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FSSC22000
(食品安全システム認証)

食の安全

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CASE.2

【連載:効果的な運用事例 イートアンド様 [ISO9001・22000] 】
「ISOは自分たちの行動基準」が、 ISO9001で土台を築き、ISO22000で優先部分を強化

イートアンド株式会社

取材先:イートアンド株式会社
取締役執行役員 商品本部 本部長 山本浩 様
商品本部 商品企画部 ゼネラルマネジャー 手塚智子 様 *所属役職等は取材当時のものです。

「おなかいっぱいの幸せ」をコーポレートスローガンに、生産事業・食品事業・外食事業の3本柱で成長を続けているイートアンド。
外食事業では、餃子専門店「大阪王将」をはじめ、らーめん専門店「よってこや」など、国内外に488店舗(2017年12月末現在)のFC本部および直営店を運営、食品事業では、一般家庭向けに「大阪王将」のメニューなどを冷凍食品として商品化するほか、本格中華料理が味わえる調味料なども製造販売している。

その2つの事業を支えるのが生産事業で、国内3カ所に製造工場を構え、製造および研究開発に取り組んでいる。同社ではそれら商品の設計・開発、製造および引き渡しという一連のプロセスにおいて、2007年にISO9001、2011年にISO22000の認証を取得。

そのきっかけや2つの認証を運用している意義などについて、取締役執行役員で商品本部本部長の山本浩氏と商品企画部ゼネラルマネジャーの手塚智子氏に話をうかがった。

イートアンド株式会社の概要

東京ヘッドオフィス 東京都品川区東品川4丁目12番8号 品川シーサイドイーストタワー15階
設立(開設日) 1977年8月
従業員数 1,188名【社員+パートアルバイト(8h換算)】
(2017年12月31日現在)
事業内容 冷凍食品の製造、全国の生協・量販店向けの商品の販売、加盟店向けの食材の製造・卸及び販売、FC本部及び直営店の運営

登録情報

ISO9001       2007年10月9日登録 ※2020年より自主運用
ISO22000     2011年10月20日登録

【認証取得のきっかけ】供給サイドの機能を高め、お客さまに最高の商品を届けたい

認証取得範囲である商品本部には、商品部(調達機能・物流機能)、商品企画部(商品開発機能・品質管理機能)、生産部(生産機能)の3つの部門がある。生産部には3工場8ラインが含まれており、生産事業のカギを握っている中核部門といえる。山本氏は「これらの供給サイドの機能を高めたいという目的で認証取得を始めました」と取り組みの背景を話す。

イートアンドがISO9001の認証取得を考えるようになったのは2005年くらいのこと。 「当時の工場には職人気質というか、“見て学べ”という雰囲気がありました。人によっても教え方にばらつきがあり、そうした状態を平準化したいと考えました」(山本氏)

加えて、消費者向けの商品を自社製造・販売したいと考えていたことも、認証取得をめざした一因だ。当時の工場は、外食向けのセントラルキッチンとしての役割が中心で、一部冷凍食品も扱っていたが、委託製造によるものだった。
「それを自分たちでつくりたいと考えていました。そのために何をするべきかを社内で検討していたところ、ちょうど食品関連の展示会でJMAと出会い、ISOの話をうかがう機会に恵まれました。食品事故が話題になっていた時期だったこともあり、会社として認証の必要性があるのではないか、と取得を決めたのです」と山本氏は振り返る。

下田一人氏

山本浩氏
商品本部 本部長 山本浩氏

商品本部にある生産機能、調達機能、商品開発機能、品質管理機能、流通機能の5つの機能においてしっかり品質管理システムを回すことで、商品本部の一次顧客である営業部門、その先のスーパーや店舗、そして最終的に消費者に最高の商品が届けられることを期待した。
「コンサルタントにはお願いせずに自分たちで始めたこともあり、最初はマニュアルもひどいものでした。見よう見まねでなんとかつくりましたが、漏れがたくさんあり、1次審査では30ほどの指摘事項があったのです。2次審査の間までにすべてのマニュアルをつくりなおしました」と山本氏は苦労した様子を語る。

ISO9001の認証取得後に入社した手塚氏も「過去のマニュアルを見て、手作り感があるなと感じました」と苦笑しつつ、こう続ける。
「ISOは用語が抽象的。ISO22000は食品安全のマネジメントシステムなので、そこから始めたらまだわかりやすかったかもしれませんが、ISO9001では何を求められているか理解するのが難しかったと思います」(手塚氏)。

