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  JFS-C規格(食品安全マネジメントシステム)食の安全

JFS-C規格は、フードチェーン全体での食品安全確保のための取り組みを標準化し、
自らの食品安全レベルを向上させることを目的として、一般財団法人 食品安全マネジメント協会(JFSM)
が開発した日本発の食品安全マネジメントシステムの認証スキームです。

CASE.3

【連載:効果的な運用事例 朋和産業株式会社様 [ISO22000] 】
印刷業界の変化を先読みし10年前から準備
ISO22000でバックヤードを強化し顧客に安心を与え、 信頼の獲得をめざす

株式会社金羊社

取材先:朋和産業株式会社
    常務取締役 立山恵子 様
    生産本部宇都宮工場 工場長 勝又 誠 様
    管理担当 部長 松浦裕之 様 

      *本記事の取材は株式会社金羊社にお話しをうかがいました。その後、記事掲載に関わる印刷事業の一部を2023年8月1日付で朋和産業株式会社に事業譲渡されており、
       本記事では朋和産業株式会社の名称で記事掲載しています。なお、所属役職等は取材当時のものとなります。

朋和産業株式会社では、2023年、株式会社金羊社から一部印刷事業について事業譲渡を受けています。本インタビューは金羊社時代にうかがったものです。
同社は、以前は音楽・映像パッケージの印刷が中心でしたが、15年前からは水性フレキソ印刷による食品パッケージなどにも事業範囲を拡大。伝統を継承しつつも変化を恐れずに、常に新しいことにチャレンジしてきました。

食品マネジメントシステムISO22000の認証取得を果たしたことも、同社のチャレンジ精神の現れだ。業界変化を先読みし、会長をはじめ5人のキーパーソンにより10年前から情報収集を開始。途中で病に倒れ、帰らぬ人となったメンバーの一人、高橋弘幸氏(当時の御殿場工場長)は、入院先の病室にもISOの教材を持ち込んでいたという。

「彼は取得を信じて準備していました。その思いを引き継ぎ、認証取得が実現してとてもうれしい。ただ本当に大変なのはこれからです。水性フレキソ印刷では第一人者といわれるよう、がんばってきたい」と常務取締役の立山恵子氏は気を引き締める。立山氏をはじめ、食品安全チームの皆さんに、認証取得までの道のりや今後の抱負などについてうかがった。

登録情報

ISO22000 2018年3月15日登録
登録サイト:宇都宮工場(栃木県) *本記事で登場する大口工場(愛知県)については、取材時は登録サイトでしたが現在は認証対象から外れています。

【事業の特徴と認証取得のきっかけ】新しい事業の柱としてフレキソ印刷を開始

印刷技術にはいくつかの種類がある。代表的なのが、書籍の印刷、商業印刷など幅広く利用されているオフセット印刷だ。版と紙が直接触れないのが特徴で、 平版(凹凸のない薄いアルミ製の版)を使用し、その版についたインキを、樹脂やゴムでできたブランケットに一度移動(off)させ、ブランケットから印刷用紙に転写(set)する。使われるインキの多くは油性だ。

フレキソ印刷は、版としては凸版印刷(活版印刷)で、柔軟性のある樹脂やゴムでハンコのような凹凸のある版をつくり、飛び出している部分にインキをつけて直接紙に印刷する。ダンボール、紙袋などのほか、ラベルや軟包装のフイルムなどにも使われる。地球環境に優しい水性インキやUVインキが使えるため、国内では近年注目されているが、じつは欧米ではすでにポピュラーな印刷技術として普及している。

これまではオフセット印刷100%。うちCDやDVDのパッケージ印刷などのエンターテインメント業界向けが95%を占めていた。

立山恵子氏

常務取締役 立山恵子氏

「けれども15年ほど前からインターネットによる音楽配信が始まったことに伴い、こうしたパッケージの印刷も縮小が見込まれるだろうと、次の柱を模索していました。その過程で日本ではまだ成熟していないフレキソ印刷を研究しはじめ、なかでも環境にやさしい水性フレキソ印刷の勉強をつづけました」と立山氏は、水性フレキソ印刷に取組みはじめたきっかけを語る。水性フレキソ印刷で食品の個包装パッケージ・飲料ラベル印刷をめざしたのだ。

当時、市場調査の結果、今後は菓子など食品が個包装の傾向にあることに着目。「直接口に触れる個包装のパッケージは、安全かつ環境にも配慮された水性フレキソ印刷が適切」と考え、そのための工場として2014年に宇都宮工場の稼働を開始。それまでフレキソ印刷機は他の2カ所に分散していたが、宇都宮に結集させた。そして、「食品包装に注力するのであれば、ISO22000の認証を取得しておくことは不可欠」(立山氏)と、幹部を中心として、水面下での情報収集がはじまった。

ISO22000の認証取得をめざしたのは、そもそも安全への意識が高かったことに加え、第三者認証の大切さを実感していたということもある。

2003年にISO14001の認証を取得したことを皮切りに、ISO27001、FSC森林認証、日本印刷産業連合会が実施する「グリーンプリンティング認定制度」の工場認定、ISO12647(ドイツの研究・認証機関であるFOGRAがはじめた印刷の国際規格)など、多くの第三者認証を取得している。

