【「ISO14001企業様の取組み」編 理研ビタミン様 講師派遣型研修】
3種類の講師派遣型研修を受講することで
内部監査を2015年版教育の場にも活用
取材先:
理研ビタミン株式会社 総務部 人事室
室長 田中 俊行 様(左)
人材開発チーム主事 岩下 雄一 様(右)
1949年創業の理研ビタミン株式会社様(本社:東京都千代田区)は、乾燥わかめフレークの「ふえるわかめちゃん」「わかめスープ」「リケンのノンオイル 青じそ」などの家庭用食品から、業務用食品、加工食品用原料、食品用改良剤、化成品用改良剤、ビタミン・健康機能食品類などといった幅広い製品の製造・販売を行っています。
同社の始祖は理化学研究所であり、技術的なルーツとしています。1949年創立時から一貫して、経営理念に「天然物の有効利用を図る技術と商品で、人々の健康と栄養に寄与し、社会に貢献する」ことを掲げています。この経営理念の一環として、ISO14001の認証を取得して環境マネジメントを実践しています。
今回、ご紹介する本社部門(各支店を含む)のISO14001 については、2011年4月に2004年版で認証取得し、2018年4月に2015年版へ移行しています。この移行対応にあたって日本能率協会研修部門による以下の講師派遣型研修をご受講いただきました。同社総務部人事室室長 田中俊行様と人事室主事 岩下雄一様に研修を受けた感想を中心にお聞きしました。
① 2015年版解説 2016年11月 対象:環境委員会
② 2015年版解説 2017年2月 対象:部門長などのマネジャークラス
③ 内部監査研修 2017年9月 対象:内部監査員(=環境委員会メンバー)
1.3回に分け間隔を空けたことで研修の受講効果がアップ
まず研修を受けるまでの経緯について田中俊行室長にうかがいました。まず研修を受けるまでの経緯について田中俊行室長にうかがいました。
「理研ビタミンでは国内全工場とオフィス部門、および海外の主力工場であるリケビタ・マレーシアで、ISO14001の認証を取得して、グループ全体で環境マネジメントを実践しています。認証については本社・各工場単位の取得です。本社の環境マネジメントシステム(EMS)については2011年4月に日本能率協会審査登録センターから認証取得しています。
2015年版へ移行するにあたって、EMSをもっと有効活用できないかと考えて、日本能率協会の研修部門に講師派遣型研修を依頼しました。研修を受けるにあたって期待したことは、『2015年版についての環境委員会メンバーへの教育・訓練』『2015年版へのスムーズな移行と移行審査対応』でした。環境委員会とは本社のEMSのまとめ役組織です。委員会のメンバーは10名で、内部監査員も兼ねていますが、このメンバーにまずは2015年版をしっかり理解させることが必要だと考えたのです」
続いて実際に研修を受けた感想を田中室長に紹介してもらいました。
「最も良かったのは、研修内容が当社の事業に沿っていた点です。一般的な集合研修とは異なり、理研ビタミンの業務を絡めて具体的な話が聞けたので大変分かりやすかったです。
ISO14001とは会社の事業計画を達成するための手段です。EMSを活用するには業務との一体化を図る必要がありますが、では具体的にどうやればいいのか、ここが分かりにくいのです。研修によって、現場に合った仕組みとはどういうものか、この点が自分たちの業務と絡めて理解できました」
岩下雄一主事は研修を3回に分けたことで効果があがったとおっしゃっています。
「研修を1回にまとめずに3回に分けたこと、連続で受けるのではなく開催時期の間隔を空けたことで効果があがったと考えています。その時期のレベルに応じた研修内容になったからです。また、すべて同じ講師に担当してもらったことで、各回のつながりが持てました。さらに、テキストの内容も良かったです。
2015年版に関して簡潔にポイントがまとめられており、移行が済んだ今でも社内教育の場で資料として活用しています」
2.研修によって「2015年版が腹落ち」 自分たちに合ったシステムを考える絶好の機会に
2015年版への移行にあたって研修が役立った点について、岩下主事に挙げていただきました。
「社内において、2004年版のときは、ISO14001はエコ活動だと捉えられがちでした。ところが、理研ビタミンの事業自体、環境に拠るところが大きく、本来業務の仕組みとISO14001のEMSが同じである、このことに研修が気づく場になったのです。
実際の移行にあたって環境マニュアルの改訂で強く意識したのは、自分たちに合ったシステムにすることです。2004年版では一部で日々の業務とは別の仕組みがありました。そこで、新しいマニュアルでは既存の文書や仕組みをできるだけ取り込むようにしたのです。
このようなマニュアル改訂ができたのも、研修で現場に合った仕組みについていろいろ議論する中で、『この要求事項にはこの社内の仕組みが対応している』『規格が求める内外の課題についてこの社内文書に書いてある』などと気づくことができたからです。2015年版の内容を理解していても、すでにある文書や仕組みのどれが対応するのかといったことを自分たちだけで判断するのは難しいと感じていました。もし研修がなければ、新たなISO用文書や要求事項より重い仕組みを作ってしまい、2004年版と比べてもますます乖離したシステムになっていたかもしれません」
田中室長も次のように明かしてくれました。
「研修によって『2015年版が腹落ちした』と言えるでしょう。規格の要求事項を満たすとはどういうことか、自分たちの仕事や仕組みを使いながら考えていったので、すんなりと理解できたのです。例えば、リスクと機会について、リスクは『自主回収』や『わかめの生育不良』、機会には『新しい市場の開拓』や『海外での成長』などがあてはまることが分かり、2015年版でもっとも分かりにくい用語のひとつが分かったのが印象的でした。