苦労の末に認証取得を果たし、その結果「記録をつけ、手順通りに行う」という土台が築かれた。山本氏は「記録をつけることが“ふつう”になりました」と喜ぶ。
ISO9001の認証取得の2年後には、関西工場で冷凍食品製造ラインを設置。一般消費者向けの製造・販売の体制が整った。

【ISO22000をともに取得している意味と組織の変化】特に注意すべき部分をISO22000で管理

イートアンドではISO9001の認証を取得して4年後の2011年にISO22000の認証を取得している。ISO22000は品質マネジメントシステムのISO9001の考え方と、食品安全のリスク分析の手法をHACCPから取り入れた規格だ。この2つの認証規格を運用する意義について、山本氏は次のように話す。

全体の品質管理はISO9001で、特に注意すべき部分をISO22000で管理するという位置づけで運用しています。じつはISO9001の認証取得においては、品質向上の意味合いを“クレーム対策”の要素を多く含めたものにしていました。しかし、ISO9001だけではなく、やはり食品安全に特化したものにしなくてはならないと感じました。また、HACCPに準じていくことが、必要条件になっていくだろうと、ISO22000の認証取得をめざしたのです。認証取得にあたっては、ISO9001ですでに土台ができていたので、やりやすかったですね。かりにISO22000を先に取得していたら、部分的な理解しかできなかったかもしれません。そのため、すべてのベースになるという意味で、いまもISO9001を継続しています。2つは内部監査もマネジメントレビューもすべて一緒にやっています」

ISO9001で「記録をつける」「手順通りに行う」というベースができたうえで、さらにISO22000を加えることにより、「やるべきことの優先順位がはっきりし、危険を察知する能力が高まりました」(山本氏)と、組織としての力がパワーアップした様子だ。

ISO9001は全体の品質管理ですが、ISO22000の導入で、一つひとつの商品に対してしっかり安全管理ができるようになりました。もちろん、以前から食品安全への管理はしっかり取り組んでいましたが、だいぶロジカルにアプローチできるようになったと思います。
加えて、要求事項7.6には『HACCPプランの構築』がありますが、このHACCPプランを書くことが、従業員への教育の機会となっています。規格を認証取得していなければ、新商品投入の際につくるデシジョンツリーを書けるようにもならなかったでしょう」(山本氏)

「そもそもの考え方が変わってきました」と話すのは手塚氏だ。
生産部門では、新商品や工程変更があるときは、『危害分析を行って管理基準を決めないといけない』、調達部門でも『購買先の工場にもこの仕組みがきちんとあるのか、確認したほうがいいのでは』といった考え方をするようになりました。この変化は大きいと思います」

商品管理部の社員は80人程度だが、工場現場では約400人のパートも働く。そうした人たちにどのようにしてISOを浸透させているのだろうか。

「規格で決まっているので、こういう手順でやらなくてはいけない、だから守らなくちゃいけないんだよ、と伝えると、それなら自分たちもやらなくては、という意識になります」と手塚氏は、伝え方を工夫している様子を説明する。さらに、管理方針を朝礼時に唱和するなどして、意識の醸成にも努めている。

【ISOのメリット】内部監査は他部署の仕事を知るいい機会。それにより工程が円滑に回るようになる

手塚智子氏

商品本部 商品企画部
ゼネラルマネジャー 手塚智子氏

品質管理室内にある事務局では、毎月1回、内部監査の実施、その総括と評価、マネジメントレビューなど決められた項目に沿って、事務局でスケジュールを確認している。
こうした確認をするのは、ISOをやっているからこそ。その点がすごくいい仕組みだと実感しています」と手塚氏は、いい意味での統制力が働いている様子を語る。
手塚氏がとくにメリットを感じているのは内部監査だ。

「じつはこれまで、ISOの活動自体もよくわかっていないし、内部監査も何をどういう手順で見ていいのかわからないという人もいました。前任者がつくった質問票を元に毎回同じことを聞くという状態で、3年連続同じ質問だったという部署もあります。規格項番に照らし合わせて聞くということすら、半分程度しか理解していない人もたくさんいました。それが、ほんとうに最近になってからですが、自分たちの部署を良くするにはどうシステムを回していけばいいか、個々人が考えながら取り組むことができるようになってきました。質疑応答票も、自分たちで考えてつくれるようになってきたのです」と組織の変化を語る。

変わることができたのは「セミナー講師に項番の意味を説明してもらったり、ロールプレイングのセミナーを実施したり」(手塚氏)と、事務局側の地道な働きかけがあったからこそだろう。また、審査で受けた指摘も活かしている。

