ISO22716(化粧品GMP)
JMAQAでは、「ISO22716(化粧品GMP)」の認証サービスを実施しています。
本規格にご興味のある組織の皆様は、CS・マーケティング部までお問合せください。
Special interview
「ISO22716(化粧品GMP)」に関するあらゆる疑問について
JMAQA専任審査員が詳しくお答えします
取材先:日本能率協会審査登録センター(JMAQA)
専任審査員・主任講師 枝 尚
「ISO22716(化粧品GMP)」は、化粧品の製造に関する品質・安全性に関する国際規格です。製造メーカー(化粧品業界の場合、製造販売業者も含む)に求められる製造管理・品質管理基準に関する「適正製造規範」に該当します。化粧品を製造するにあたって、原材料調達・検品、調合、製造、包装、出荷検査、出荷管理、回収対応などの一連のプロセスに関しての管理基準として認知されています。
日本においては、2007年に発行されたISO22716:2007が、日本化粧品工業連合会(粧工連)によって2008年、「適正製造規範」の自主基準として採用され、業界スタンダードの一つとして広く認知されてきた経緯があります。特に近年、化粧品や医薬部外品の出荷数、輸出数が増加しており、それに伴い市場回収も増えていることから、ISO22716の存在感が高まってきています。
今回、日本能率協会審査登録センター(JMAQA)専任審査員・主任講師である枝尚氏に解説してもらいます。
(インタビュー質問項目 : 各質問をクリックすると解説箇所に移ります)
1:化粧品業界の現況と課題
Q3:市場回収による影響と対策について教えて下さい。
2:化粧品GMPの背景
Q5:「製造販売業者」と「製造業者」の両者の間で取り決めるべきことは何でしょうか?
Q6:GMPおよびISO 22716の概要について教えて下さい。
Q7:ガイドラインであるISO22716の認証を取得するメリットについて教えてください。
3:ISO22716:2007のポイント
Q8:ISO22716はISO 9001とどう違うのでしょうか?
Q9:ISO22716に則った化粧品GMPの概要について教えて下さい。
Q11:化粧品GMPには、どのような要求事項があるのでしょうか?
Q12:GMPレベルの向上には、どのような手順が必要でしょうか?
1. 化粧品業界の現況と課題
Q1:化粧品業界の状況について教えて下さい。
2018年の化粧品の国内工場出荷金額は、前年比5.2%増加の1兆6942億円と、2010年以降急激に伸び続けています。これは、インバウンドとアウトバウンドの両方の需要が増加していることが要因と考えられます。輸出入金額で見ると、やはり輸出金額が輸入金額を上回り、2010年から右肩上がりで伸びていることがわかります。輸出先は、主に中国、香港、韓国、シンガポールなど、ASEAN等で伸びています。輸入も含めてグローバル化していることが、化粧品の業界の背景といえます。
国内の化粧品の製造販売業、および製造業の業態数の推移についても、平成17年の薬事法改正で新たに製造販売業という定義ができた際は一旦落ちた感じがありましたが、全体的な傾向としては順調に伸びてきています。逆な見方をすれば競争が激化しているともいえます。
Q2:化粧品に関する市場回収の状況について教えて下さい。
化粧品は進化しており、市場にたくさんの商品が出回ることで、いろいろなトラブルやクレーム等が発生しています。2019年の市場回収に関するデータでは、最も重篤な健康被害をもたらすクラスIは医薬品が該当し、クラスIIとクラスIIIには化粧品、あるいは医薬部外品があてはまりますが、このクラスでも回収品が発生しています。数の大小はあるものの、毎年市場回収が発生している状況です。
回収の原因を内容で分類すると、化粧品と医薬部外品ともに一番多いのはグリーンの「製品不良」です。化粧品では43%、医薬部外品では53%と、いずれも半数前後を占めています。製品不良には、製造手順のミスや品質規格外、経時劣化、微生物や異物による汚染、異種混合などがあり、製造由来のトラブルが大半を占めます。
Q3:市場回収による影響と対策について教えて下さい。
製品の回収を行うと、製品そのものの信頼性が低下するだけでなく、無駄な費用が発生します。これが積み重なっていくと、ブランドを含めた全体的な競争力が落ちてきて、売上・利益が減少、最終的には経営を圧迫します。回収をいかに少なくするかは、企業として非常に大事なことです。
回収を発生させないために化粧品会社が取り組むべきことは、「製造販売業者」の場合は「コンプライアンス体制の強化」です。また、省令で定められている「GQP(Good Quality Practice:品質管理基準)・GVP(Good Vigilance Practice:安全管理基準)の強化」、そして「製造業者の管理強化」も重要テーマとして挙げられます。