また、岩下が紹介した通り、2004年版では二重管理の状態が一部でありました。例えばEMSの環境目的・目標と、すでに全社で導入していた目標管理制度の仕組みを別々に運用していたのです。それが今回の移行で一体化に成功したのは、2015年版の趣旨をしっかり理解した上で、実際に今あるものをマニュアルに落とし込むことができたからです」
今回、3回の研修をご受講いただきましたが、当初はその予定はなかったそうです。
「まず2016年11月に『2015年版解説』の研修を受けてみたところ、先ほど紹介したように理研ビタミンの仕事や仕組みを絡めた内容で大変分かりやすかったのです。
この研修で得た内容はぜひとも社内に広めていくことが必要だと考えましたが、その際、自分たちよりプロの講師による研修の方が、2015年版の趣旨がしっかり伝わると判断したのです。そこで現場をまとめる立場の部門長などマネジャークラスに、同じプログラムの研修を受けてもらうことにしました」(田中室長)
「この研修にはさまざまな部門から参加しましたが、自分たちの業務とEMSの関係をしっかり理解できたようです。例えばInputが自部門の業務によって変換されてどんなoutputになるのかを考える課題もありました。現場とEMSのつながりが良く分かったようで好評でした」(岩下主事)
3.監査員が講師役 内部監査で2015年版の理解を深める
3回目の研修テーマは内部監査です。受講した内部監査員が講師役となって、内部監査を2015年版の教育の場として活用することにつながっています。3回目の研修テーマは内部監査です。受講した内部監査員が講師役となって、内部監査を2015年版の教育の場として活用することにつながっています。
「2回の研修が好評だったので、内部監査についても研修を受けることにしたのです。2017年7月に2015年版システムの運用をはじめました。その内部監査を行う前の9月に研修を受けています。研修の大きなねらいは、もちろん内部監査をしっかり行える体制にすることです。中でも監査員のスキルのばらつきが目立っていたので、研修を通してばらつきをおさえるのと同時に全体のレベルアップもねらいました。
実際に研修を受けたことで、これらのねらいは達成できましたが、それ以外にもさまざまなメリットがありました。例えば、研修教材の2015年版の仕組みができているか確認するチェックリストも実際の内部監査で大変役立ちました。このリストは移行にあたって確認すべきポイントをまとめたもので、さまざまな項目が載っています。内部監査ではリストにあった差分の項目を確認することで、2015年版に対応できているかどうかが効率よく確認できました。
さらに、良かった点を挙げると、今回、内部監査が社内における2015年版の教育の場になったことです。実は移行後の環境マニュアルでも規格用語を使っていることもあり、社内では現場の仕事とのつながりが理解されているとはいえない状況でした。そこで、内部監査の場を使って2015年版やマニュアルについて理解してもらうようにしたのです。内部監査員が2015年版に関しての講師役になったわけですが、その際、彼らが受けた研修の内容が大いに役立ったようです」(田中室長)
「現場に2015年版やマニュアルをしっかり理解してもらうには規格用語から業務用語への翻訳が必要でしたが、内部監査員がその役回りを務めたのです。例えば2015年版ではリーダーシップが一層重視されるようになりました。では、理研ビタミンの中で実際にどのように取り組めばいいのか、どんな仕組みを回せばいいのか、この点を規格やマニュアルと現場の仕事を絡めて説明し理解へとつなげていくには、我々が通訳となっていく必要があると感じました。
内部監査によって現場の理解が進み、以前より業務との一体化が進んできましたが、これも研修の成果だと考えています」(岩下主事)
最後に今後の取り組みテーマや研修に期待することなどについてお話いただきました。
「EMSの目指す方向と現場の理解にはまだギャップがあるようです。これを縮めるために定期的な研修が今後も必要だと考えています。
あと、EMSをより現場に則した仕組みにするために、他社の成功事例について非常に興味があります。以前、スパリゾートハワイアンズ社のISO活用事例について見聞きする機会がありました。東日本大震災のダメージが残る中で、一人ひとりの活動が会社の復興につながっていくという素晴らしい事例でした。現場にとっても非常に分かりやすい内容で、日本能率協会にはより多くの成功事例をご紹介いただければと期待しています」(田中室長)
「EMSの活用になりますが、いまや企業には、環境という括りに限定せず、持続可能性やサステナビリティ、そしてSDGsといった幅広い観点からの取り組みが欠かせないはずです。ISO14001は環境という名称ですが2015年版はまさに、こうした取り組みに対応できるツールのはずですから、幅広くいろいろなテーマを取り込むことも検討していきたいと考えています」(岩下主事)
*本ページでご案内する教育研修プログラム類は、日本能率協会ISO研修事業部が提供するものです。日本能率協会審査登録センターによる第三者審査登録活動とは峻別された独立した活動です。
研修を担当した日本能率協会 ISO研修事業部 中川優のコメントです。
研修を通して理研ビタミン様の「環境マネジメントシステム」の2015年版への移行を一緒に考えるいい機会を得ました。この手の研修では、“規格解釈論”で終わるケースも少なくないのですが、理研ビタミン様の場合は”規格要求事項を通して自社のマネジメントのあるべき姿を考える”というスタンスで全員が臨まれていた点が印象深かったです。よって毎回の質疑応答も実務的な内容ばかりでした。正にこれが「事業プロセス統合」なのだと気付かされました。