「お客さまに新工場を紹介する際、長々と説明するよりも、ISO22000の認証を取得していると伝えれば、安心していただけると考えました」と立山氏は実感を込めて話す。

そうして「トライすることが弊社の風土」(立山氏)でもあり、印刷業界では珍しいISO22000への挑戦がはじまった。

【認証取得活動の過程や苦労点①】新工場としてゼロからのスタート

10年あまりの水面下での情報収集を経て、いよいよ「宇都宮工場で取得を」と、キックオフしたのは2016年7月。ただ、現地の工場にはISOの認証取得に関わった経験者がいなかったため、本社の生産管理部長や、御殿場工場の副工場長を務めた経験を持つ松浦裕之氏(宇都宮工場 管理担当部長)が宇都宮工場に赴任し、現場の指揮を執ることとなった。審査機関との折衝など、工場の認証取得活動を支えた事務局のひとり、吉川雅人氏(管理部 キャリアサポートグループ エキスパート)は、「御殿場工場や本社はISOの認証取得をしていましたが、宇都宮工場は、新工場でありゼロからのスタートでした」と振り返る。

立山氏も「宇都宮工場には、いろいろなメンバー(会社内の他部署・中途採用)が集まってのスタート、意識の統一も大変だったと思います」と指摘する。現場リーダーなど5人を集め「食品安全チーム」を組織したが、異動などでメンバーの入れ替わりもあった。

当初から食品安全チームとして活躍している猪八重裕氏(営業3部 エキスパート)は、「まず、ISO独特の言葉がわかりませんでした。毎月開催されるコンサルタントとの勉強会に参加し、理解できたのは半年くらい経ってからです。それからは、いままでやっていた内容を、要求事項に置き換えられるようになり、求められている品質とはこういうことか、とわかるようになりました」と語る。

コンサルタントによる勉強会のほか、就業後に週1回ほど集まって「宿題」をこなす日々が続いた。

【認証取得活動の過程や苦労点②】「顧客の要求に応えること」は「ISOに重なる」だと気づく

松浦 裕之氏

生産本部宇都宮工場
管理担当 部長 松浦 裕之氏

過去にさまざまな第三者認証を取得しているものの、立山氏は「今回はハードルが高かった」と振り返る。というのも、実際にはまだ食品の個包装印刷は取り扱っていなかったため、仮説を立てて構築しなくてはならなかったからだ。加えて工場が順調に稼働するようになり、通常業務をこなしながらの取り組みとなった。

ただ、新工場ゆえのメリットもあった。松浦氏は「新しいといっても、当然、工場が稼働した時点でお客さまに納品しており、お客さまからは、品質や品質保証体制の構築を求められました。それを構築する一方で、ISO22000の勉強をはじめたのですが、ISO22000の要求事項の8割が、お客さまが求めている品質保証体制と変わりないことに気づいたのです」と話す。

想定外のこともあった。当初は宇都宮工場のみでの取得予定だったが、宇都宮工場で印刷したものを、大口工場(愛知県)のラミネータで貼って仕上げるという流れになっていたため、途中から対象を2工場にしたのだ。

宇都宮工場課長で大口工場の工場長も兼務する峯昭太氏は「途中参加という形となり驚きましたが、じつはその直前に軟包装衛生協議会の認定工場を取得していたため、基礎的な理解があったので助かりました」と語る。

「またこういう作業に入るのかと内心思いました」と打ち明けるのは、大口工場の平松靖裕氏だ。「しかし、衛生面に関しては勉強していましたし、仕組みもできていたのでゼロからやり直す必要はありませんでした」(平松氏)

事務局の大口工場担当、友永義行氏(管理部 品質保証室 部長)も「軟包装衛生協議会の認定工場となる際にPRPのベースはできていたので、それほど大変ではありませんでした」と、事務局でも大きな負担はなかった様子を語る。

【審査機関をJMAQAに決めた理由と受審の感想】鋭い指摘で「不足点」が明確になった

審査機関をJMAQAに決めたのは、コンサルタントから「食品安全ならJMAQAがエキスパート」と紹介されたことがきっかけだった。吉川氏は「私自身、これまでISO関連の事務局をしてきた経験から、審査の質、審査員の質も考慮したうえで決めました。実際受審してみて、聞いていたとおり、『この会社のために』と思って審査してくれたと感じています」と審査の印象を語る。

「正直、構築途上での審査だった」というのは松浦氏だ。「1次審査では多くの指摘事項や推奨事項をいただきました。しかしむしろ、そのおかげで何が足りていないのかが明確になり、2次審査に備えることができました。とはいえ、2次審査までは2カ月しかなく、その期間でできるのか不安でしたが。そこを乗り切れたのはうれしいです」

宇都宮工場の工場長、勝又誠氏は受審しての気づきをこう語る。

「宇都宮工場は当初から食品包装を主力に考えていたので、稼働時から工場内へのクリーンルーム設置や防虫管理の徹底など気をつけていました。そうしたなか指摘されたのは、たとえばコンプレッサはオイルフリーかどうか、油がはねて商品に影響しないかなどといったこと。印刷会社としては、気づかない視点で、安心安全を届けるためには、かなり細かい配慮が必要だということを学びました」

