HOME > マネジメントシステム改善のポイント > 【連載「ISO9001を導入して品質を向上せよ」QMS 技術部長 西川昭彦】第1回 御社では「品質」をどのように改善していますか?QMSで「品質向上」を実現するポイント

マネジメントシステム改善のポイント

【連載「ISO9001を導入して品質を向上せよ」QMS 技術部長 西川昭彦】第1回 御社では「品質」をどのように改善していますか?QMSで「品質向上」を実現するポイント

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【連載「ISO9001を導入して品質を向上せよ」QMS 技術部長 西川昭彦】第1回 御社では「品質」をどのように改善していますか?QMSで「品質向上」を実現するポイント

連載「ISO9001を導入して品質を向上せよ」

第1回
御社では「品質」をどのように改善していますか?
QMSで「品質向上」を実現するポイント

日本能率協会審査登録センター(JMAQA) 審査部 QMS技術部長 西川昭彦



同じミスが再発する、ヒューマンエラーやポカミスがなくならない、不良が減らない、異物混入が発生する、その結果、顧客クレーム発生、信用失墜、業績悪化・・・ お客様に提供する製品やサービスの「品質」を巡って日々、さまざまな問題と向き合っている企業は少なくないはずです。

今回スタートする連載「ISO9001を導入して品質を向上せよ」では、ISO9001の品質マネジメントシステムと「品質」の関係について、毎回1テーマを取り上げて解説していきます。連載1回目は「品質向上」について、日本能率協会審査登録センター審査部 西川昭彦QMS技術部長が紹介していきます。

 

1.製品・サービスの「品質向上」は「事業活動(プロセス)」の「品質」改善で実現

Q.今回のテーマ「品質向上」について伺いますが、ISO9001の品質マネジメントシステムはどのように機能するのでしょうか。

ISO9001と品質マネジメントシステム、「品質向上」の関係を考えていくにあたって、ここでの「品質」とは「顧客満足すなわち顧客のニーズを満たしたもの」という前提で話を進めます。あわせて、ISO9001の品質マネジメントシステムについても確認すると、このシステムは顧客満足の向上につながる製品・サービスを提供するための管理の仕組みであり、ISO9001規格の要求事項はその仕組みの構築について必要事項を規定しています。

また、品質マネジメントシステムにおいて「品質」とは、「経営の質」「仕事の質」「従業員の質」等を含む「事業活動(プロセス)の質」を指します。この「事業活動(プロセス)」の「品質」が良くなれば、自ずと提供する製品・サービスの「品質」が向上するという関係になります。

Q.顧客のニーズを満たした「品質」という前提を設けて考えていくことが分かりました。顧客ニーズを考えないと独りよがりの品質になるということですね。

「『品質向上』に対してどのように機能するのか」について説明するには、ビジネスモデルによって異なってくるので、ここでは顧客やマーケットの視点から2つのパターンに分けて考えてみます。

まずは顧客やマーケットのニーズから製品・サービスを送り出す「マーケットイン」のビジネスモデルのケースです。もう一つは、そもそもマーケットが存在していない、もちろん顧客もいないケースで、新しいマーケットを自分たちで創っていくビジネスモデル「プロダクトアウト」のケースです。

「マーケットイン」のケースは、「顧客満足の向上につながる製品・サービスを提供するための管理の仕組み」というISO9001のベースの考え方とまさに合致しており、品質マネジメントシステムが「品質向上」にダイレクトに寄与すると言えるでしょう。

一方、「プロダクトアウト」で製品・サービスを投入するビジネスでは、ISO9001は特定の顧客ではなく曖昧な対象、例えば暗黙知のようなものを相手にすることになります。ここでは品質を向上させる前段階で、該当製品・サービスの品質はどのレベルを目指すのかを決めておくことが必要でしょう。もちろんISO9001はフレームワークなので、自分たちで基準を作る場面でも有効です。


2.ISO9001を共通言語として活用しサプライヤー監査の工数削減へ

Q.ご紹介いただいた2つのパターン以外でISO9001が「品質向上」につながる例はありますか。

サプライチェーンの監査などでISO9001を活用するケースです。例えばある完成品メーカーが調達先20社に対してサプライヤー監査を実施する際、この20社がISO9001の品質マネジメントシステムを導入していたとします。ニーズに応える品質を供給できるレベルになっているか、その確認作業を監査などで行いますが、ISO9001というフレームワークを共通言語として活用することで、二者監査の工数は、双方にとって大幅にコスト削減できると考えています。

