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CASE.1

【連載:効果的な運用事例 ヌースフィット 様 [ISO22716(化粧品GMP)]】
伊藤 新二 JMAQAセンター長が聞く
ISO22716認証 第1号(JMAQA):株式会社ヌースフィット

変革将来を見据えた認証取得が
変革・イノベーションを呼び起こす

             対談取材 : 株式会社 ヌースフィット        代表取締役    亀ケ森 統 様
                                 開発部   見坊 啓子 様

                   一般社団法人 日本能率協会 審査登録センター(JMAQA) 
                                 センター長  伊藤 新二 

株式会社ヌースフィット様は、2000年4月に東京都豊島区で設立され、理容室・美容室向けや一般向け化粧品・医薬部外品の処方設計・製造・販売、毛髪科学の講習などを行っています。中でも毛髪科学の基礎研究には創業時から取り組んでおり、画期的な商品を次々と生み出しています。
ISO認証については、2017年にISO9001を取得、2020年には新たに笹目工場を設立し、その際、ISO22716(化粧品GMP)に対応した仕組みを導入し、取得しています。ISO22716については、日本能率協会審査登録センター(JMAQA)における認証第1号です。
今回、ヌースフィットの代表取締役・亀ケ森統様、開発部主任研究員・見坊啓子様に、日本能率協会審査登録センター センター長・伊藤新二が話をうかがいました。

1. 海外取引の条件でISO22716(化粧品GMP)認証が求められる

伊藤: ISO22716(化粧品GMP)に取り組んだ経緯について教えてください。


亀ケ森 様(右写真)「今から30年程前、アメリカの大手清涼飲料メーカーの品質管理について話を聞く機会があり、「ここまでやっているのか!!」と驚いた記憶がありました。その後、創業したヌースフィットは、規模は小さいですが、同じように品質管理を徹底して高品質な商品を生み出す会社にしたいと思ってきたのです。

また、10年前には中東の会社から私どもの化粧品を取り扱いたいとの話があり、取引条件として、ISO22716(化粧品GMP)認証が求められました。当時、我々は誤った認識を持っており、日本で化粧品製造業の許可を持っていることはGMPも満たしていると思っていたのですが、受け入れてもらえず、結局、話は立ち消えになってしまったのです。

こうした経緯があり、海外展開を目指すなら、国際規格であるISO22716(化粧品GMP)が重要視されるようになると考え、取り組むことにしたのです。ただいきなりではなく、段階的に進めることにして、まずISO9001の取得から始めました。認証取得は2017年で、ISO9001の品質マネジメントシステム(QMS)には組織マネジメントに関する包括的な内容が含まれているため、ISO22716(化粧品GMP)取得の前提となる基礎として大変参考になりました。



伊藤: 自分達のねらいを実現することに役立ってきているのですか。


亀ケ森 様ヌースフィットの企業目的は、「社会に望まれる人・企業・商売(サービス)」です。「お客様に『こんな会社に作ってもらいたい』と思ってもらえるような会社になる」という目標に向かってやってきました。ISO9001の要求事項に則った品質管理のもとで事業を進めることが、企業目的・目標の実現につながっていくと考えています。


伊藤続いてISO22716(化粧品GMP)に取り組みましたが、感想をお願いします。


亀ケ森 様ISO9001の時と同じように、「自分たちにできるのだろうか?」という声が社内から聞こえてきました。ISO9001でも、まだまだ文書と実務が皆の中で密接に呼応している状態にはなっていなかったのです。

そこで、見坊を中心に、まず基本を学ぶことから取り掛かり、続いて現場にあてはめて考えてみるようにしました。その結果、自分たちがやっていることについていろいろな問題点が明らかになってきたのです。するとISO22716(化粧品GMP)に対する捉え方も少しずつ変わってきたようです。特に、途中から新工場を建てるプロジェクトが始まったことが、「これまでと同じようにはいかない!」との危機意識につながり、刺激になったと思います。

2. 毎日、朝昼2回の30分間の勉強会で土壌作り

伊藤:新工場について、建設と並行してISO22716(化粧品GMP)の導入対応を進めたのは大変という印象があります。例えば工程管理や生産管理がきちんとできている前提で新工場の設計などを行ったのでしょうか。


亀ケ森 様:はい、工場を決めていく際、ISO22716対応を前提に進めました。その際、しっかり勉強をしながらやったのでうまくいったと思います。建屋自体は2020年11月末に完成し、翌年3月から稼働しています。ISO22716(化粧品GMP)については、2020年1月に参考書などを使った自主的な勉強会をはじめました。当初は不定期開催で効率がよくなかったので、6月からは、連日、朝と昼に30分間ずつ持ち回りのリーダーがキーポイントを説明するという形式で、全員参加で行なっていきました。これを3か月間続けました。その後に、月に一度コンサルタントによる講義を受けましたが、基礎知識があったのでスムーズにいったと思います。


