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FSSC22000
(食品安全システム認証)

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CASE.7

連載:効果的な運用事例 石井食品株式会社様 [ISO9001/14001/22000・FSSC22000]
石井社長に聞く
新体制強化にISOを活用
強みを生かした仕組みで新商品開発に意欲

石井食品株式会社

                       取材先: 石井食品株式会社
                            代表取締役社長 石井 智康 様

1945年創業の伝統ある石井食品株式会社様(本社:千葉県船橋市本町2-7-17 URL: https://www.ishiifood.co.jp/ )は、ミートボール、ハンバーグ、おせちなどを無添加調理で製造し、新しい食のあり方を牽引する食品メーカーです。2018年、創業者一族の後継者として、現社長が就任し、食文化、食品産業の存在価値を増す新たな取り組みを進めています。よき伝統を生かし、環境やサステナビリティ問題なども視野に入れた新しいビジネスモデルを追求しています。ITコンサルから転身された石井智康社長に、現在の活動とISOを生かしたこれからのマネジメントの方向性などを語っていただきました。

「第四創業期」に新たなビジネスモデルを創出する

−2018年に社長にご就任されました。さまざまな事業展開をなさっているとのことですが、新体制になって顕著に変わったことはありますか。

まず、当社をいま「第四創業期」と位置づけています。創業は1945年で、これまでに3回「創業期」を経てきています。それぞれの「創業期」には、さまざまな変革を実施してきました。

「第四創業期」にあたる現在は、新しい食品業界のあり方、新しいビジネスモデルを構築している真最中です。中でも、「日本一安心・安全な食品会社を作る」というミッションのバージョンアップを行い、中期経営計画において、「日本一、生産者と地域に貢献する食品会社になる」というテーマを掲げて取り組んでいます。

この新たなミッションは生産者をどう盛り上げていくかが大きなテーマとなっています。生産者と一緒に成長していくビジネスモデルを、商品開発から調達、製造、販売などの食品業界のプロセス全体に適用して、新たなビジネスを創出することが大きな課題と考えています。

「第四創業期」に新たなビジネスモデルを創出する

自社ビジネスのあり方をチェーン全体から俯瞰する

−認証取得されているISO9001/14001/22000・FSSC22000はサプライチェーンのマネジメントの視点も含まれています。まさに「日本一、生産者と地域に貢献する食品会社になる」という新ミッションでの活用が期待できると思います。

何をやっているかと言いますと、地域食材で農家と一緒に開発・PRして各地で展開することを目指しています。これを「地域と旬」と呼んでおり、地域の食材を旬のまま届ける仕掛けです。

その取り組みの一つとして、6種類の「栗ごはんの素」の販売をはじめました。各地の名産の栗を使用した炊き込みご飯の素で、千葉県成田の栗ごはんの素、熊本県やまえ村の栗ごはんの素、京都市京丹波の栗ごはんの素などそれぞれの特徴にあわせて調味料を変えて調理しており、日本各地域の栗を味わうことができます。

自社ビジネスのあり方をチェーン全体から俯瞰する
日本各地の栗ごはんの素を揃えて農家、地域との「協業」を展開していきます。

−一次生産者と一緒に商品を開発、発展させていくわけですか。

「現地の食材を現地で製造する」ことが重要であり、そのための試みです。当社ではいままでも農家と協力関係を築いてきましたが、食品業界の現状のビジネスモデルは、大量に作って大量に販売して利益を上げるというものです。食品メーカーにとって重要なことは、大量に同じ農産物を調達できることでした。一農家、一地域とは個別にコンタクトを取らないというスタンスで、取引をするのは商社やJAでそこから供給してもらうのが一般的です。つまり一次生産者とつながりにくいというモデルです。

一方、農家は農家で跡取りがいないなど、いろいろな社会問題を抱えています。このままではよい農産物を供給してくれる農家がなくなってしまう状況になりつつあるのです。海外から安く調達すればよいという考えもありますが、当社では、お客様のために当社の製造過程では食品添加物を使わない無添加調理で本当においしいものをどう作っていくか、この点を重視しており、日本国内の農家の発展と当社のそれは同義と捉えています。