サプライヤー監査では20社の現場の仕組みについてその運用状況を見ていくことになりますが、各社が品質マネジメントシステムを導入していれば共通するフレームワーク・基準を使って、共通する監査項目で評価していけば良いので効率的です。もしISO9001がなければ、監査基準、監査項目等をいちいち設ける、あるいは監査先に応じて監査内容を変えることが必要になるでしょう。

また、調達先がTier1で、そこからサプライチェーンが伸びていてTier2、Tier3と展開するケースでも、チェーン上の各社がISO9001認証を取っていれば、同様に監査コストが大幅に削減できると考えています。

Q.品質マネジメントシステムを運用する上でのポイント、例えば内部監査がしっかりできているか、マネジメントレビューが的確に回っているかどうかなどを見ていけばいいのですね。

そのとおりです。顧客のニーズに応えるという枠組みで品質を向上させるという前提で、ISO9001は成り立っていますから、二者監査の場面でもきわめて有効と言えるでしょう。

3.ISO9001の要求事項をギャップ分析で使用

Q.「品質向上」にISO9001の品質マネジメントシステムが機能することが分かりました。では実際に品質マネジメントシステムを構築、運用するにあたって、効果的な仕組みにするポイントを教えてください。

たくさんあるISO9001の要求事項に関して、すべて同じレベルで取り組むことが多いかと思います。要求事項一つひとつ手を抜かずしっかりやるのは良いことですが、中には、過剰管理になる項目もでてきてしまう恐れがあるでしょう。そこで自分たちの状況に応じて、取り組みの強弱をつけることをお勧めします。

例えば「この工程はこれくらいのレベルでやっていればリスク的に見て問題がないだろう」というなら、そこは軽くする。逆に、今まではリスクが高いのは分かっていたが、なかなか踏み込めなかったところがあるなら、強化していくのです。

あと、ISO9001の各要求事項を、「ここを強化しないといけない」「ここは十分でしょう」等と、ギャップ分析のチェック項目ような使い方をするのもいいでしょう。

Q.どうやって強弱をつけていけばいいのでしょうか。

組織には部門ごとに機能やマネジメントの階層構造があるので、その部門の中で強弱をつけて導入していきます。その際、組織全体をまとめる立場の方が部門の現場の仕事に必ずしも詳しいとは限りませんので、こうした方が主導して仕組みを作っていくと、各要求事項への取り組みレベルが現場の理解とは異なる場合があるようです。

ですから、部門の責任者や現場のオペレーターが中心になって意見を出し合いながら進めて、強弱をつけるのです。現場こそ、どこが弱いのか、どこがしっかりできているのか、しっかり把握しているからです。

4. 組織全体における全体最適を目指せ

Q. 〇〇事務局が構築しようとすると画一的になるということですか。

システム構築の際、部門における全体最適と組織における全体最適とのバランスにも注意してください。ISO9001の品質マネジメントシステムは、組織全体にとって最適の仕組みになるように意識することが必要です。例えば部門内での最適に配慮してシステム構築した場合、それは部門の中の全体最適であって、組織全体から見れば部分最適になってしまいます。

そこで、まずは部門毎に最適の形で導入し、それらをすべて統合して部門ごとにマージしていくのです。組織全体の見地から、どこをどのように強化することで全体最適につながるか、判断して調整していきます。例えば自社のA製品の品質水準について、担当するB部門では相当高いレベルで行う必要があると判断したとします。一方、そのレベルは会社の方針では求めていない高さ、あるいはお客様がそこまで求めていないレベルであって遥かに高いと分かったとします。こうした場合、高い水準を達成・維持するためのリソースが投資対費用に見合うものなのか、会社としての経営判断が必要になると考えています。

先ほどは、事務局だけでやるのは良くないと言いましたが、全体最適を進める際は事務局が存在感を発揮すると考えています。

5.「標準の作り込み=品質の作り込み」

Q. 構築の後の運用におけるポイントについて教えてください。

運用段階で品質に大きな影響を与えるのは、製品・サービスを提供する部門です。ですからこの部門における製品・サービスを提供するプロセスの運用方法については、しっかり検討してみてください。同時に標準化についてもいろいろ考えていく必要があるでしょう。