伊藤:毎日、2回、全員参加の開催は素晴らしいですね。導入がうまくいったのは、従業員の皆様に単なる押し付けるのではなく、まずは理解させるという展開も良かったかと思います。


亀ケ森 様理解というのは大切です。社内を見ていて感じたのは、理解することでいろいろ変わってきたことです。例えばレビューとは何か、そもそも品質とはどういうものか、あるいは適切性、妥当性、有効性などは軽視できない大切なことなのだ、等々、いろいろ理解することで、身に付いていったようです。


伊藤:組織の土壌作りになっていると思います。「理解することで身に付く」は、ISO導入のよい面であり、ISO9001の要求事項「7.3 認識」があてはまります。この要求事項は、自らの行動が組織の目標の達成にどのように貢献するかを理解することを求めています。この理解によって、ルールもきちんと自分たちに身に付く状態につながってきています。こうなれば、自分たちはこうしたい、もっと便利に作れるようにしたい、良いものを作れるようにしたいなどと、改善への思いが出てくることが期待できるはずです。上からやれという指示がくるからやるのではく、自発的に取り組んでいく状態になるのです。


亀ケ森 様今の話で「改善」といわれましたが、工場を立ち上げるにあたって、従業員から学習内容に基づいた改善の話がでてくるようになりました。もちろんいきなりではありません。勉強会をはじめた当初は規格の理解に重点が置かれていました。その後、自社にあてはめた場合、それまでのやり方にはどんな問題点があるのかが見えてくると、改善提案がでるようになってきました。

マインズ様

3. インプット/アウトプットをつなぐ「階段」の設定でモノゴトを多面的に見る

伊藤:この変化の背景にはどんなことがあったのですか。


亀ケ森 様:ISOマネジメントシステムのインプット/アウトプットの考え方がよかったようです。ヌースフィットにおけるインプットは現状の問題点や、持っている知識・知恵・資源などで、アウトプットは実現すべきことです。アウトプットの一つはゴール、すなわち商品やその品質であり、そこに至るプロセスを「階段」に例えています。インプットからアウトプットに向けてのこの階段について、段数や高さをどうするか考えてみるのです。これはモノゴトを多面的に見ることにもつながっており、問題点の把握に役立っているようです。今後、すべての仕事に応用したいと考えています。


伊藤:階段の話は分かりやすいですね。さまざまな部門で浸透して全員が身に付けて、その結果、組織の発展につながっていく、こんな展開が期待できるはずです。

関連しますが、JMAQAでは、「経営革新につながる審査」をミッションとしています。ヌースフィット様もISO22716(化粧品GMP)を導入したことで、階段の話などで示された通り、すでに革新、イノベーションが起きていると思います。

4. 経営革新 ―― 従業員の意識に大きな変化が生まれる

古田氏

亀ケ森 様小さな改善を積み重ねていくことで、大きな改革ができるようになればうれしいのですが。毎朝開く業務改善ミーティングでは、リーダーが日替わりでそれぞれテーマを選び、例えば5Sから1テーマ取り上げて紹介しています。ISO22716(化粧品GMP)に取り組んだ後、自分たちの仕事と絡めて話をするなど、より実務と関連付けた見方をするようになっています。


見坊 様(左写真):業務改善ミーティングでは前日に起きた逸脱・観察事項の報告があります。例えば「〇×が起きましたが、これは逸脱ではなく観察事項なので、対応方法を考えてみます」などと意見がでてきています。今までは、そもそも逸脱の類は良くないことなので黙っていようという雰囲気がありました。それが、ちょっとしたことでも報告して情報共有し、その上で改善提案などが出てくるようになっています。


伊藤:提案が上がってくるようになったことは、革新であり、まさにイノベーションです。


亀ケ森 様:イノベーションなどと言うにはほど遠いですが、問題が起きた時、モノゴトを根本から分析して必要な対策を考えるようになっています。製造工程において、商品の粘度が基準値を超えてしまい、時間をとって寝かしておくとクリアするので特別採用といったケースがありました。ロスを抑えることからすると、この対応でもいいわけです。一方、寝かしている間は無駄な時間であり、その後の確認作業など追加されることが余分とも言えるでしょう。

そこで、そもそもなぜ基準値をクリアしない事例が発生するのか、工程の上流を確認していき、たとえば調合工程に何か原因があるなら、見直しして必要な改善策をとる。まだ完璧ではありませんが、こうした対応がとられつつあります。


伊藤:モノゴトの捉え方が変わることで、改善の可能性を考えることにつながっています。今までの話から、取り組み自体が従業員一人ひとりの技量につながっているのが分かりました。その技量に関連してうかがいたいことがあります。
会社は売り上げと品質など、様々なことを同時に追い求めて行かなければならないと思いますが、自社の限られた資源をどのように割り振って使うのか、マネジメントの立場から、このバランスをどうお考えでしょうか。

5. 求められる技量が明確になり「トレーニングの黒帯」を目指す取り組みが活発に!