チェーン全体で利益を得て、地元に還元する

−上流までさかのぼって、「協同」することで、貴社やチェーン全体、ひいてはお客様貢献にもつなげていくという考えですね。

その一環で「地元の食材をブランドとして押し出す」ことを考えています。たとえば、京都府京丹波町に当社の工場があります。工場の従業員には隣接の亀岡市在住の人たちも多くいます。ここでは亀岡市の農家とコラボして、亀岡市の曽我部町の名前が入った「○曽(まるそ)玉ねぎ」という特産品を使ったハンバーグやスープを開発し、製造しており、これらは現地のお土産物店やスーバーなどでも売られています。

また、もともと販売していた「京都おせち」という商品は、京都の農産物のみを使ったおせち料理です。それを現在、ふるさと納税の制度を使って販売して地元に還元しています。

チェーン全体で利益を得て、地元に還元する

−ISOの観点で言うと、利害関係者のニーズと期待に応えるために、地域全体を盛り上げていくということになります。

「特産品 ○曽(まるそ)玉ねぎを使った」とパッケージに明記することで、地元の協力があって作られていることを明らかにしています。実は、私たちもやってみてわかりましたが、風土や土質や種などの違いで玉ねぎの特徴も地域によって千差万別なのです。愛知県大府市の「知多3号たまねぎ」という知多半島で栽培されている玉ねぎはソフトボールのような形状で、みずみずしい。そういう個別の特質が農家とつながってはじめてわかってきたので、ぜひ消費者の皆様にも味わっていただきたいと思います。

また、食品業界では原材料の産地までは特定できない場合が多いのですが、当社の商品は消費者が調べることができるようになっています。産地や原材料を示すことは、農家との信頼関係を増すと同時に、消費者に対しての安心感にもつながっていくはずです。

新ビジネスを生むマネジメントの鍵は「チームワーク」

−ITコンサルでの経験を活かして、畑違いの業種でグループ会社を含めると500人以上の組織のトップに就かれてから、新しい発想でマネジメントをなさっていると感じます。

コンサルティング会社のエンジニアとして、クライアントの方々と良質なソフトウエアを創り出すことを目指していました。そこで学んだことは、マネジメントにおける「チームワーク」の大切さです。

天才プログラマーが集まっても良い製品ができるかといえば、そんなことはないのです。凡人プログラマーの集まりでも「チームワーク」が優れていれば、良いものが生み出せます。今いるメンバーでどうPDCAをまわして生産性を上げるか。その鍵は「チームワーク」にこそあると考えています。

開発プロセスのあらゆる場面で、良いチームを作ることで問題を解決していく、そこが当社の新たなビジネスの創出へつながると考えています。

効率化だけが良い食品を生むわけではない

−マネジメントに関連する話ですが、社長に就かれて新たに「基本ルール」として以下を掲げたねらいを教えてください。

効率化だけが良い食品を生むわけではない

まず(1)ですが、たとえば、農家との関係、立地、生産、調達、製造などあらゆるプロセスでいままでのやり方を全部変えていくことを目指しています。あらゆるプロセスを変えるということは、社内の営業や経理などの部門も一体となって取り組まなくてはなりません。ここでは去年と同じは原則禁止としています。

(2)は、会社の歴史が古いので業務プロセスが複雑です。もともと無添加調理などシンプルな商品作りを目指しているのだから、業務もシンプル化を図りたいです。

(3)については、製造業というものは効率化を第一とします。しかし、食品に関しては効率だけを追ったら他社と同じ商品になってしまいます。効率と手間のバランスが大事なのだと考えます。価値あるものを残し、不要なものはなくしていきたいです。

そして(4)ですが、ソフトウエアのプロセスにおける考え方に、フェイル・ファスト(Fail Fast)というものがあります。小さな失敗ならいっぱいすることを当社では奨めています。新しいことは実験と捉えているのです。特に現場では小さな失敗から改善も生まれます。大きな失敗をより小さい失敗へと調整するのは、マネジメント層の仕事です。

