が適切かどうか、等々、審査や認証の内容を確認するモニタリングを実施しています。

FSSCの独立した非営利財団という立場とあわせて、インテグリティ・プログラムを実施していることで、グローバルのサプライチェーン・オーナーなどから、登録証やその認証プロセスに対する信頼の獲得につながっており、第二者監査における要求、件数や日数、確認項目などを具体的に減らすことにつながっているのです。

 ■図表4:「インテグリティ・プログラム」で実施している各種プログラム。
 (クリックすると拡大)


日本におけるFSSC認証 ― 3,324件 世界ナンバー2

古田氏       ■図表5:日本におけるFSSC22000
         (クリックすると拡大)

日本におけるFSSC22000の認証件数の最新状況は、本年第二四半期の時点で3,324件、世界2位となっています。登録証発行が可能な認証カテゴリーについては国内ですべてカバーしていますが、その割合として大きい順に、C4(常温で保存可能な製品の加工)が44%、次のC3(動物性と植物性双方の混合製品において腐敗しやすい部類の加工)16%、C1(腐敗リスクが高い動物性製品加工)が13%となっています。

Version6改定の背景 ― SDGsを後押しする追加要求事項を加える

現在、FSSC22000の最新版はVersion6ですが、改定が実施された理由・背景を紹介します。まず、食品安全マネジメントシステムの審査および認証を行う機関に対する要求事項であるISO22003改定への対応です。次に、先ほども紹介していますが、国連グローバル・コンパクトのメンバーとしてSDGsの後押しが挙げられ、企業・組織の活動を支援するために追加要求事項をVersion6で新た盛り込んでいます。さらに、FSSC22000認証スキームの継続的改善の一環として、ユーザーのアンケート情報なども参考にして、規格の編集上の変更と修正を行っています。

V6によるメリット ― SDGsの達成/二者監査軽減/認証の信頼性アップ

ここでは、Version6による企業・組織側でのメリットを紹介します。まず、食品ロスと廃棄物に関する追加要求事項によって、企業・組織内の部署間の壁を取り払うアプローチが可能となって、SDGs「12.つくる責任、つかう責任」の達成が実現できます。

次に、第二者監査におけるポイントの一つが品質管理ですが、Version6では品質管理のパラメータと食品安全及び品質文化を組み込んだことで、品質側面を含めた顧客要求事項への適合をより高いレベルで実証することになります。その結果、第二者監査について審査項目や工数などの軽減が期待できます。

他にも、認証書にFSSC独自のQRコードを組み込んでおり 認証の信頼性を高めることで輸出時における差別化、カテゴリー FIIの追加による食品の物理的な取扱いがない仲介/取引組織への適用範囲の拡大、FSSC22000スキーム文書にさらなる詳細情報追加による的確なFSSC適用の理解の促進、といったことが挙げられます。


SDGsの推進 ― グローバル基準で「食品廃棄物」を定義 50%削減を後押し

SDGsという観点では、Version6では食品ロスと食品廃棄物に関して要求事項を追加したことで、企業・組織の取り組みにおいて、部署間の壁を取り払ったアプローチが可能になっています。追加要求事項の具体的な中身としては、SDGsターゲット 12.3「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。」(注:下線は講演者)に関する取り組みを後押しする内容として、V6 Appendix 1として以下を加えています。

◎食品ロスと廃棄物 FSSC22000 V6 Appendix 1: 定義
(FAO[国際連合食糧農業機関]の定義に基づく)
食品ロスは、サプライチェーン (生産、加工、 保管および流通の段階) の問題の結果として、 食品が消費者に届く前に発生する。
食品廃棄物は、 消費に適っているが、 小売または消費レベルで意識して 廃棄された食品を指す。

ここではAppendix 1に関連して、よく質問が寄せられる「食品ロス」と「食品廃棄物」の違いをご紹介します。
「食品ロス」について日本では、生産、製造から、配送、販売、消費までのすべての段階で廃棄されるもの、というのが一般的な認識です。一方、FAOでは、流通に移る前段階で廃棄される分を「食品ロス」、以降は「食品廃棄物」とそれぞれみなしています。

「食品ロス」と「食品廃棄物」について、このFAO定義に沿ったV6 Appendix 1の内容に基づいて、SDGsターゲット 12.3の内容の取り組みを進めていただければと思います。

 ■図表6:日本とグローバルによる「食品ロス」「食品廃棄物」の定義の違い。
 (クリックすると拡大)


