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マネジメントシステム改善のポイント

【審査員最前線 第1回 審査部部長 伊藤新二】

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【審査員最前線 第1回 審査部部長 伊藤新二】

審査員最前線 第1回

お客様とキャッチボールを重ね
ご要望を反映させた審査を行い
改善に役立つ“返し”につなげる

日本能率協会審査登録センター(JMAQA) 審査部部長 伊藤新二



一般社団法人日本能率協会審査登録センター(JMAQA)は75年以上の歴史を誇る経営専門団体・日本能率協会が設立した審査機関です。特定の業種・業界に依らないマネジメント系第三者審査機関として1994年に設立され、以来、常に「経営革新につながる審査」を目指しています。
その審査の際に重視しているのは、「使いこなす力」「事実に基づく審査」「現場の重視」「マネジメントシステム能力の向上」「ともに考える“パートナー”」の5つのテーマです。

今回スタートする新連載「JMAQA審査最前線」では、この5つのテーマを実践するJMAQAとしての審査に関していろいろご紹介していきます。連載1回目は、審査登録センター審査部長・伊藤新二がJMAQAの審査全般に関してご紹介していきます。

 

1.お客様組織とのコミュニケーションを重視

Q.JMAQAの審査の特徴としてはどんな点がありますか。

経営者インタビューを重視していることです。経営者を中心にお客様組織とのコミュニケーションをしっかりとることが審査における基本であり、最も重要だと考えています。

ISOマネジメントシステム規格の審査では、2015年版に改定された後、経営者インタビューが重視されるようになりました。ですが、JMAQAではISO9001の2000年版より前の時代から、経営者インタビューには時間をかけてきており、ここで得られた情報を基にした審査をいち早く行ってきたとの自負があります。

2.審査とは経営者と現場の「ギャップ」確認

Q.経営者インタビューではどんなことをうかがいますか。

いろいろな話をお聞かせいただきますが、特に、マネジメントに関してどのようなお考えをお持ちで何を課題として捉えているのか、ISOマネジメントシステムをどのように活用したいのか、この2つを詳しくうかがいます。

審査では経営者インタビューに続いて現場にお邪魔して、従業員インタビューやシステム文書や記録類の確認、現場審査などを行います。ここでは、経営者の考えや想いと現場との間に「ギャップ」があるか確認させていただきます。現場活動に反映され実施されているのか、マネジメントの仕組みとして回っているのか、もしギャップを見つけたら、原因を探していくのです。

例えば人材の能力が原因なら教育や補充が必要かもしれません。手順など仕組みが原因なら改善がいるかもしれません。あるいは経営者の期待が高すぎることもあるでしょう。この原因を探すには、表面上の飾られたものではなく、いかに現実の姿を引き出せるかどうかがポイントになってきます。

Q.ギャップにはどんな例がありますか。

一般論ですが、ISOマネジメントシステムを導入している組織の中には、経営者が考えていることがキチンとシステムに取り込まれてなく、形ばかりで、「ISOはISO」、「経営管理は経営管理」などと分かれているケースがあるようです。

逆に経営とシステムが一体化している場合は、経営者が考えていることがマネジメントシステムの運用管理に反映されています。例えばQMSなら品質目標、EMSなら環境目標に実際に使われている経営指標などが含まれている事例が見受けられます。

Q.ギャップがあって原因が分かった場合、どのように伝えるのですか。

審査の最終会議の場で具体的に申し上げます。例えば「実際の○○現場の活動に関して、社長が重視していた△△が取り組まれていない状況がありました。その原因は審査で見た限り□□だと考えられます」などとお伝えします。

そもそも認証を利用する経営者には、ISOの意義を感じて頂くことで認証の維持をしていると考えています。だからこそ、ISOマネジメントシステムの活用を通して得られる効果を実感していただきたいのです。

もしこの実感が弱い場合、原因のひとつとして何かしらのギャップが存在していることが考えられるでしょう。ですからこのギャップと原因と思われる事象については、経営者にしっかり報告させていただきます。

3.お客様のご要望に応じて重点課題を設定

Q.JMAQAの審査では「重点課題」を設定することがあります。

審査を予定しているお客様には、ご希望に応じて、事前に、抱えている課題などについてお聞きしますが、その中からお客様と相談して「重点課題」を設定することがあります。可能なら、この時点で先ほどご紹介した経営者の考えも教えていただき重点課題に盛り込むようにします。その結果、審査全般を通して、設定した重点課題をフォーカスしていくことになります。

なお、重点課題の設定にあたっては、お客様の状況やご意向と、審査機関としての考え方や第三者性の両方をすり合わせていきます。後者が絡んでくるのは、審査は第三者認証制度の基準などに則って実施することが前提だからです。

Q.審査計画には重点課題も示すことになります。

審査計画については、審査をする側が決めるものと思われがちですが、重点課題と同様、お客様のご希望もうかがっています。計画を作るにあたっては、お客様には組織に関する情報をいろいろご提供いただきます。それらを考慮して、審査制度の基準に則って確認すべき項目を決め詳細な審査スケジュールに落とし込んでいきます。