「製造業者」の場合は、製造販売業者からの指示に基づいて製造を行いますので、品質を維持する仕組みが必要になってきます。その意味では、GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)管理が重要になります。具体的には、「GMPハードの改善」「GMPソフトの強化」「製造販売業者への適切な情報提供」が挙げられます。これらを実現するためには、製造販売業者と密に連絡を取って、強力な関係を結んでいくことも大事です。
2. 化粧品GMPの背景
Q4:化粧品業界の会社に関わる法規制について教えて下さい。
化粧品に関連する法規制等を以下の図に並べてみました。これ以外にもあると思いますが、まず忘れてはならないのが旧薬事法である薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律:医薬品医療機器等法)です。薬機法では、「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(GMP)」があります。今回紹介しているISO22716とは直接関係ありませんが、化粧品の上位の医薬品GMPから降りてきたものなので、化粧品分野にも当然関係してきます。
次の「薬局等構造設備規則」については省令で決められており、GMPのハードの面で関係します。また「その他、薬事法に基づく厚生労働省省令及び通知事項(GQP省令、GVP省令含む)」は製造販売業が関わる法令ですが、製造業も製造販売業者との関わりの中で無視できない法律になります。
他にも消防法や公正競争規約、製造物責任法、容器包装などがありますが、最後にISO22716「化粧品GMPガイドライン」を挙げています。これは法規制というよりも、自主規制という位置づけですが、薬機法等も含めて関連する法律があります。
Q5:「製造販売業者」と「製造業者」の両者の間で取り決めるべきことは何でしょうか?
回収などの事態にならないよう品質を維持するには、化粧品を作るにあたって「製造販売業者」と「製造業者」の連携も重要になってきます。製造販売業者は製造販売責任を負いますので、省令で定めるGQP、GVPに基づいて事業を行う必要があります。一方、製造業者は製造販売業者からの委受託関係にありますが、委託を受けて自社の工場で製品を作り、これを製造販売業者へ卸す、供給していくことが役割になります。製造販売業者は供給を受けた製品について合否判定を行い、市場に出荷していきます。これは非常に大事な関係です。
薬機法では、化粧品業界に対して取り決めは不要としています。しかし、医薬品等に準じた形で、お互いの業務を明確にした上で取り決め(契約)をすべきと行政指導では言われています。製造業者に求められることは、まず構造設備に関する「GMPハード」があります。これには次のものが挙げられます。
・製品を製造するのに必要な設備、器具、機器
・構造設備規則に適合した作業所、作業室
・原料、資材、製品を衛生的かつ安全に保管するための設備
・製品、資材等の試験検査に必要な設備
また、手順などの「GMPソフト」もあります。これには次のものが挙げられます。
・製品ごとの標準仕様書(製品標準書)
・製造管理手順
・品質管理手順
・衛生管理手順
・出荷、逸脱・変更管理手順等
・その他、必要な標準作業手順書(SOP)
・文書・記録管理手順
法律でがんじがらめになっているわけではないので、会社によって内容は異なると思いますが、ISO22716ではいくつかの要件が入ってきており、化粧品製造での品質を維持するにあたって、機能する理由がここにもあるのです。
Q6:GMPおよびISO22716の概要について教えて下さい。
まずGMP(Good Manufacturing Practice)の歴史ですが、そのルーツは医薬品です。1963年にアメリカで制定されたのが最初で、それに追随するようにWHO(世界保健機構)が1968年に「WHO-GMP」を公表しました。日本では1974年に医薬品GMPが制定され、その7年後の1981年に業界の自主基準として化粧品GMPが公表されています。この化粧品GMPに関する内容が、国際的な規格「ISO22716」として2007年に公表されました。これを受け、2008年に業界の自主基準として採用されています。
ISO22716がISO(国際標準化機構)で作られた背景としては、グローバル化により国際間で非常に多くの化粧品が輸出入されるようになったことで、取引される化粧品の品質と安全性の確保をグローバル視点で統一化しようという動きから策定されました。化粧品に関する製造管理と、品質管理の規則のガイドラインとなっています。日本ではこれを受けて、日本化粧品工業連合会(粧工連)などが日本国内の対象製品等を明確にしています。