FSSCからの情報発信 ― ガイダンス文書・各種ウェビナー・スキーム解釈文書

FSSC財団では、FSSC22000認証スキームの効果的な運用にむけて、認証取得済/これから認証取得を目指す企業・組織を対象にした情報提供を財団のWEBサイト(URL:https://www.fssc.com/)を通して行っています。

◎ガイダンス文書
ガイダンス文書とは要求事項ではなく、規格の理解を助けるための任意の文書です。以下の文書を公開しており、日本語版を用意したものもあるので、ぜひともご覧ください。
 ✓環境モニタリング
 ✓設備管理
 ✓食品防御
 ✓食品偽装の提言
 ✓食品ロス及び廃棄物
 ✓食品の安全と品質の文化
 ✓輸送タンクの洗浄

◎ウェビナー
FSSC財団のWEBサイトでは、英語になりますが「食品ロス及び廃棄物」「設備管理」などのウェビナーを定期的に開催しています。過去開催分についても、動画の視聴、資料の入手が可能なのでこちらもご利用ください。

◎スキーム解釈文書
FSSC財団では、適用必須の文書(FSSC22000スキーム文書で規定)として、スキーム解釈文書を提供しています。審査は世界中で実施しており、Version6について分かりにくく解釈が必要な箇所などについて、文章で具体的に解説した内容を文書としてまとめて提供しています。

こうした内容についてFSSC財団側では、認証機関とテクニカルニュースレターを通じてコミュニケーションをとっており、認証企業・組織にとって必要となる関連トピックについては、認証機関から各企業・組織に対してコミュニケーショを行う仕組みになっています。
具体的には、認証組織への要求事項に関連する 「品質管理」、 「食品安全に不可欠なパラメータの試験所分析」 が、FSSC財団のWEBサイトで公開されています。(現時点では、英語のみ)

V6審査の最新情報 ― 6千件を超える不適合が発生

Version6 のアップグレード審査の進捗状況については、6月末時点でグローバルで7,461件、日本では900件が完了しています。不適合については、完了した1,437件のアップグレード審査におけるデータになりますが、 6,190件の不適合が出されています。
 ✓危機的な不適合: 1件
 ✓重大な不適合:150件
 ✓軽微な不適合:6,039件

不適合TOP3 ― 品質管理/物理的汚染/食品の安全と品質の文化

古田氏       ■図表7:Version6審査での不適合TOP15
         (クリックすると拡大)

Version6審査における不適合理由TOP15をまとめた図表を紹介します。ここでの太字項目はVersion6によって要求事項になった項目で、これらについてFSSC財団としても解釈文書やガイダンス文書を通じて、詳しい解説を行うことを検討しています。

規格改定予定 ― ISO22000は2027年改定予定で進行中

FSSC22000に関する規格改定情報を紹介すると、ISO関連では、ISO/TS22002-X シリーズが現在、DIS (Draft IS) レビュー中 (WG11)の段階で、もうすぐISO/TSとして発行される可能性があります。ISO22000の改定については、新規業務項目(AWI)登録(WG8)段階にあり、改定版の発行は2027年を予定しているとの情報です。

一方、GFSIでは、2024年年末までにベンチマーク要求事項が更新される予定で、それにあわせて バージョンアップの可能性がありますが、現時点では移行期間は未定です。

FSSC 24000 ― 数年後に認証要求の可能性 今から要注目

最後にPAS 24000についても紹介しておきます。企業の社会的責任への遵守についてグローバルでさまざまな動きが出てきています。こうした動きをうけてBSIが開発した社会的責任に関するマネジメントシステム規格・PAS 24000:2022が登場しました。最初に紹介したFSSC24000はPAS24000をベースとしています。

このPAS 24000は、企業・組織が社会的責任の目標を達成するために必要なすべてのタスクを確実に実行できるようにするために使用する、ポリシー、プロセス、 手順についての枠組みで構成されています。その中身は、社会的責任のパフォーマンスの基本レベルの最小限の要求事項で、たとえば「労働者が公正に扱われる」「安全な労働環境が提供される」ことについて採り上げています。他にも労使関係や人權、安全衛生、労働倫理とビジネス倫理など、社会的責任ついて幅広く含んでいます。

現在、PAS 24000 をISO規格にする動きが出ています。 今後、グローバル・サプライチェーンでの注目がより強くなり、数年後には、この規格の対応状況が問われる、認証制度になっている、こうした状況になる可能性がありそうです。FSSC財団のWebサイトから無料でダウンロード(現時点では英語のみ)できるので、今から着目しておくことをお勧めします。



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