JFS-C規格(食品安全マネジメントシステム)
JFS-C規格は、フードチェーン全体での食品安全確保のための取り組みを標準化し、
自らの食品安全レベルを向上させることを目的として、一般財団法人 食品安全マネジメント協会(JFSM)
が開発した日本発の食品安全マネジメントシステムの認証スキームです。
HACCPの基礎
登場人物
能率博士:大手食品メーカーでの品質保証部長経験あり。
いそくん:博士のご近所さん。惣菜メーカー勤務。
いそくん:博士、“ハセップ”って知ってる?
博士:もちろん知ってるよ。どうしたの?
いそくん:4月に品質保証部に異動になることは知ってるよね。品質保証課長から「当社も“ハセップ”をやることになった、だから君を呼んだんだ」って言われたけど、何のことやらさっぱり。
博士:なるほど、HACCPを進めるには製造工程に詳しい人が必要だからね。
いそくん:“ハセップ”について教えてもらえませんか?
博士:急に改まって。いいよ簡単に説明してあげる。HACCPは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の頭文字をとった略称だよ。“ハシップ”と呼ぶ人もいる。
いそくん:“and”でつないでいるくらいだから「Hazard Analysis」と「Critical Control Point」の2つから成り立っているのかな?
博士:その通り、「Hazard Analysis」とは“危害分析”、「Critical Control Point」は“重要管理点”のことだ。つまり危害を分析して重要管理点を決め、その重要管理点を確実に管理することで食品の安全を保証する製造管理方法」のことなんだ。
いそくん:危害って何?
博士:危害とは食中毒やケガなどの健康被害を起こす原因となるもののことだ。例えばいそくんが担当していた“鶏のから揚げ”は、どんな検査をしてるかな?
いそくん:出来上がった製品の微生物検査をしている。
博士:つまり“鶏のから揚げ”の危害には「微生物」があるということだ。基準以上の微生物がいたら食中毒になる可能性があるからね。また金属探知機を通しているのであれば「金属異物」も危害と認識して管理していることになる。ほかにももっとあるかもしれない。
いそくん:これまでのやり方とHACCPって何が違うの?
博士:これまでのやり方というのは、最終製品から定期的に抜き取って検査を実施し、基準を満たしていれば全体を合格品とする衛生管理方法のことだ。いそくんが担当していた“鶏のから揚げ”は冷凍食品だから、微生物検査の結果を確認してから出荷することになると思うけど、もし微生物検査で基準以上の微生物が検出されたらどうなるんだい?
いそくん:そのロットは出荷禁止で、廃棄することになるよ。
博士:そうだよね。でも考えてみると、そもそも抜き取り検査だから、全数検査をしているわけではない。合格ロットでも、たまたま微生物が基準以下の製品を検査した可能性があるよね。同じロット内には基準以上の製品があるかもしれない。
いそくん:確かに、その可能性を言われると否定できない。
博士:HACCPによる衛生管理とは、さっき話したように「危害分析」と「重要管理点」からできている。まず、工程ごとにどんな危害があるかを分析して、その結果から特に影響の大きい重要な工程を決め、重点的に管理していく方法のことなんだ。“鶏のから揚げ”で微生物を殺すまたは減らす工程というとどこになると思う?
いそくん:そりゃ、揚げ工程でしょう。
博士:そうだね。本来は「分析」というくらいだから、ルールに従って決めるのだけど、揚げ工程が微生物を殺すまたは減らすための重要な工程になるのは間違いないだろう。
いそくん:製造現場では、定期的に大きめの製品を選んで中心温度を測っているよ。
博士:他にはどんなことを管理しているの?
いそくん:揚げ油の温度やコンベアのスピードも定期的に確認している。
博士:もし、原料である鶏モモ肉の大きさや品温がいつも同じで、揚げ油の温度と揚げる時間が一定だったら、製品の中心温度はどうなる?
いそくん:そりゃ、理論上は一定になるね。なるほど、つまり製造条件を一定に管理すれば安全な製品を安定して製造することが可能になるってことか~。鶏のから揚げの場合、微生物という危害に対し、揚げ工程が重要管理点、そして監視すべき項目が揚げ油の温度と揚げ時間を決めるコンベアスピードってことになるのか。
博士:さすが、から揚げの専門家、ポイントを掴むのが早い!HACCPでは、この重要管理点を連続的にモニタリングすることを求めているんだ。今回の場合、揚げ温度とコンベアスピードが基準値内であることを連続的にモニタリングする。そうすることによって、ロット内すべての製品が安全であることを担保しているんだよ。
いそくん:でも、危害って微生物だけじゃないよね。金属異物や最近ではアレルギーの混入なんかも大きな問題になってるよ。
博士:その通り。だから最初にすべての危害を把握するための危害分析を行うんだ。そのためには、原材料の情報、最終製品の情報、製造工程、そして誰が食べることを想定しているのかの正確な情報が必要になる。
いそくん:なるほど、「食の安全」を客観的に説明できるようにすることが重要なんだね。