その国内で対象となる製品は、医薬品及び医薬部外品です。ただし、医薬部外品のうち新指定・新範囲医薬部外品等は除外されており、限りなく化粧品に近い医薬部外品が対象製品になっています。適用範囲は、「化粧品の生産管理・保管及び出荷」と、ものづくりに特化しています。このため従業員の労働安全や環境保護は適用外。また研究開発や最終製品の営業、物流、ISO 9001で言われている内容も適用外になります。
海外の状況は図の通りで、グローバルではISO22716は国際基準としての位置付けが高まっています。今後、主にグローバル展開を図る輸出関係の化粧品会社にとっては、無視できない基準になっていくのは確実でしょう。
Q7:ガイドラインであるISO22716の認証を取得するメリットについて教えてください。
ISO22716を使った第三者審査・認証は、ISO9001などのように認定機関に認められた認証制度に拠るものではなくプライベート認証ですので、日本国内の認証機関は少ない状況にあります。日本能率協会でも審査サービスを本格的な取り組みを開始していますが、ニーズは非常に高まってきていることをうけてです。
認証取得のメリットでは、国際間の貿易要件の遵守や、国内及び海外市場での競争力アピールの強化が挙げられます。また、日本国内の行政による監査等への準備にも有効です。さらに、ISO 9001と統合することで品質管理体制そのものがより強化されていくことも大きなメリットといえます。まとめると次のようになるでしょう。
・GMP実行の適合性及び有効性に対する信頼性の向上
・輸出製品等における化粧品法規の規制事項や顧客の二社監査の評価免除
・行政機関による監査等の準備及び対応
・ISO 9001との統合運営による品質管理体制の強化
・クレームの減少、予防の強化
・製品品質の安定/生産効率の改善
・市場への競争力アピールの強化
・海外輸出時における国際的な認知度の強化
3. ISO22716:2007のポイント
Q8:ISO22716はISO9001とどう違うのでしょうか?
ISO22716の要求規格は、第1章から17章まであります。特に「5. 構造設備」以降はものづくりに特化した章立てとなっており、ISO9001との大きな違いになっています。具体的には、ISO22716は化粧品業界に特化しており、対象とするプロセスも生産、保管、出荷に限定されています。重視するものについても、ISO9001では「顧客」や「経営との統合」ですが、ISO22716では「生産現場の適正、有効性の向上検証」「製品の品質向上」となっています。
また、教育訓練はISO9001では必ずしも要求していませんが、ISO22716では明記されており、記録作成の義務もあります。構造設備にも具体的な要求があります。文書化については、ISO9001は文書化の項目が少なくなっていますが、ISO22716では証拠資源としての意味合いもあって、文書や記録が要求されます。このように、両者には多くの違いがあります。
Q9:ISO22716に則った化粧品GMPの概要について教えて下さい。
化粧品GMPは、化粧品・医薬部外品の製造管理及び品質管理に適用されます。目的は製品の品質確保で、その内容はものづくりに関わる従業員、設備・機器、原材料、製品、試験、廃棄物、委託、逸脱・変更管理等となっており、それぞれの業務に関わる基準が定められています。具体的には、生産の4つの要素に関わる内容がほとんどで、品質確保については必要最低限の水準と思われます。各項目のレベルは示されておらず、会社によって変わってくると思います。
このGMPでは、「人による間違いを少なくしていく」「汚染等、品質劣化を防ぐ」「高い品質を保証していくためのシステム」という三原則を掲げており、これらを製品の品質確保につなげていくことが目的になります。この三原則をハードとソフトに分解すると、以下の図のようになります。
例えば、最も大きなウェイトを占めるヒューマンエラーでは、ハード面で十分な作業スペースの確保や間仕切りの設置、秤量システム、自動監視などが有効ですが、同時にソフト面でSOPに基づく作業やダブルチェック、記録、GMP教育、見える化などが必要になります。GMPを達成するためには、三原則に対するハードとソフトの両方を整備していくことが重要なポイントになります。
Q10:会社と従業員それぞれの責任について教えて下さい。
化粧品GMPでは、ISO22716の「3.2.1組織図」の規定があります。GMP組織で特徴的なのは、生産部門と品質部門が独立していることです。これが曖昧では管理がしづらくなります。日本は管理組織のウェイトが高い傾向があるので、GMP組織との整合性を持っておくことが重要です。
会社、経営者の責任には、「組織の確立」「責任と権限の明確化」「GMPの実施」「従業員の確保と育成」「経営サイドへの報告」「法令遵守」などがあります。一方、従業員の責任には、「役割の認識」「GMPの遵守」「教育訓練」「自己啓発」などがあり、きちんとした力量を持った上で業務を行っていくことが大事です。これはISO9001と似たような内容です。
Q11:化粧品GMPには、どのような要求事項があるのでしょうか?
