JFS-C規格(食品安全マネジメントシステム)
JFS-C規格は、フードチェーン全体での食品安全確保のための取り組みを標準化し、
自らの食品安全レベルを向上させることを目的として、一般財団法人 食品安全マネジメント協会(JFSM)
が開発した日本発の食品安全マネジメントシステムの認証スキームです。
ISO/TS22002-4とは
登場人物
能率博士:大手食品メーカーでの品質保証部長経験あり。
いそくん:博士のご近所さん。惣菜メーカー勤務。
いそくん:博士、今日はFSSCの前提条件プログラムについて教えてください。
博士:その前に、前提条件プログラムはなぜ大事なのか覚えているかな?
いそくん:HACCPシステムを実行する上で、いくらCCPの工程を厳密に管理しても、その製造現場が汚れていたり、作業者が衛生ルールを守っていなかったりすると、せっかく、CCPで管理した効果が十分に発揮できないから。HACCPシステムを確実に機能させるためには、前提となる条件があって、その条件を守ることが食品安全上大切だってことだね。
博士:その通り。ところで、いそくん、食中毒予防の3原則って知ってる?
いそくん:「つけない」「ふやさない」「やっつける」
博士:正解!前提条件プログラムが「つけない」「ふやさない」ためのルールだと考えてくれたらいいよ。CCPが「やっつける」に該当する。
いそくん:なるほど、わかりやすい。
博士:食品安全を確実にするためには、畜産業や水産業のような一次生産者から食品製造業者、輸送や保管業者、包装材料や添加物の製造業者など、消費者が食品を食べるまでのすべての段階を対象にすることが必要なんだ。でもさすがにそこまでの範囲を同じ前提条件プログラムで管理することはできない。そこで分野ごとに適用される前提条件プログラムが設定されているんだ。
・畜産業・水産業:ISO/TS22002-3
・食品製造:ISO/TS22002-1
・ケータリング:ISO/TS22002-2
・容器包装製造:ISO/TS22002-4 など
今日は、容器包装製造に適用される「ISO/TS22002-4」について話そう。
いそくん:よろしくお願いします。
博士:「ISO/TS22002-4」は4章から構成されていて、4章の4.1~4.15までの15項目が要求事項になる。
4.1:施設
4.2:配置及び作業空間
4.3:ユーティリティー
4.4:廃棄物処理
4.5:装置の適切性、清掃・洗浄及び保守
4.6:購入材料及びサービスの管理
4.7:汚染の予防手段
4.8:清掃・洗浄
4.9:有害生物[そ(鼠)族、昆虫等]の防除
4.10:要員の衛生及び設備
4.11:手直し品
4.12:回収手順
4.13:保管及び輸送
4.14:食品容器包装に関する情報及び顧客とのコミュニケーション
4.15:食品防御及びバイオテロリズム
いそくん:「ISO22000」の7.2.3項と同じまたは似ている項目がほとんどだね。
博士:その通り。「ISO/TS22002-4」は「ISO22000」の7.2.3項を詳細に記載したものなんだ。それに加えて4.11:手直し品~4.15:食品防御及びバイオテロリズムまでの5項目が追加されている。
いそくん:内容を見ると結構細かいね。大変そう~。
博士:そうだね。でも見方を変えると具体的に書いてあるからやるべきことが明確だという捉え方もできる。
いそくん:博士はいつも前向きですね(笑)
博士:「ISO/TS22002-4」に準拠した前提条件プログラムを作るときに気を付けなければならないポイントがある。この規格は「何をしなければならないか」は具体的に記載されているが、「どの程度」は記載されていない。「どの程度」は製品や製造環境によって異なるからだ。
いそくん:「どの程度」はどうやって決めたらいいの?
博士:法令や各業界で作成したガイドラインなどが参考になる。まず製品となる食品包装資材は食品衛生法に適合している必要がある。直接中味と触れる包装容器または容器の最内層に使用されている素材が、「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示370号)」に合致していなければならないから、原料や使用する添加物についても重金属などが含まれていないものを選定する必要がある。ガイドラインとしては、「日本建築学会 環境基準」「軟包装衛生協議会 衛生管理自主基準」などが参考になる。そして食品に使用するものだから「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」も参考にする必要がある。法令やガイドライン等に示されていない条件を採用する場合は、学術論文を参照したり、自社での検証結果なども踏まえて設定していく必要がある。
いそくん:「ISO/TS22002-4」に建屋の構造上などから、適合できていない場合、FSSCはあきらめるしかないのかな?
博士:「ISO/TS22002-4」では、代替方法が認められているんだ。例えば4.2.2項の「建物は、製造工程を通じて、材料、製品及び人の合理的な流れが可能になるように、十分な空間を備えたものでなければならない。」という要求事項は何を目的としているんだろうね。
いそくん:十分な空間がないと材料・製品同士や作業者同士の交差汚染が考えられるし、設備の清掃もやりにくくなる。
博士:そのために例えばどんな管理方法が考えられるかな?
いそくん:原料の保管場所を特定する。原料名を表示する。取り違えやすい原料は色分けするなど。清掃についても定期的な一斉清掃を実施することで管理できるんじゃないかな。
博士:それらが代替方法になる。「ISO/TS22002-4」通りに実施できず、代替方法を実施する場合は、ISO22000のハザード分析によって、代替方法が妥当な方法なのか評価することが求められている。その結果、同等の効果があればOKだ。また、実施しなくても大丈夫という要求事項があるかもしれない。その場合も同様にハザード分析を実施しておく必要がある。
いそくん:なるほど、ハード面で十分でない場合、ソフト面で管理できていればいいのか。
博士:だから、前提条件プログラムである「ISO/TS22002-1」と現場のギャップをあらかじめ調査することが重要になってくるんだ。これはよく“ギャップ診断(分析)”と呼ばれて、技術仕様書の要求事項と自社現場の実態管理の差を調査することを指すんだ。自社でやる場合もあるし、外部の専門家に依頼することも多いよ。
いそくん:現状を把握することは重要だよね。
博士:その通り。前提条件プログラムは最初に言ったように「つけない」「ふやさない」ためのルールだから、代替方法を検討する場合は、要求事項通りやらなかった場合、何が混入する可能性があるのか?何が増加する可能性があるのか?と考えるとわかりやすいよ。ソフト面での管理で代替する場合、当然作業者への教育が重要になることを忘れないでね。