ここで強調しておきたいのは、「標準の作り込み=品質の作り込み」ということです。すなわち標準が品質を左右する可能性が強いということです。製造ラインやサービス提供などお客様とダイレクトに向き合う部門では、何らかの標準を備えていることが多く、その標準の中身が品質に与える影響は大きいのです。

6.標準ありきではなく運用を通して得られた内容を標準化する


Q.標準が品質に大きな影響があることが分かりました。その標準作りについてお聞かせください。

ここでは、標準ありきではなくて、運用を通して得られた改善内容を、繰り返し標準化するということを覚えておいてください。

標準を定めるのは手間がかかり往々にして時間を要します。もちろん苦労して作ったものは、大きな効果も期待できます。その標準を作るにあたっては、運用時についてもしっかり考えておくことが必要です。もちろん標準が最適な状態ならそのまま使い続ければ良いのですが、現実にはお客様のニーズに合っていない、旧くなる等々、時間とともにベストとはいえないものになってくると考えています。

そこで標準自体について見直しをかけて改善していくことが必要になりますが、あらかじめ見直し方法などについても決めておくと良いでしょう。また、通常の運用の中で改善していくのも一手だと思います。いかにタイムリーかつ柔軟に改善できるような仕掛けにしておくかということです。

なお、作成時の注意点としては、細部まで取り決めるなどあまりガチガチな内容にしないことです。運用では、ある程度、遊びの部分がある方がうまく回ることが少なくありません。むしろ、許容範囲の中から改善活動が生まれ、新たな取り組みが出てくることが期待できるからです。その時点で改善された内容を標準化していくケースもあると考えています。


Q.審査にはどのような付加価値を付けていますか。

会社のお金の話は、税理士さん等とする機会は多いようですが、実際に製品・サービスを作っている現場のコアなところに関して、品質や標準化、その取り組みレベルなどを第三者から聞く機会はおそらくほとんどないでしょう。ですから審査をそうした場にしようと心がけています。

私どもの審査についてお客様組織に喜ばれることの一つとして、この第三者の視点が挙げられます。外の人間から見てどのように見えているのか、我が社はどういう評価なのか、世間的に見てどのくらいのレベルなのか、こういったお話をさせていただくことは多いです。同業他社との比較等について具体的なご説明できませんが、できる範囲で多くの情報をご提供するようにしております。

もちろんコンサルタントを使って業務改革等をやっているケース等はありますが、ISO9001審査制度と規格のフレームワークに基づいた評価情報は大いに参考になっているようです。


7.「品質向上」によって企業価値アップにつなげる


Q.標準化や品質について立ち位置が確認できるということですね。最後にISO9001の宣伝をお願いします。

ISO9001の品質マネジメントシステムはご紹介したような活用をすることで、品質の向上が可能になります。「品質向上」を実現することで組織としての付加価値がつき、企業価値のアップにつながっていくのです。

経営者は企業価値の向上を最重要視しているでしょう。売り上げを増やしたい、組織規模を大きくしたい、上場企業であれば業績を良くして株主に還元したい、企業価値を上げるための方向性を考えているはずです。

ISO9001は、「品質」を通して企業価値のアップに寄与するような使い方ができるので、今後も審査機関の立場でお手伝いしていきます。





日本能率協会審査登録センター(JMAQA)
審査部 QMS技術部長  西川昭彦(にしかわあきひこ)




理系の学科を専攻後、地方公務員の行政職として、主に計量行政(計量法に基づく適切計量の啓発普及や大型ロードセルの計量器検査など)などに従事する。その後、金属系メーカーの品質保証部門にて、ISO9001やISO14001の構築、認証取得など、審査を受ける立場でISOの取り組みに従事。2006年から日本能率協会審査登録センターに勤務し、審査員としてサービス業から製造業まで幅広く参画し、ISMS審査技術部長、IMS審査技術部長を経て、2018年よりQMS審査技術部長を兼任。この間、ITサービス、クラウドセキュリティなど新サービスのリリースに関与し、現在、品質マネジメントシステム、EMS、ISMS、ITSMS、OHSMS、クラウドセキュリティ(CLS)の主任審査員。趣味は自然散策。



 

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

CONTACT

各種お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ

03-3434-1446

メールでのお問い合わせ

JMAQAinfo@jma.or.jp

よくあるご質問

お問い合わせ

無料お見積もり