立山氏は「流通に対してもチェックの必要性を実感しました」と付け加える。「オフセット印刷をしているだけでは流通過程での異物混入という考えは思いつきませんから、そういった視点が大事だと身にしみて理解しました。意識改革につながったと思います」

猪八重氏も「今回の認証取得活動は、若い工場として急成長するなか、あたり前の大切さを再認識できた、よい機会となりました」と続ける。その意味では絶好の教育機会になったともいえそうだ。

吉川 雅人氏

管理部 キャリアサポートグループ
エキスパート 吉川 雅人氏

【取得活動を通しての感想】「記録」と「教育」の大切さを実感

勝又 誠氏

生産本部宇都宮工場 工場長
勝又 誠氏

ISO22000の認証を取得してまだ間もないが、取得活動を振り返ってみての感想や組織の変化などについて、それぞれの思いを語ってもらった。

品質管理担当を担当する大栗裕樹氏は「現場に対し『ISOで決められているから』と伝えるとしっかりやってくれるようになりました」とISO効果に苦笑しつつ、「私自身、記録をひとつ一つ残すことの大切さを学びました」と語る。

「現場の協力が必要だと痛感しています」というのは5Sを担当する粕谷智昭氏だ。「ISOをやる目的は何か、その結果どうなるかということを地道に説明していきました」と現場への教育の重要性を説く。

大口工場の平松氏も、「現場オペレータへの教育が大変でした」と振り返る。「自分だけわかっていても、オペレータが理解しなくてはなりません。伝えたい人に100%伝わっているか、その確認作業もしなくてはならず、これからも、そこをしっかりしていきたい」と抱負を語る。

長倉暁氏(宇都宮工場 品質管理 エキスパート)は、かつてISO9001やISO14001の認証取得活動を経験したことがある。

「その際、認識したのは、取得が目的ではなく継続することが重要だということです。PDCAをまわして改善していかねば、企業としても自分たち自身も成長していきません。とくにいま、P(プラン)が不十分と感じるので、それをしっかり決めて運用していけば、いいものになるのではないかと思っています。また、ISOで大事なのは記録と教育。最初は一生懸命取組んでいても、気づいたらやっていなかったとならないよう、気をつけたいと思います」(長倉氏)

食品安全チームのメンバーは「教育」の大切さについて、口を揃える。それを受けて勝又氏は、「今期は食品安全会議を設定し、教育を強化していきたい」と注力する姿勢だ。

「現場のオペレータ一人ひとりに、この詳細が伝わっているか、まだ疑問が残ります。加えて、いまも社員が増えている状態なので、伝えるための仕組みづくりをしっかりやっていきたい」(勝又氏)

【今後の課題・抱負】「守り」だけでなく「攻め」の活用にも期待

認証取得活動の特色は、工場での取得であるものの、本社が事務局としてサポートしている点である。本社の植松則彦氏(管理部 キャリアサポートグループ 部長)は「業務と平行しての取得活動は大変だったと思います。認証取得を果たし、今後の運用は工場主体でやらねばなりません。これからも本社から叱咤激励を続けていきたいと思います」と意気込む。

立山氏は「事務局など本社スタッフに恵まれたことと、工場の社員みんなの努力。最後は全社が一丸となったからこそ認証取得を実現できました」と、認証取得活動を総括する一方で、「取得がスタート」と強調する。

「今後はISO22000の運用を続けることに加え、まだ成熟していないフレキソ印刷技術を向上させていかねばなりません。このダブルの課題にどう取組むか。やらねばならないことが山積していますが、ISO22000の認証取得が、社員みなの自信になってくれればいいなと思っています」(立山氏)

さらに立山氏は認証取得の今後の活用についてこう語る。

工場風景

「私たちは、食品という新たなマーケットにチャレンジしました。そういうとき、第三者認証はお客さまに安心を与え、信頼を獲得できる武器になります。弊社は今後、新人も現場を経験してから営業に行く“技術営業”を導入する予定ですが、このISO22000を武器に、フロントもバックも強くしていくことができると期待しています」

つまり、宇都宮工場や大口工場でいかに食品安全マネジメントシステムが構築されているか、実体験をしたうえで営業に出れば、お客さまからの、バックヤードについての質問や疑問にもしっかり答えられるということだ。「それがお客さまの安心、信頼につながります」(立山氏)

業種にかかわらず、企業の事故・事件などの不祥事は、「記録の欠如」に起因することが多い。ISO22000を運用することで、記録の重要性を認識し、「記録をつける習慣」が根付いていけば、「守り」の武器になり、同時にサプライチェーンの安全性に不安を感じている取引先への「攻め」の武器にもなる。ISOを「守り」と「攻め」に活用することで、企業価値を高めていくに違いない。

「JFS-C規格へのステップアップポイント資料」注目の
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JFS-C規格は、マネジメントシステムの要素を含み、国際取引の中でも活用されるような信頼性を持つ認証制度として設計されています。

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