化粧品GMPの要求事項にはどのようなものがあるのか、実際の流れで見ていきます。
製造業では一般的に、「出勤」「更衣」「手洗い」「作業開始」「作業中」「休憩」「手洗い」「作業中」「作業終了」、そして人については「片付け」「脱衣」「退社」となり、製品は「保管」「試験」「出荷」というプロセスで構成されるでしょう。化粧品GMPでは、それぞれのプロセスに要求事項があります。
出勤時は「3.5.2 従業員の健康」が規定されており、健康状態をチェックすることで製品汚染やヒューマンエラーの発生を防止します。更衣では「3.5.1 従業員の衛生」が規定され、誰でもどこでも同じ手順で更衣できることや、服装規定を遵守すること、そして手洗いと手指消毒の手順についても記述されています。
作業開始時は「7.2.2及び7.3.2 開始時の点検」で作業前に確認することが規定されています。作業中では「7.2.1及び7.3.1 関連文書の完備、17.2 文書の種類」で出荷判断の根拠のひとつとなる製造記録について規定されています。記録の記述については、空欄にしない、値を記入する、不要な項目は斜線などを記載するといった注意事項が「17.3 記述、承認及び配布」で規定されています。
「17.5 文書の保管」では、試験や製造を行った際の結果や記録(データシートや実験ノート、写真などの記録原本)を生データとして保管することを定めています。最初に記録したメモ書きも生データとして扱うことに注意が必要です。作業中においては「7.2.5及び7.3.6 工程管理」をはじめ複数の規定があり、重要作業の管理や逸脱管理、異物混入、防虫対策などの要求事項があります。
休憩においては「4.2 区域の種類」で、作業室での飲食・喫煙は汚染の原因となるため禁止することなどが規定されています。また原材料については「6.4 識別及び状態」などでラベル管理における注意事項などについて記載されています。作業の終了時は「4.10及び5.5 清掃及び消毒」などで注意事項があります。
保管については「6.6、8.3 保管」で区分保管や識別、状態表示、注意事項などが規定されています。試験では「9. 品質管理試験室」で試験方法のSOP作成や科学的で適切な方法、記録、逸脱の処理、OOS(規格外試験結果)の処理、データの保管について記載され、「9.7 サンプリング」ではサンプリングの手順についても言及されています。そして出荷については「8.2及び8.4 出荷」で記載されています。このほか、構造設備や変更管理についても規定されています。
Q12:GMPレベルの向上には、どのような手順が必要でしょうか?
化粧品GMPは、あくまでも最低の基準です。このレベルを上げていくためには、現状の課題を整理して評価することが重要です。具体的には、逸脱・規格外、クレームといった「現状の課題を定期的に分析し評価すること」、異物混入リスクの回避や操作ミスの低減といった問題に対する「具体的な改善テーマを設定すること」、「GMPハードとソフトごとに改善策を策定すること」が挙げられます。手順としては、改善の実施、効果測定(有効性評価)、改善事項の追加・修正を、PDCAサイクルとして回していくことが大事です。
Q13:ISO22716認証を取得するまでの流れを教えて下さい。
認証の取得の流れは、大まかに「現状確認・スケジュール決定」から「キックオフ」「規格の理解(研修)」「ギャップ分析」「文書作成」「運用・教育」「内部監査の実施」「是正処置」「審査対応」となります。このうち、ギャップ分析と文書作成が特に重要で、時間もかかります。これらには3~4カ月をかけ、同時にマニュアルや手順書の整備をしていきます。全体のスケジュールとしては、1年から1年半の期間をみておくのが一般的です。
日本能率協会では、ISO22716の審査サービスを提供しておりますが、審査対応はもちろん、審査機関とは独立した研修専門部門でGMPの構築や取得のサポートをさせていただいています。最もハードルの高いギャップ分析などにおいても、講師を派遣するなどの対応を行っています。ぜひご検討ください。
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*ISO22716(化粧品GMP)認証はいずれの審査機関においても認定機関による認定は伴わないプライベート認証になります。