【「企業様の取組み」編 本田技研工業様 講師派遣型研修】
2015年版移行対応の研修により
社内におけるシステムの理解が深まりEMSの改善へつながる
取材先:
本田技研工業株式会社
経営企画統括部 環境安全企画部 環境管理推進課 主幹 大星祐司 様 (左)
日本本部 地域事業企画部 環境推進課 主任 高橋弘幸 様 (右)
1.移行対応のために6種類の研修コースを受講
Q.本田技研工業様におけるISO14001認証について教えてください。
本田技研としての初めてのISO14001認証は、1997年のパワートレインユニット製造部(旧栃木製作所)を皮切りに、1998年には国内の全生産事業所において認証を取得しました。
その後、認証毎の独立した環境マネジメントシステムを運用してきましたが、2010年にすべての生産事業所のシステムを統合した環境マネジメントシステムを導入して認証も一本にまとめました。
オフィス系についても1999年に本社ビルを取得し、2011年にオフィス系ビルのシステムを統合させ認証をまとめました。
そして、ISO14001の2015年版への移行を機に、生産系とオフィス系のシステムをまとめた全社統合の環境マネジメントシステムを導入し、認証も一本にまとめました。
Q.小会(日本能率協会)の研修を受けていただきましたが、その経緯を教えてください。
日本能率協会に研修をオフィス系でお願いした理由は、2015年版への認証の移行に対する対応を図る為、研修をお願いしました。今回、6種類の研修をお願いしました。いずれも講師に来てもらう出張型です。研修のプログラムの中には2015年版だけでなく、ISO14001全般はもちろん、環境法規の理解・審査対応などを取り上げた内容も含まれています。
・ISO事務局向け研修
・部門長向け研修
・内部監査員養成研修
・内部監査員スキルアップ(フォローアップ)研修
・認証機関による審査前研修
・環境法規制等対応研修
2015年版への移行準備をはじめた際、ISO14001の2004年版に対応して構築・運用していた環境マネジメントシステムについて、本業の仕組みに近づけるための改善が必要だと感じました。ISO14001は2015年版に改定され、本業との一体化が一層強調されています。
こうした情報を得て、移行に向けて社内でいろいろ検討をしていたのですが、すでに運用している環境マネジメントシステムについてどんな手直しが必要なのか、また、各部門への周知及び理解の促進を図る為に、何をしたら良いのか、不安がありました。
自分達だけで規格の要求事項を解釈して、そのまま現場にあてはめてみても、実際の仕事の仕組みとはどうしてもギャップが生じてしまう、2004年版の経験から、そのような不安を抱いていました。
そこで、自分達だけでシステム改善に取り組むのは難しいと判断し、社外の研修機関も活用することにしました。関係者の間で情報交換を行いました。その中で、研修を日本能率協会様にお願いした事案を聞き、その内容が、大変分かり易い内容だったと言う事から、お願いをしました。
2.本業との一体化のシステムのためISOの社内浸透を図る
Q.研修を受けていただいた感想をお願いします。
研修はいずれもライフサイクル視点・事業と連鎖などの本来業務を交えた解説をしていただき、参加者にとっては自分達の仕事と結び付けて考えることができたので、大変分かりやすかったと思います。
例えば、「部門長向け研修」には社内のさまざまな部門から参加しましたが、参加者は、規格要求事項に対してどう現場の仕事に結び付けて行くか、担当部門の業務と結び付け方が理解できたようです。
今回、移行にあたっては、環境マネジメントシステムの有効活用に向けて、すでにある仕組みの改善を目指しました。そのためには、本業との一体化の仕組みを含めてISO14001規格全体に関して、社内全体であらためて理解することが必要でした。一連の研修によって、その社内の理解が深まってきました。
Q.本業との一体化について、現場の実際の仕事や仕組みと絡めて理解する必要があります。
今までのISO14001についての捉え方は、「実際の仕事にプラスアルファするもの」「自分たちの日々の仕事は別物」といった誤解が一部であったようです。また、「この要求事項では〇×△の取り組みをしなければならないはず」などと考えて、例えば帳票について、現場で使っているものとは別に、新たに作ってしまうケースも珍しくありませんでした。実際、環境目的・目標についての管理は、事業テーマ管理表など、別々に作って管理していたのです。
ISO14001に対するこのような誤解は、研修を通して解消されてきたようです。例えば、先ほどの帳票についていえば、「なぜ、この帳票が必要なのか?」「そもそも要求事項は何を求めているのか?」、こうしたことを考える機会になったのです。その結果、無駄なものを省くなど改善が進んでいったので、研修がシステムの改善を後押しした面もあったと考えています。
環境マネジメントシステムの運用を効果的にするには、社内で一人でも多くの関係者に、より深く理解してもらうことが必要になります。今回の研修では、まず2015年版に触れて将来ビジョンや方針などから本業との関係を理解した上で、自分たちの現場の仕事にどう展開していくのか理解してもらえたと思います。
3.システム改善の判断に外部機関を活用
Q.私どものような外部の研修機関を活用するメリットをお願いします。
すでに構築・運用しているシステムについて、改善を行うことは難しい面があります。どの様に明文化すれば良いのかなど文書の改廃の判断がしにくいのです。
例えば、現場の仕事の一部で、「ISOの要求に沿ってやっているが、業務負荷の増加に繋がってしまう」と考えた場合、どの程度まで改善を図ればよいのか、それが要求事項を満たしているのか、こうした微妙な判断が求められるからです。
研修においては、こうした判断が必要な内容も取り上げています。講師からの説明は、自分達のやろうとしていることのお墨付きになるので、いろいろな改善の実行につながっていると思います。今回受けた一連の研修は、こちらが求める内容及び特性を活かした内容を盛り込んで頂いた内容にして頂きました。研修を受けたみなさんには、自社事例を含めた内容で説明されることにより、さらに理解が進んだと思います。
他にも研修のメリットとしては、私どものような社内の事務局より、日本能率協会のような社外の専門家の方が説得力があることが挙げられます。
Q.今後の取り組みについて教えてください。
2015年版への認証の移行は済みましたが、システムの改善には引き続き取り組んでいきます。
例えば内部監査については、今後も監査員のレベルアップや、仕組み自体の改善を検討したいと思います。内部監査では、認証機関の審査とは異なりアドバイスが可能な事から、内部監査員レベルが上がれば、改善につながるような指摘がより多く出るようにポイントを絞って行う事で良い改善につながります。あるいは、業務改善だけでなくコンプライアンス対応として不祥事防止といった事も重点確認項目としても考えられます。
4.本田技研工業として目指す姿に向けてEMSをツールとして活用していく
今回の移行を機に進めてきた本業との一体化についてはまだ途上ですが、研修などを通してISO14001への理解が社内で広がっており、より効果的なシステムを目指していきます。
例えば、本業との一体化も関係してきますが、名称は「環境」マネジメントシステムですが「環境」に限定せずに、幅を広げて考えていく必要もあるでしょう。
ここで重要なのは、仕組みとしてどのような形になるにせよ、環境マネジメントシステムはあくまでもツールだという認識を欠かさないことです。ツールありきで考えだすと、何のためにやっているのかが分からなくなるといった、本末転倒の状態になりかねないからです。
本田技研工業は、グローバルのお客様に二輪、四輪、パワープロダクトといった多岐にわたる商品をお届けするモビリティーカンパニーになっています。ですから今後もシステムの継続的改善は欠かせないと考えています。
*本ページでご案内する教育研修プログラム類は、日本能率協会ISO研修事業部が提供するものです。日本能率協会審査登録センターによる第三者審査登録活動とは峻別された独立した活動です。
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