「環境・サステナビリティ」への対応は食品業界でも必須

−石井食品とTBM社は環境負荷軽減に向けた基本合意を締結して、紙・プラスチックの代替となる日本発の新素材LIMEX(ライメックス)を使った食品包装(軟包材)開発を共同で取り組むことになりました。2021年に「ミートボール」や「チキンハンバーグ」のすべての包装を切り替えると発表なさっています。ISO14001の視点がここでも活きていると思います。

環境・サステナビリティへの対応は業界問わず、積極的に取り組むべきことだと考えています。台風などの災害や環境サミットでの提言など、環境・サステナビリティに関わる社会的な要請は今後もますます増えていくはずです。自分たちのビジネス活動についても考え直さなくてはならない問題はたくさんあると考えています。各企業はさらに真剣に取り組んでいくべきです。

当社では企業理念の中に「地球にやさしく」を掲げており、東日本大震災の前から、工場に太陽光パネルなどを設置してきました。今後は現場で新しいテクノロジーやツールをどう生かしていくのかが課題となるはずです。その際、大きな設備投資も必要となる場面もあるはずで、いろいろ研究して積極的に取り入れていくつもりです。

従業員の「素直さ」が石井食品の強みになる

−石井食品のこだわりやチャレンジを謳った「イシイのいいトコ」には、無添加調理や厳選素材、あるいは生産者との協業など、石井食品の強みが紹介されています。これらの強みを生かす具体的な方法とはどのようなものですか。

強みのひとつは、無添加調理があります。地域の食材を組み合わせることで、その地域の味がよりストレートに表現できるのです。化学調味料などで味付けをすることで、地域ごとの食材のばらつきを一定にすることもできますが、素材の味をそのまま生かすのが、逆に私たちの強みになっているのです。

実は石井食品としての強みをどう生かすかは、社長に就いた時に社内でワークショップなどを開催して、議論を重ねました。

その中でも、注目すべきこととして、従業員の「人のよさ」「勤勉さ」「素直さ」が挙げられました。私もエンジニアとして、たくさんの企業の方々とお会いしてきましたが、当社の従業員は世間一般から比較すると非常に素直な人が集まっている社風があると感じています。仲間の足を引っ張ったり、「私はやりたくない」などと意地を張る人は少ない印象です。

従業員の「素直さ」が石井食品の強みになる
ミートボールは原材料改良でさらに進化しました。素材のおいしさを追求するために、よりシンプルな原材料を無添加調理し、安全でおいしいものご提供しています。

使いやすい、成果を出しやすい仕組み作りを目指す

「イシイのいいトコ」を実現するには、ISOの仕組みの活用を含め、みんなでPDCAをまわして、新たなチャレンジを推奨していきますが、ここで先ほど紹介した社風が活きてくるはずです。

「変化の激しい時代です。会社組織は世代や風土やカルチャーが違う仲間が集まった集合体です。トップの私がどんな戦略を立てても、現場の人たちに協力してもらわないと何も進みません。トップダウン型の会社とは違うので、今の社風を活かしつつ石井食品としての強みをさらに発揮していくつもりです。

−いろいろなお話をうかがい、従来からのやり方に拘らないビジネスを展開していく強い意図が伝わってきました。その中でISOの仕組みが活用されているのが印象的です。

正直に言うと、以前はISOにマイナス面も感じることがありました。エンジニア時代に、体裁だけ整えるような状態になっている企業を見たことがあったからです。ですが、石井食品として長年運用しているISOマネジメントシステムの活用をふりかえってみると、有効に機能していることが実感でき、今後も現場で使いやすく、成果を出しやすい仕組み作りを目指して改善していきます。

使いやすい、成果を出しやすい仕組み作りを目指す
本社屋 1階コミュニティハウス「ヴィリジアン」では、一般のお客様向けに石井食品の取組みについて展示も行っています。

「FSSC22000 認証取得研修プログラム資料」
食品安全マネジメントシステム構築を支援

現在GFSI認証スキームの一つである“FSSC22000”が注目されています。 顧客からの要求を受け、認証取得に向け構築に取組む企業も多いなか、基幹となるISO22000やPRP要求事項のISO/TS22002-1規格要求項目に対して具体的にどの程度のレベルまで対応すべきか、悩んでいる推進者も少なくありません。 日本能率協会では、FSSC22000 認証取得研修プラグラムをご提供しています。

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