「“現場に即して監査すること”を心がけ、『前年のクレームに対する対処がどうなっているか』など、テーマを設けて内部監査をするようにしています」(山本氏)
形式的な内部監査から、自分たちで考える内部監査へと、その“質”が変わってきたことで、自分たちのラインも含めて客観的に見られるようになったり、他部署への興味も出てくるようになったりという動きがあった。

「自分たちのやり方は正しいと思ってやっていたのに、他部署を見ると、『こんなやり方もあるんだ』と気づいたり、指摘をするときには『自分たちはどうか』と、自然と自らを振り返ることにつながったりしています」(手塚氏)

山本氏も「他部署を知るいい機会」と内部監査の良さを指摘する。
「たとえば製造部門の従業員が調達部門の手順書を見て、『生産者とこんな打ち合わせをして入荷されているのだ』など裏側がわかると、調達部門へのクレームも少なくなります。自分たちのラインの前後の工程を知ることができるのは大きなメリットです。管理職はともかく、若い従業員は自分の現場があるので他部署をわざわざ見に行くこともありませんし、そもそもそういう目線で見ません。内部監査は、工程を円滑に回していくにはとてもいい機会です」(山本氏)

【今後の課題、JMAQAの審査の感想 】頭でっかちにならずに継続させることが課題。全社に影響を与えるよう加速していきたい

ISO9001は私自身が行動するときの教科書になっています」と語る山本氏は「ISOを導入したくて入社した」というほどで、ISOのよさを以前から認知していた。審査を受けて「審査はもっと杓子定規なものだと思っていましたが、そうではなく、われわれの組織のメリットになるような指摘をしていただいたと感じています。審査で得られる情報はとても多く、われわれの行動のあり方、自分たちを見つめ直すいい機会になっています」と感想を語る。

そんな山本氏から、手塚氏はことあるごとに「検証しなさい」「妥当性の確認はしたか」と指導されているという。そうした部分もISOのいいところだと手塚氏は捉えている。

規格に照らし合わせたものだということは、上から下へ伝える際にも役立ちます。『決められたことだから』と、感情に左右されずに、シンプルに前に進めるツールとなるからです」(手塚氏)

そうしたISOのメリットを活かしながら運用してきたイートアンドだが、マニュアルは限られた人で作成していたため、規格要求事項に触れている人は比較的少ないということが課題だった。

「HACCPの計画はできてもシステム全体のことはわからないという人もいました。そこで、今回、ISO9001の規格改定の時期に合わせて、全員にISOに実際に触れてもらおうと、各部署に規格要求事項を分配し、マニュアルを書き換えてもらうことにしました」(山本氏)

じつにさまざまなマニュアルが集まり、結果的に見直すのが大変だったというが、「貴重な体験」(手塚氏)だったことも事実だ。どこがどう理解されていないのかも把握できた。

「理念では安全が一番重要とわかってはいても、生産活動が成り立たなければ事業そのものが成り立ちません。そのバランスが難しいところです。製造現場では文書をつくるなど事務ワークには慣れていませんし、苦手な人も多い。そうしたなか、どう頭でっかちにならないように継続していくかが課題です。品質管理や安全管理は重要でありながら、多忙になるとおろそかになりやすいもの。そんなときでもきちんとできるような環境を整えるのがわれわれの仕事です。システムを回すこと自体もそのひとつだと思うので、しっかり取り組んでいきたい。そしていま、商品本部が運用しているわけですが、われわれの取り組みが全社に影響を与えるように加速できればと思っています」(山本氏)

手塚氏も「私たちは、内部監査にしてもようやく自分たちで理解できるようになってきました。牛歩戦術ではないですが、これからも一歩ずつ着実に前に進みたいと思っています」と前向きに今後を語る。
社名に込められた「EAT=食」+「&=無限の可能性」の発想で、さまざまな食シーンを提供するイートアンド。その「おいしさ」は、こうした食の安心・安全の仕組みに支えられ、生み出されているのである。

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現在GFSI認証スキームの一つである“FSSC22000”が注目されています。 顧客からの要求を受け、認証取得に向け構築に取組む企業も多いなか、基幹となるISO22000やPRP要求事項のISO/TS22002-1規格要求項目に対して具体的にどの程度のレベルまで対応すべきか、悩んでいる推進者も少なくありません。 日本能率協会では、FSSC22000 認証取得研修プラグラムをご提供しています。

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