古田氏

見坊 様:資源が足りないと考えだすと、足りないことだらけになってしまいます。現実に置かれた状況の中でどうやりくりしていくかが重要です。とりわけ中小企業は複数の仕事を担当することが多いと思いますが、個人に頼るだけでなく組織としていかに対応できるかが重要になってきます。
ヌースフィットの組織対応の例として、産休明けで時短勤務の従業員がいて、担当業務について所属部門内ですべてをカバーするのが難しいケースがありました。結果的には、他部門の人間に分担してもらうことができました。今回、部門を越えて資源不足、技量不足をカバーできたのは、ISOの取り組みを通して、業務内容や担当が明確になって必要なスキルがはっきりしたことと、他部門を含めた業務の全体像が皆の間で共有されたことが大きいです。


伊藤(左写真):今の話でもご紹介いただきましたが、ISO22716(化粧品GMP)への取り組みや認証取得したことによる成果を教えてください。


見坊 様:ISO22716(化粧品GMP)への取り組みは、日頃の業務を改めて振り返り、自分たちがどうしていくべきかを考える、良い機会になったと思います。
新しい笹目工場では、新人パートタイマーが加わり、いろいろな決まりごとを作っていく中で、教育・訓練が重要になってきています。そのやり方について、社長から「ただ単に一回と教えて終わりではない」と言われており、教える方も含めて、社内全体で常に教育・訓練に励む雰囲気になっています。


亀ケ森 様:既存の工場は狭くてラインと呼べるようなものがなく、次工程へ手渡しできるような状態で、何か問題が起きても臨機応変な対応が可能でした。新工場ではベルトコンベアでラインが設置されたので、何かちょっとしたことでも流れが滞るとすべてがストップしてしまいます。問題が起きた時、原因を調べてみると、大半は訓練不足に行き当ります。
そこで、「トレーニングの黒帯になる!!」をテーマに掲げて、自分の業務に習熟してもらえるよう、会社を挙げていろいろ取り組んでいます。

6. “PD”に“CA”が加わりサイクルが回りだす

伊藤:これも発生する原因を調べて、改善につなげている実例ですね。

亀ケ森 様:いろいろな問題や改善してきた例を挙げましたが、PDCAサイクルが不完全だったことが関係していると考えています。P(Plan)、D(Do)、C(Check)、A(Act)の流れを知ってはいても、実際にはPとDしかやっていない、計画と実行しかなく、確認と改善がなかったのです。
それが、手順は決まっていてうまくいかなかった時に、「どうしたらいい?」と聞くと、「こうしてみては?」「さらにこうしたほうがいいのでは?」などと変わってきています。パートタイマーの方々を含めて、CとAが加わった本来のサイクルが少しずつ回るようになってきています。

 

7. ISO22716(化粧品GMP)の認証取得により、改善が加速、生産能力が倍増

見坊 様:メリットということでは、大きな成果が出てきています。その最たるものが、生産量が倍増したことです。新工場では、ある製品が、当初1日に3,000個が精一杯でした。これが工夫や改善を重ねた結果、なんと半日でできるようになっています。今は、夕方までに倍の6,000個を仕上げて、さらに翌日の準備までやって退社することを目指しています。

伊藤:売上計画にも大きな影響があるくらい、素晴らしい結果が出てきていますね。先ほどの話にもあったパートタイマーの方々からも意見が出てくるのは、やりがいにもつながり、いろいろな相乗効果が期待できると思います。ここで働いているすべての方々が「自分たちは良い仕事している」と思えることは、ヌースフィット様の評判がよくなることにもつながるはずです。
今回、いろいろなお話をうかがい、ISO9001やISO22716(化粧品GMP)が、変革、イノベーションの原動力になっていることが分かり、審査機関としても非常に嬉しく思っています。本日は貴重なお話、ありがとうございました。



 

マインズ様
登録証を囲んで、左から、開発部 見坊啓子様、代表取締役 亀ケ森統様、JMAQAセンター長 伊藤新二。

 ISO22716(化粧品GMP)認証事例・審査員による解説記事

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 *ISO22716(化粧品GMP)認証はいずれの審査機関においても認定機関による認定は伴わないプライベート認証になります。


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