お客様にご満足いただく審査にするには、この事前のコミュニケーションを十分に行いながら審査計画を組んでいくことが重要です。もちろん審査当日の経営者インタビューの展開によっては、新たな重点課題なども出てくるでしょう。その場合、「今回の審査では○○も確認してみましょう」などと臨機応変に対応することもあります。

4.しっかりジャッジして経営者への「返し」につなげる

Q.経営者の関心ごとが重点課題になることが多いのが分かりました。

重点課題については、審査の結果を経営者へどのように「返し」をするかが重要になってきます。この返しの内容が、経営者による審査やISOへの評価に影響するからです。ですから最終会議の場で、経営者には具体的かつ正確にお伝えします。

もちろん毎回大きな問題などが見つかるとは限りません。そうした場合でも「何もありませんでした」といった報告で終えるのではなく、「今回は何も心配することはありませんでした。むしろ重点課題で○○の良い取り組みが見つかりました」などと経営者にお伝えできるよう、審査の場で何かしら見つけてくるのです。

また、ISOの審査では良い点を挙げることが必ずしも求められているわけではありません。ですが、これはお客様組織への深い興味の証だと考えています。強く興味を抱けば、自ずと審査現場ではより深く見ていくことにつながり、その結果、良い点を含めていろいろ確認できるはずです。

5.「コミュニケーション」を重視しキャッチボールを行う

Q.審査では事前の準備段階から結果の報告までお客様にはやりとりをお願いすることになります。

このやりとりをキャッチボールに例えると分かりやすいでしょう。審査でお客様組織におうかがいするのは年1回あるいは半年に1回ですが、審査計画作成の前段階から実際の審査までの間には、幾度もボールのやりとりを重ねていきます。

しっかりしたキャッチボールによって、ご期待に沿う審査計画になり、いろいろ見つけられる審査につながり、経営者に響く返しができるのです。
JMAQAではお客様との「コミュニケーション」を重視していますが、効果的に行う手段のひとつがキャッチボールだと考えています。

Q.伊藤さんは2001年に審査員活動をはじめてたくさんのお客様の審査を担当してきました。ISOマネジメントシステムの運用がうまくいく秘訣などあれば教えてください。

上手に活用できている組織の共通点としては、経営者から末端まで一貫して風通しがよい点が挙げられます。現場からの意見が経営者を含めた管理層に通りやすい組織もあるようです。こういった状態なら、経営者の意向が現場にしっかり伝わり、下からの意見も管理層を経て経営者に届き、ISOマネジメントシステムを含めて経営マネジメントがうまくいく傾向があると思います。

6.社会と密なコミュニケーションをとっていく


Q.今後も積極的に情報発信していくのでしょうか。

審査機関のミッション・役割について、社会に対して今まで以上に明快に発信していきます。同時に、お客様にはJMAQAをもっと活用していただけるように私どもの活動についてもっと詳しくお伝えしていくことも欠かせないと考えています。

実は長くお付き合いをいただているお客様から、「審査で自社の今の課題を見てもらっていいのか?」「こんなことをお願いしていいのか?」などと言われることがあります。もちろん審査機関として公平性などを最優先することにはなりますが、審査サービスに関してはご要望に応えられるよう現状以外でもできることはいろいろあると考えています。

今後も審査機関としての情報発信を積極的に行うと同時に、皆様からのご期待やご要望に応えられるように社会と密なコミュニケーションをとっていきます。


「コミュニケーション」コラム:
*JMAQAでは「コミュニケーション」を重視しています。連載に登場する審査員はどのように考えているのか、ご紹介していきます。

審査計画段階のキャッチボールの回数が審査結果につながる
コミュニケーションに関して審査を行う立場から重視すべきこととは、お客様との情報交換を審査計画を組む段階からしっかりとることです。
ここが疎かだと、審査員として審査に向けての事前準備がしっかりできない恐れがでてくるのです。そうした状態で審査を迎えると、行き当たりばったりでねらいがはっきりしない内容になりかねないでしょう。その結果は言うまでもありません。
逆にコミュニケーションがしっかり取れていれば、個々のお客様に合った審査になって、ご紹介したように充実した返しにつながるのです。





伊藤 新二(いとう しんじ)
日本能率協会審査登録センター(JMAQA)  審査部部長


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工学系大学院にて衛生工学を専攻後、建設会社で、主に土木構造物(鉄道改良、河川改修、ゴルフ場造成など)の施工管理や構造物の設計、施工計画立案など担当する。2001年から日本能率協会審査登録センターに勤務し、審査員としてサービス業から製造業まで幅広く参画し、審査計画部長、教育訓練部長、開発部長等を経て2012年より審査部長として審査現場の責任者となる。2013年より品質管理責任者を兼任。この間、食品安全、ITサービス、医療機器品質、事業継続、エネルギーの各マネジメントシステムやマーケットリサーチサービス認証(製品認証)など新サービスを開発責任者としてリリース。現在、QMS、EMS、ISMS、ITSMS、OHSMS、MD-QMS、BCMS、MRSPC、EnMSの主任審査員。趣味はゴルフとネットで 映画を観ること。



 

 

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